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「無駄な時間」なんてない。|『モモ』を読んで

子どものころ大好きだった『モモ』が、Kindle Unlimitedで読めるようになっていました。

ストーリーもうろ覚えだったんですけど、「子どもの頃に読んだ本を大人になったいま読んだら、なにを感じるんだろう」と気になって、読みはじめました。

そしたら、まぁおもしろい。
深夜3時までかけて、一気読みしちゃいました。

あらすじ

家もない、家族もいない女の子『モモ』が主人公です。モモは、今は使われていない「円形劇場跡」を気に入って、そこで暮らしはじめます。

モモの周りには、ステキな友人や子ども達がいつもやってきました。豊かではないけれど、想像力を働かせて楽しく遊び、暮らしていました。

しかし、あるときから街に不穏な空気が漂いはじめます…

「灰色の男たち」が少しずつ、街に現れはじめたのです。彼らは大人のところへやってきて、こう言います。

あなたたちはこれだけの時間を無駄にしている!豊かな人生のために、今から時間を倹約しましょう!時間貯蓄銀行に、時間を貯めるのです!

そう言われた大人たちは「そうだ、たしかに時間を無駄にしちゃいかん。無駄なことはぜんぶやめて、時間を貯蓄しよう。」と考えます。

しかし、これは罠でした。「灰色の男たち」の正体は「時間どろぼう」です。人間に倹約させた時間を使って、彼らは生きていたのです。当然、倹約して貯めた時間が戻ってくるはずはありません。

大人たちはせかせかと働き、無駄な作業やおしゃべり、趣味も全部やめて、時間を倹約します。それなのに、時間は全く増えません。なんとかしようと、さらに時間を倹約して働くようになりました。おかげて大人たちはいつもイライラ、せっかち、怒りっぽい。

そんな異変に気づいたモモと子どもたちは、「時間どろぼう」たちから時間をとりもどすため、ある計画を立てはじめます…

「風刺」は大人にしかわからない


・無駄なこと
・ちんたらと時間のかかること
・何もしないこと

これらをぜんぶ「時間がもったいない!」と一括し、代わりに「有益なこと」「将来のためになること」を、ほんのわずかに空いたスペースにも、せっせと詰め込む大人たち…。

そして、それは子ども達にも。

道路で遊ぶのは邪魔だ!といい、塀に囲まれた施設に全ての子どもをいれてしまいます。
その中では、「将来の役に立つあそび」しかさせてもらえません。

「モモ」の世界は現代の風刺ですよね。
だけど、子どもの頃はそんなことわからなかった。ただ単純に「ワクワクする冒険ファンタジー」だと思ってました。

風刺だ、っていうのは、自分が大人になったからわかったことでした。
それから「現代の風刺」だな〜、なんて思ったけど、これ1970年代の本なんです。50年前ですよ、50年前。ホントにびっくりしました。

作者は50年前から、「灰色の男たち」がいることに気づいていたのかもしれない。時間をケチケチしていると、もっと時間がなくなるってこと。
そして、時間よりもっと大事なものまでなくなるんだ。ということを、「モモ」を通して伝えたかったんだろうなぁ。


オソイ、がハヤイ。

灰色の男たちに追われるモモ。

通りという通りには、灰色の男たちがひしめいていました。家々の屋根の上にも、地下の下水道にも、たくさんすわりこんでいました。鉄道の駅も、飛行場も、バスも、電車も、ひと目につかないようにして監視しました。ようするに、あらゆるところで目を光らしていたのです。  けれどモモは見つかりませんでした。

モモが灰色の男たちに捕まりそうになった時、颯爽と助けにきたのが「カメのカシオペイア」でした。この子がまた、かわいいんだ。

「ねえ、カメさん、」とモモはききました。「いったいどこにあたしをつれてゆくの?」  ちょうど、とある暗いうら庭をとおりぬけたところでした。  「シンパイムヨウ!」と、カメの背中に文字が浮かびました。

 

そう、カメのカシオペイアは、背中に文字を浮かび上がらせてモモと会話ができるんです。そして、「少し先の未来が見える」というスーパー亀さん。

このカシオペイアとモモは、亀のスピードで歩いてるわけです。でも、そんな二人を灰色の男たちは走り回って、大勢で探しています。だけど見つからない。

「オソイガハヤイ」
と、カシオペイアは言います。

モモの仲間には、のんびりとした人が出てきます。言葉がうまく紡げなくて、話すのに時間がかかる友人、ベッポ。そして歩くのがとっても遅い、カメのカシオペイア。

周りの大人達は、ベッポを「変なやつだ」と言って、病院に入れようとしたり、話をろくに聞こうとしません。

でも、モモはちがいました。いくらでも待つことができたんです。

わたしはできるだろうか、と考えてしまいました。一言、一言つむぐのに時間がかかる人。そういう人を、せかしたり、話を早く切り上げたりせず、いつまでも待てるかなぁ。モモみたいに。



まだまだ、書き足りないくらい。
ステキな名言がたくさんでてくる本でした。
どれもじぶんにジワジワと沁みます。

大人になって忘れてしまった大切なもの。
忙しい毎日で見過ごしていたもの。

そういった「本当に大事なもの」に、もう一度目を向けよう?といわれているような気がしました。

そして単純に、冒険ファンタジーとしてもめちゃくちゃおもしろかった!
時間どろぼうからの、時間奪還作戦!モモに託された、全人類の「時間」。

灰色の男たちに、モモは勝てるのか。
人間のだいじな時間を、取り戻せるのか。

ハラハラドキドキ、最後まで一気に読み進めてしまうくらい、読者を離さないストーリーです!

ぜひ読んでみてほしいなぁ。そして、いろんな人の感想をききたい!

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