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国家非常事態宣言の未来

 『2030年ジャック・アタリの未来予測』という本によれば、下記にような予測がなされている。
「人類が倫理観を変化させ、世界中で人々が次世代の利益を重んじる利他的な活動を行い、そうした活動が広く認知され、人類が利他主義者たちの必要とする地球規模の法規範の制定を支援しなければ、人類はまたしても壊滅的な事態に陥るだろう。われわれが現在抱える問題は単なる予兆にすぎないのだ」

 今、世界で起こっている「不都合な真実」から目を伏せてはいけない。時代は明らかにジャック・アタリの予測に近づいている。これは、人類の歴史を振り返ると自然の成り行きであると覚醒させられる。今まで、人類は戦争を繰り返して進化してきた。これから、戦争のない未来など存在しない。

 今、迫っている危機は、中国を発端とした世界的なバブルの崩壊と、保護主義化、自国通貨への回帰である。ジャック・アタリは日本の危機については以下のように予測している。
「日本の巨額債務バブルの崩壊は、中央銀行が大量に供給する調達コストがほぼゼロの流動性によって引き起こされ、金利と物価は急上昇する。人口に占める退職者の割合が増え、生活のために預金を取り崩すため、今後5年の財政収支は赤字で推移するだろう。円暴落は、すべての政府の資産(同じようなリターンやリスク特性をもつ投資対象になる資産)に影響を及ぼし、現金やゴールドへの逃避が加速し、日本経済は崩壊する。」

 このような時代背景の元で、日本の企業はどう対応すればよいのであろうか。アメリカのトランプ大統領は2019年2月に国家非常事態宣言を発令し、メキシコとアメリカの壁の建設に向けて動き出した。世界は益々保護主義化を加速してきており、ジャック・アタリ氏の未来予測のとおりに突き進んでいる。

 ジャック・アタリ氏は「市場やテクノロジーの進化によるイノベーションだけでは、政府ならびに民間の債務を一掃することもできないだろう。技術進歩は、資産格差を広げ、慢性的な失業を生み出し、ロボットの導入は失業をもたらす。世界的な法の支配はなく、市場の欠陥を補う機能はない。そこで、われわれは中央銀行を頼りにするしかない。あらゆるデータによって不可避であることが示されたこうした不均衡な状態では、小さなショックが大惨事につながる。」と警鐘を鳴らしている。

 この「不均衡」を人類はどのようにして克服することが出来るであろうか。ジャック・アタリ氏は、テクノロジーの進化が格差を生み出し、人類に不均衡をもたらしていると予測し、利他主義者による地球規模の法整備が必要だと訴えているが、各国が保護主義に走る中、地球規模の法整備が本当に可能であろうか。

 21世紀は、人類史上の転換期であり、行き過ぎたグローバリズムの転換期であると共に、人工知能の進化によるテクノロジーと人間の知性との転換期でもある。人類の歴史を遡ると、戦争の多かった時代から人類は技術の進化により産業革命を起こし、豊かさと新しい雇用を生んで進化してきた。21世紀は、更に進化した技術を使い、未来予測を行うと共に、「人類の終焉か存続か」を常に問い続ける新しいグローバリズムへ進化する必要があるのではないかと思う。

 この最新テクノロジーを身に着け、人類のために使いこなす能力は、未来を生きる若い世代に託すしかない。AI(人工知能)を使い将棋を学んだ藤井聡太は将棋界で最年少記録を塗り替えており、若い知性がAIと共に進化していることを予感させられる。このような若い知性を中国は数千人規模で集め、AI兵器の開発に投入しようとしているが、それは全人類に取って破局への第一歩でしかない。

 今、現実にグローバルで起きている「不都合な真実」を見逃さないで、徹底したリアリズムをもって戦うことが、今まさに求められているのではないだろうか。

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