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五感スイッチ

 力んでいるつもりは無くても、知らぬ間に肩に力が入ってしまうのかも知れませんね。ふと気づいて深呼吸をすると、吐き出す息と一緒に力が抜けて、心地よいことに気づきます。
 
 肩に力が入って硬直してしまうときって、なんとなくですが、頭でっかちになっているときのような気がします。つまり、思考優位で「考えてばかりいる」とき。デスクワークもそうですし、人の目が気になって緊張しているときも、相手からどう見られるか、自分はどう振る舞えばいいか、ずっと考えていますよね。やらなければいけないことになかなか手を付けられない、というのも、「その仕事の大変さ」を考えすぎているから、手がつけられないのかも知れません。まずは手を動かしてみる、というのは、思考を手放してみる、ということと同義なのかも知れないな、と思いました。

思考を手放すってどうやって? 

 思考を手放そう、手放そう、と「考えて」もなかなか出来ませんよね。一つの方法が、五感(一般的に視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚)のスイッチをONにすること、五感で外からの情報を受け取ることなのかなと私は思います。
 
 このコラムを宿題として携えて、軽井沢に2日ほど行っていたのですが、山道を歩いていると、五感で受け取る刺激がとても多くて、意識しなくてもリラックスと緊張のちょうどよいバランスを保っていられます。
 
目に飛び込む木々の緑、苔、石、モゾモゾと地面を動く虫たち。水の流れる音、蝉の声、人の足音、風が木々を揺らす音、どれも耳に心地よい。滝に向かって山道を登っていくと、少しずつ温度が下がっていくし、木漏れ日が肌に当たればそれも感じます。土の匂い、木の匂い、苔の匂い、どこかから温泉が湧いているのか、空気に硫黄の匂いが混じることもあります。地面を踏みしめて坂道を上がる足にかかる自分の重み、額にじんわりにじむ汗。

自分の身体を、都会に居るときよりもしっかりと感じることが出来る気がします。不意に茂みから蛇が出てくることもあるし、足場が悪いところもありますから、注意して進まなければいけないので、程よく緊張しています。
 
 肩の力を抜いて楽しくおしゃべりしているときも、こんな感じで五感のスイッチが自然とONになっているのかもしれません。

もちろん相手のおしゃべりを聞いて考えてもいるのですが、思考だけではない状態です。相手の話の中身だけじゃなくて、声のトーンやリズムを聞いて、表情を見て、お互いの波長があっていると、なんだか心地よくて楽しくなるのです。気のおけない仲間と散々喋って笑って家に帰ったけど、何を話していたのかと聞かれても答えられないことってありますよね。
それは

「何を話したか」

よりも、

「波長が合って楽しい雰囲気を共有したこと」

が大事だということかも知れません。

 みことの三人で集まると、心地よいリズムだけで話をしてしまって、なかなか実務的な話が進まない、という問題が生じることもあります(苦笑)。
 
 ちなみに、カウンセリングをしているとき、私の五感スイッチは完全にONです。私の臨床的な興味が身体感覚へのアプローチに移行してきているので、ここ数年特にそうなのですが、クライエントさんの話を聞くだけではなくて、表情や姿勢や呼吸を観察しているし、自分の内側の感覚にも注意を払って、相手にチューニングしていきます。

ただ、森の中に居るときと違って、意識をクライエントさんに集中しています。集中力を要するので、長時間は続けられませんが、思考優位で肩が凝るような集中とは違うんです。頭だけでなくて身体感覚を使って働いている感覚がはっきり在るのですが、おふたりはどうでしょうか。お二人の臨床の感覚、聞いてみたい気がします。
                  (M.C)

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