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めし炊き。

米を炊く時にいつも思い出す記憶がある。

私が子供の時、親戚以外で可愛がってくれるオジサンがいた。

趣味で農業しているらしく、よく米を持って来てくれる物腰穏やかで鷲鼻の細身の男性だった。しかし、ウチは米農業やってんのよ。

当時は農薬やら旺盛な時代で、私たちの口にするものは気にしなければプラスチックを食べていると変わらない食品が(今よりもなお)横行していたけれど、母は食べ物は自然なものや海外のオーガニック取り寄せたり、こだわって私たちに与えてくれていた。

そのオジサンも無農薬で米を育てていると、山間の水が交わる田圃が栄養が集まり美味しい米が出来るのだと教えてくれた。

私は畑で採れた物を食べる時、必ず虫が混入していて毎回食べちゃうので、嫌だなぁと話したことがあった。

オジサンは虫はタンパク質だからいいじゃないか元気になるよと笑っていて、私はホウレン草のお浸しに入っていた硬い何かを噛んでいたらカナブンだったと石みたいだったと言うと、タンパク質は熱を通すとそこまで硬くなるんだなと更に笑った。

オジサンは毎年お米をくれていたが、名古屋や福岡によく出張に行っていて、出張が増えると共に米の頻度が少なくなっていった。

思い返す最後の、お米をくれる時、お前は本当にカンと目がいいな何もかも分かっているんだなぁと、だけど人間を真っ向から変えようとすんなよ、どうでもいい話しの中に少しだけ真実を混ぜるんだ、気付くやつは気付くからなと言った。私は、ふぅん、と分かった振りをした。

それからオジサンは来なくなった、そして今も。

どこかで、生きていてくれればいいが、まだ古臭い仁義やってんのかな。早くこだわりの米持ってこいよ、と待っている。

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