先を知らない幸せ
激辛カレーが大好きなお兄さんに催眠術をかけた話を聞いた。
その人はカレー自体も好きだが、辛いカレーが特に好きらしい。「熱いー!辛いー!美味いー!熱いー!辛いー!」とか言いながら美味しそうに食べるそうだ。
そんな人に実験的に催眠術をかけてみたそうだ。
「あなたは、辛いものが苦手になる…3.2.1…ハイッ!」
パチンと手を叩くと、今まで喜んで食べていた激辛カレーを食べた瞬間、「辛いー!痛いー!嫌だー!」と泣きながらトイレに駆け込んだのだそうだ。
これはつまりどういう事か?
物事を好きになるには、物語があるという事だ。
このお兄さんの場合、激辛カレーを好きになるまでの物語があったというわけだ。キャンプに行って、初めて自分達で作ったカレーが美味しかった、楽しかったという物語。好きな先輩に連れて行ってもらって、激辛カレー屋さんに行って、嬉しかったという物語。カレーに関するポジティブな物語が重なっているから、激辛カレーが好きになったのだ。その物語の部分をだるま落としみたいに催眠術ですっ飛ばしてしまうと、何故好きなのか、何故嫌いなのかが分からなくなってしまうというわけだ。
同じように、あなたの好きなものや好きな人にもきっと物語があるはず。嫌いなものや嫌いな人にも物語があるんだ。
私も、そう言えば小さい頃ピーマンが嫌いだった。けれど、留守番をしている時に当時ファミレスでバイトしていた兄が細かく刻んだピーマンでチャーハンを作ってくれてから、ピーマンが食べられるようになった。
コーヒーよりも紅茶が好きだった。会社で事務をしていた頃、会議室にコーヒーを出しに行くと、おじさん達が煙にまみれた部屋で2杯目のコーヒーを飲もうとしているところだったり。コーヒーに対してマイナスイメージだったものが、旦那がコーヒーをブラックで飲むのが好きだったので、一緒に飲んでいるうちに私も好きになった。
稀に前世の記憶を思い出す人がいるが、それは前世からのこんな物語をふと思い出したりするのだろう。逆に、前世の記憶を思い出せない状態というのは、この、催眠術で物語をすっ飛ばしてる状態なのだろう。
悩み事というのは、過去の後悔と、未来の不安がほとんどらしい。
前世を思い出せない私は、じゃあ、過去の後悔なんて気にせずに物語をすっ飛ばした状態だと考えて、未来に安心感たっぷりの人なんて存在しないだろうから、そこも気にしなくていいのでは?
先を知らない幸せだってある気がする。
今の現在地が楽しく嬉しければ、その積み重ねがきっと物語になる気がする。
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