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生まれてはじめて徒歩で国境を越えた時の話(香港〜深圳)

書こうと思ったきっかけ

国境の雰囲気がなんだか好きで、海外旅行初心者だった頃に徒歩で国境を越えた時の話をしたくなったので。(香港と中国本土は国境じゃないだろ!というツッコミは置いておいて)

香港から気軽に訪れることができる中国本土、深圳

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2014年5月、香港エクスプレスのセールで羽田〜香港往復のチケットが1万5000円で取れたことがきっかけで訪れることになった香港。香港自体は2回目だったが、前回の香港は友達と一緒の旅行、そして今回は一人旅なので定番の観光地は外して「歩いて別の国に行ってみたい!」というだけの理由で香港に隣り合わせの中国本土の都市、深圳に行くことにした。当時は中国本土は訪れたことがなく「中国ってなんだか怖そう」「言葉通じなさそう」「誘拐されて臓器売られそう」と、なんだか偏見だらけの物騒なイメージしかなかったが好奇心の方が勝ってしまった。

香港国際空港から一旦香港市内へ

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今思えば香港の空港から直接深圳へ入る手段もいくらでもあるのに、ホテルに一旦荷物を置いておきたかったのと、オーソドックスに香港の市内から鉄道で国境まで向かいたかったので、空港から香港市内へ一旦バスで移動。あまり関係ない話だが東京から香港までのチケットを格安で取ったはいいが、予約時に姓と名前を逆にして予約していたため、行きの羽田空港では飛行機になんとか乗せてくれたものの帰りは乗せられないかもと言われ、帰り分のチケットだけ泣く泣く買い直したため2万円の追加出費となりこの時点でテンションだだ下がり。

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ホテルに荷物も置き、鉄道(MTR)で国境検査場のある終点の駅、落馬州まで向かう。前もって調べておいた情報によると香港のATMは香港ドルだけでなく人民元も引き出せると書いてあったが、そんなATMは探した限り1台も無かった。当時全盛期のAKB48、渡辺麻友がイメージキャラクターだった元気寿司を横目に、市内を観光するだけなら必要になることが少ない「パスポート」が手元にあるか何回も確認しつつ国境の街へ向かう電車が発着する駅へと向かった。

MTR(地下鉄)で北へ

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香港側のターミナル駅である紅磡駅から国境検査場のある落馬州という駅まではMTRという地下鉄(ただしこの路線はほぼ地上を走る)で50分ほどで到着する。

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香港の地下鉄は座席がステンレスでたった50分とはいえお尻がすぐに痛くなる。

ついに徒歩での国境超え

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ここから先は基本的に中国本土へ抜けるまで撮影禁止の場所が多く、ビビってほぼ写真がない。

国境の駅「落馬州」に到着後、駅のコンコースに上がるとコンビニや両替所があるこじんまりとしたエリアとなり、その奥にあるのが香港側の出国審査のブース。ここで人民元を1元も持ち合わせていないのを思い出し香港ドルから人民元に両替。レートもそんなに良くなかったとは思うが、日帰りですぐに帰ってくるつもりだったので3000円相当ぐらいの香港ドルを両替したと思う。(結局半分以上余らせてしまった) 中国の通貨もゲットしたので、香港側の出国審査へ。「訪港旅客(外国人)」の列に並んで係員にパスポートを差し出すと、特に何も聞かれることなくパスポートを機械に読み込ませるだけで審査完了。

香港を出国(出境)したあとは、いよいよ念願の徒歩での国境超えとなる。と言っても子供のころにテレビ番組「電波少年」のヒッチハイク企画で見たような舗装もされていない砂利道を歩いて超えるようなロマンあふれる東南アジアの国境超えとは異なり、動く歩道もついた小綺麗なガラス張りの橋を100m歩いて超えるだけの味気ない徒歩での国境超えだった。

感動に浸る間もなく、次はいよいよ中国の入国審査。橋を渡った先は働いている係員の制服も建物の雰囲気もガラリと変わり、明るく開放感のある香港側の建物と異なり照明も暗く混沌とした雰囲気である。中国に入国するには入国カードを書いて提出しないといけないのは知っていたので、どこに置いてあるかなと思って探してもどこにも置いていない。困り果ててカタコトの英語で暇そうにしていた入国審査の係員に聞いても中国語でわーっとまくしたてられるだけで通じていない模様。橋一本越えただけでここまで雰囲気が変わるのか。徒歩で国境を越えたことよりも超えた先が別世界すぎてそのギャップが激しかった。そういえばよく観察すると入国審査の列に並んでいる日本語をしゃべっているビジネスマン風のおじさん二人組は入国カードらしき紙を持っている。恥を忍んで「あのー、日本人の方ですか?その入国カードってどこに置いてあるかご存知ですか?」と聞いてみたものの「元から持ってたので…」と素っ気ない返事。そら何回も来てたらストックとして何枚かは持っているわな。

結局どうしたか今となってはよく覚えていないが、本来入国カードが置いてある記入用の机に1枚だけ奇跡的に挟まっていたカードをゲットしたような気がする。

なんとか見つけた入国カードに記入して「外国人」の列に並ぶ。実際並んだ時間は10分も無かったと思うがその時は緊張で20分にも30分にも感じた。(後にアメリカやニュージーランドの入国審査で質問攻めに遭うことを考えれば全くもって余裕なのだが) そして自分の番がやってきて、恐る恐るパスポートと入国カードを提出。とにかく入国審査官の顔が怖い。何度もパスポートの写真と実際の顔を見比べて本人かしっかり確認。そして香港側の出国審査と比べて機械にパスポートを読み込ませた後の待ち時間が長い!特に悪いものを持ち込もうとしているわけでもないのに背中に嫌な汗を感じていると、「ガチャン!」と大きな音と共にパスポートにスタンプが。(香港の入国ではスタンプは押されない) かくして無事に初めての中国大陸に無事入国。

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深圳の繁華街をプチ散策

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深圳の地下鉄は切符を買うと紙の切符が出てくるのではなく、コインのような使い回しができる切符になっており、乗る時は自動改札機にタッチ、降りる時は自動改札機の投入口に投入という仕組み。合理的だと思う。

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国境検査場から数駅地下鉄で移動し、老街という繁華街の駅で下車。前もって深圳の観光名所はいくつかピックアップしたものの、それほどパッとしないものが多かったので、せめて何か買い物と食事してそれですぐ帰ろうというのが今回の予定である。

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少しきれいめなショッピングセンターの中にあるシュッとした本屋さん。(スタバの上にある) 言葉はわからないものの、ジャケットが面白そうな本をいくつか見繕って中国本土ではじめての買い物…と思ったたが、レジでやはり英語が通じない。おーぅ…となっていたところ、英語が話せるお客さんがやってきて色々と手助けしてくれた。中国人、意外と優しいのかもしれない…と思い始めた。

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深圳の町並み、香港ほどは洗練されていないものの意外とすっきりとしており、もうちょっと混沌としたものを想像していたが拍子抜けしてしまった。

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わぁ中国のパトカーだーと当時は特に気にせずメモ代わりに撮ったものの、今考えれば色々とマズかったかもしれない。

1時間のプチ散策終了

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本屋で本を買い、スーパーで飲み物を買い、なんだか緊張の糸が切れたのか達成感が出てしまい結局香港へ戻ることにした。散策時間1時間とちょっとの初めての中国体験だった。

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行きと異なり、帰りは羅湖という別の国境検査場から帰ることにした。(ここからも香港側の地下鉄に乗ることができる)国境検査場の前には大量のオムツや粉ミルクを路上で売っている人たちがたむろしており、後で調べたら香港で購入した赤ちゃん用品を個人的に持ち込んで深圳で転売しているとのことだった。中国人の商魂たくましさを垣間見ることができる光景だった。
帰りは特に入国カードを気にすることもなく、淡々と出国のスタンプを押され中国を出境。

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行きと同様にこちらも小綺麗な国境の橋を渡って今度は香港に入境し、徒歩で国境を超えるというミッションは無事に完了した。

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帰りに香港側の駅から見た深圳の町並み。川を越えて香港側はのどかな農村なのに、深圳側は高層ビルが立ち並ぶ都会というのが意外な光景である。

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行きと同じ電車に乗って、戻ってきた香港のホテルからの景色。たった数時間、電車に乗って隣町と往復しただけなのに、列に並んでパスポートを何回も出して通貨も言葉も雰囲気も異なる街の間を往復すると、何だか厳重な警備をくぐり抜けて敵国の秘密を盗み出してきたスパイのような気分になる。そんな達成感で香港の街を眺めるのであった。

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