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バーチャルアイドル(仮)が残したもの

これはVTuberの引退話ではない

バーチャルアイドル(仮) 通称:バチャカリ というプロジェクトがありました。
クラスターというバーチャルプラットフォームが発祥のバーチャルアイドルプロジェクトです。
クラスターに馴染みのない方でも「輝夜月ライブ」や「YuNi令和カウントダウンライブ」が開催されたプラットフォームといえば名前くらいは聞いたことあるかもしれません。

2019年6月30日、プロジェクトの終了をもって無期限の活動休止(事実上の解散)となったバチャカリ。しかし、彼女たちの活動は決して無駄ではなかった。むしろ、後世に残すべきものがあった。
誰かが語らねばいけないならアタシがやる!
7月1日の深夜0時から文章を書き始めましたので乱文長文になりますがご了承ください。

プラットフォーム発祥という彼女たちの特殊性から、一般的なVTuberとは違う切り口でのお話となります。

バチャカリとは?

バチャカリの紹介はいくつか記事が出ているのでそちらをご確認ください。

動画などはこちらもどうぞ
https://virtual-youtuber.userlocal.jp/user/0ED07C739A51DB1E_9cb6c1


触れ合えるアイドル

上記の記事にありますようにバチャカリのコンセプトに「ふれ、あえる、アイドル」があります。
その名のとおり、バーチャル空間であれば彼女たちに触れることができるのです。

正式に動き始めた1月中旬から毎週「バチャトーク」と題してcluster内でルームを作成し、ファンを集めて交流をしていました。ときには運営の表川翠さん1人で今後の方向性をファンと一緒に考える「バチャ会議」が開かれるときもありました。(※翠さんは"声"が無いのでチャットで会話します)
大多数のVTuberは"YouTube配信でコメントをもらい"ファンと交流していますが彼女たちは"バーチャル空間でファンと触れあう"ことにより交流を深めたのです。

バーチャルであればよりファンとの"物理的な"距離が近くなるということ。バーチャルなのに物理的なというのもおかしな話ですが、実際にバーチャル空間に入っていたものとしては彼女たちと非常に距離感が近く、まるで家族のような親しみを感じるようになりました。
リアルアイドルであればステージから降りてファンと触れ合うなんて一切できません。握手会ですら危険な世の中です。


バーチャルライブ(仮)が残したもの

バチャカリが発足した当時はクラスターにおける音楽ライブイベントはカグヤルナライブ1stくらいでした。その後、数々の音楽ライブが開催されることとなるのですが、バチャカリ自体がVRライブをやるうえでの宣伝材料やパイロット的な位置づけにはなっていたと思います。

ファンとしては分からない部分ですが、内部としてはそのノウハウは確実に蓄積されることでしょう。数か月前はバーチャルの音楽ライブといえば通信障害などのエラーの不安がつきまとっていましたが、今では安定したライブを開催できて「安心と信頼のクラスター」と言われています。

バチャライブ1stの会場(ライブハウス)はのちにKMNZ、朝ノ瑠璃、花鋏キョウ、バーチャルゴリラ&乾伸一郎などなど多くのVTuberがライブを行うことになります。今後もVRライブの定番会場になることでしょう。


バチャ春が残したもの

バチャカリ最大のイベントとして「サクラサクフェスティバル ~バーチャルな春~」(以下:バチャ春)というものがありました。
2019年4月7日から4月14日までの8日間、ルームを常時開放し、スペシャルゲストを呼びバーチャルでお花見をするという内容です。
※詳細はイベントページをご確認ください

さくらみこ、星宮ぐみ、ときのそら、朝ノ瑠璃、千条アリア、AZKiをゲストに招いて非常に多くの方にクラスターを知ってもらうきっかけになったと思います。

また、常時開放というところが重要で、クラスターではVRChatのようにワールドがあるわけではなく、主催者がルームを建てて参加者を呼ぶのですが、そのルームは4時間で閉まってしまいます。
しかし、バチャ春では閉じることなく朝でも昼でも夜でも開放し続けます。その結果、何が起きたかというと「バーチャル世界に住み始める」ということです。

イベントが行われていなくても、平日家に帰ればバチャ春会場にログインして様子を見に行く。深夜になれば人が集まり、普段のイベントでは着ることができないような超巨大アバターで走りまわるというカオス空間を演出。
まさしく「みんなで作るお花見」という様子でした。こればかりは中にいた人じゃないと理解しがたいと思いますが、みんなで面白いことをしようと取り組んだ結果、Unityの理解レベルが一段あがりました。

このような「ファンが気軽に集まるラウンジ」がバーチャル空間に存在したことは意味のあることだと思っています。ファン同士で交流を深める場所にもなりました。

バチャカリが実現したかった夢

最後にバチャカリが残したくても残せなかったものについて語ります。
完全に1ファンの予想でしかないことを予め断っておきます。

・ファンと作るバーチャルアイドル

運営の翠さんは常々「ファンと作る」ということを大切にしていました。現状のVTuber業界は運営からファンに対して(悪い言葉を使えば)与えている、一歩通行です。しかし、クラスターに集まる者たちはセカンドクリエイターの集団みたいなものなのです。そこを利用してもっと何かできることがあったはずなのですが、逆に言えばプロジェクトの計画性・方向性が薄かったのかなとも感じます。
恐らくcluster社からはある程度切り離されて翠さんが独立して動いていたのだと思います。

・クラスターを箱にしたアイドル

当初の予定としては月イチでライブを行う予定でした。(2か月でストップしました)
これはいつか別のVTuberさんが受け継いでほしいのですが、クラスターは箱(ライブハウスの意)としては優秀だと思います。既に箱推しが数十人います。小規模ながら定期的にライブを行い、ファンと触れ合う。これこそ、地下アイドルが実際にやっている活動に他なりません。
バーチャルライブのノウハウが蓄積されバーチャルアイドルを興行として確立された時にはクラスターを箱にしたアイドルが今後必ず出てくると思っています。その時には今一度バチャカリのことを思い出したいです。

最後に: 感謝の言葉

バチャカリの残したものとしての文章はここまでになります。
最後にバチャカリに携わったすべての方にお礼を伝えたいと思います。
個人的な感謝の言葉なので読み飛ばして構いません。ものすごく上から目線でコメントします。

大鳥いつきさん、前田花奈さん、風見舞子さん、あなたたちの歌は人の心を動かすだけの力を持っています。バチャカリとしての活動は休止になりますが、これからも世界のどこかで歌い続けることでしょう。バチャカリのメンバーとして過ごした日が彼女たちのプラスになることを祈っています。

運営の表川翠さん、おそらくこのような大役は初めてだったかもしれません。あなたは最後に「失敗」という言葉を使いましたが決してそのように思っていません。あなたのキャリアとしてバチャカリを運営したという実績は残り続けます。今後は表川翠としてではなく1人の会社員に戻るのかもしれませんが、今後の糧としてもっと良いものを生み出してください。

楽曲提供だいちさん、キャラデザたまかがさん、素晴らしい作品をありがとうございました。願わくばバチャカリが続いてお二方の代表作のように扱われることを願いましたが、かないませんでした。今後とも、素晴らしい作品を生み出していくと思われますが、もし機会がございましたらまたバーチャル方面に寄与していただけましたら幸いです。

そして陰ながらバチャカリに携わったすべての方々、本当にありがとうございました。みなさんのおかげでバーチャル世界を楽しむことができました。今後ともよろしくお願いいたします。

以上、個人的なメッセージでした。

この文章がバチャカリを全く知らない人たちに届いて、そういうものがあったのかと知っていただけましたら、彼女たちの活動が後世に残せるかと思います。

2019/7/1 Mikko Hietalahti バーチャル世界より

彼女たちの残したメッセージ ※2019/7/3追記

最後にもう一度、これはVTuberの引退話ではありません。
昨今では演者と企業の軋轢により引退してしまうVTuberも多い中、3人は共通して「楽しかった」という言葉を残してくれました。プロジェクトとしては残念な形で終了してしまいましたが、彼女たちはこれからもどこかで歌い続けてくれることでしょう。

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