染太郎7歳の誕生日に


人間で言うと、だいたい44歳。
もういい大人だけれど、染太郎はいつまでも可愛い子。
小さいくせにえばって、意地悪で、我儘。
だけど、本当は優しい子。

ミクちゃん15歳、腎臓病の数値が上がり初めている。急遽、点滴。体重は2.9kgにまで減っていた。
病院に連れて行く時、心配そうに見つめる染太郎。
愛おしい。

ミクも、もう15歳。15年も一緒にいるんだね。
生きる力を見せたミクに、感動した。あたしは、心配で眠れず、ミクの様子を伺っていた。

一度の点滴で、見事に復活を成し遂げた。下痢をしていたが、治っていた。ご飯も食べた。お水も飲んだ。

だが、まだ、点滴が効いているのだろう、と油断はできないと思っていた。三日間、寝ずに過ごした。

二日目に病院へ連れて行くと、体重が3kgまで増えていた。先は長いだろう、と覚悟はしていたものの、すぐ投薬治療に移れたことは、少し安心した。

ネコの腎臓病は治らないが、投薬治療で進行を遅らせることはできる。先生は、3kg切ったらすぐ連れてきて、ご飯を食べなくなったらすぐ連れてきて、と言った。

同時進行で、娘の原因不明の頭痛。CTを撮っても異常なし。娘は、学生時代から原因不明の病気を発症し、入院を繰り返し、様々な検査をした。身体的異常はない。小児専門の精神科を勧められたが、あたしの判断で、小さいうちからの精神科の投薬治療は、厳しいだろうと思い、精神科は受診しなかった。

大人になっても、原因不明の病気を度々起こす。今回ばかりは、あたしも色々考えさせられた。身体的に異常がなければ、精神的に問題があるのだろう。

もう、23歳になった娘は社会人として働いている。心配させまい、とあたしに話さなかった。たくさん話をした。あまり良い家庭環境ではなかったので、申し訳なさで、いっぱいになった。

あたしは、大人になった娘に、精神科受診を勧めたが、娘は拒否した。たくさん吐き出したから、すっきりした、と言い、笑顔になった。その夜、部屋へ行った娘が起きてきて、言った。壁に頭をぶつけていた、と。

今日は仕事へ行く為に、支度をしていた。大丈夫?と、聞くと涙を流した。お母さんの顔見ちゃうと、安心して泣いちゃう。

休んだら?と言ったけれど、今日行かないと二度と行かれない気がする、と言って涙を拭いて家を出た。無理しないで、帰っておいでね。

あたしは、ミクを病院に連れて行く支度をしていた。そうすると、娘からのLINE。電車に乗ったら気持ち悪い、泣きそう、と。支度をしながらのLINEのやり取り。無理せず、帰ってくるよう、返事をした。娘からは、途中下車してトイレで泣いている、と。

そして、やはり精神科を受診したい、と言った。あたしは明日、診察日だったので、主治医の携帯にこれまでの流れと明日は娘も受診したい、とお願いのメッセージをした。

あたしが、ODで意識不明になり、入院した時にお世話になったドクター。とても責任感が強く、優しい声の初老の男性。あたしを心配してくれ、携帯の番号を教えてくれていた。あたしは夜中に泣きながら電話したこともあるが、いつも優しく指示してくれていた。

連休明けの初日は混んでいるだろう、と承知の上のメッセージだったが、心良く娘の受診を承諾してくれた。患者思いの優しいドクター。

娘は夕方、職場の上司と電話で話していた。不満を全て話したそう。結果、労働時間は短くする、部署を変える、ということになり、明日は出勤することになった。

ドクターに我儘を言ったけれど、事情を話し、娘は明日は受診しない旨と、詫びた。娘は言った。これで気を取り直して仕事を続けても、またこうなると思うから、休みの日に受診したい、と。

あたしが経験してきて、言えるのは、信頼できるドクターに出会うこと、自分に合った薬を見付けるのは、時間がかかること。

明日の受診で、そんな起伏の激しい娘のことを相談しようと思っている。あたしのメンタルはいっぱいいっぱいで、割れそうだ。

彼に救いを求めた。仕事時間が早く、ハードなので、早く寝てしまうことが多かった。そして、眠りを妨げられることを、とても嫌った。

それがわかっていたので、早い時間に電話をかけたが出ないので、4コールほどで切った。相当のことがなければあたしからかけることはない。

朝、起きるとLINEが入っていた。

「もう二度と言わせるなよ 眠りを妨害するな」

あたしは、もういいや、と思ってしまった。

「もう二度と連絡しないから電話もしない
ネックレスとブレスレットは捨てた
終わりだ」

と、返事をした。そして、ブロックした。

ネックレスとブレスレットには、彼への想いを刻印してある。引きちぎってゴミ箱の中に、投げ入れた。

なんだろう… ずっと好きで愛し続けた。待つ、と約束した。2年弱待った。連絡が無い日は当たり前になった。束縛の強い彼、それでも愛されている錯覚をしていた。彼はあたしを通して、前に愛した彼女を見ていた。見て見ぬふりをして、物わかりの良い彼女を演じ、忙しいのだろう、と彼を許し続けた。

よく理解はしていた。それは彼の言い方、彼なりの気遣い、お付き合いしていた期間の3ヶ月プラス22ヶ月。比率にすると、どのくらいだ。考えたくもない。

短期間に集中して、様々なことが起きたものだから、心底疲労したのだ。救いを求めたかった。あたしは甘えていたのだ。

彼は逃げ出したくなるような、辛いこともあったと言う。一人で乗り越えたと言う。あたしに話したところで、どうにもならないと言う。自分は他の人間とのレベルが違うと言う。

あたしは一緒に乗り越えたかった。それはただ単に自惚れでしかなかった。ただの気狂いと言った。

もう、なんの未練もない。

彼はいづれ自滅するだろう。そんなに強い人ではないのだから。だけど彼は、おまえは強いからな、と言った。あたしの強さを利用するものだと、勘違いしていた。

もう待てない。
あたしには、家族を護ることが大切なんだ。
あなたの家族には、なれない。

こうして、終わったのだ。

解放感を感じた。
あたしは、自由だ。

朝起きて、もう考えなくて良いのだ、と気楽になった。

ありがとう。
最後のメッセージ。

終わった。

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