見出し画像

「待ち時間の心理学」から学ぶ顧客満足度を上げる方法


先日、『待ち時間の心理学』についてポストしました。この10項目はウィルツ&木村 サービス・マーケティングという書籍から引用しましたがサービス・マーケティング、あるいはサービス・マネジメントの世界では古くからある考え方です。

アメリカの経営コンサルタントのディビッド・マイスターは、待ち時間に関する心理と、それに対応するために顧客が待ち時間を短く感じる8カ条の対策を挙げ、経営学者のクリストファー・ラブロックがそれに2つを追加したのが10項目の原型です。

この10項目を見ていただくと”長く感じる”と表現されていることがわかります。この感じるというところがポイントで、実際の待ち時間とは別に待ち時間が存在するということです。

あなたも経験があると思いますが、飲食店で自分の方が先に来店して食べ物を注文したはずなのに別の席の方が食べ物が早く到着している!というとき。もちろん怒るまではいきませんが何となくモヤモヤするあの感じ。

これはオーダーしてから長時間待ったからではなく、「こっちの方が先じゃないの?」と疑問を持ったから待ち時間が長く感じたということです。

2種類の待ち時間

宿泊業界では人手不足と労働生産性の低さから業務の効率化、生産性の向上の必要性があらゆるところでこれでもか!と叫ばれていますが業務を効率化するだけでは実際の待ち時間しか短縮できません。

この図のように”待たされ感”は以下の二つの待ち時間で構成されています。

①直接的な待ち時間
②感覚的な待ち時間

例えばAのお客様はチェックインの待ち時間が5分、Bのお客様は10分でした。しかし、Aのお客様は別のお客様に割り込まれてしまい、チェックインの順番が後回しになってしまいました。この場合、実質的な経過時間はAの方が短いのに、体感時間ではBの方が短くなる可能性があるという意味です。

直接的な待ち時間を減らすことはとても大切なことです。従業員の一つあたりの業務時間は減るわけなので、その分、同じ時間で多くの仕事が出来ます。ですが、それだけだとゲスト側の気持ち、満足度に関しては変わらないこともあり得ます。

では何ができるのか?小規模宿泊施設では潤沢なリソースがないからこそ、感覚的な待ち時間をできるだけ減らして顧客満足度を高めませんか?ということです。

感覚的な待ち時間をいかに減らすか

チェクイン時間の15時、あなたの働くホテルのロビーでは多くのゲストがチェックインをしようと並んでいるとします。感覚的な待ち時間を減らすにはどうずればいいか、待ち時間の心理学10項目を活用します。ここでは私がチェックイン時に気をつけていることと絡めて該当しているなと感じた項目を書きます。

無人の時間は有人の時間より長く感じる


ゲストが玄関に入られたらまずはお声がけをします。別のお客様の対応中でも可能であれば挨拶、難しい場合はアイコンタクトをします。お客様からすると一人でいて ”ホテル側に認識されていないのでは?” という不安感が時間を長く感じさせます。

身体的な苦痛があると長く感じる


特に高齢のゲストの場合は移動疲れを想像してチェックイン時は可能な限りソファや椅子に誘導して説明します。苦痛とあると大きなことをイメージしますが、疲労感も立派な時間を長く感じさせる要因です。「移動大変でしたよね」と一言あるだけでも印象が大きく変わってくるはずです。

待ち時間を不公平だと思うと長く感じる


チェックインは到着順であることを説明したり、他のお客様がいらっしゃる状況で常連のお客様にべったり対応しないようします。今までの過去の会話があるのでつい話し込んでしまいがちですが、「あのスタッフは常連を優遇している」というゲストの気持ちは不公平さを生み出す理由になります。

終わりが分からないと長く感じる


チェックインの説明は説明項目がどれだけあるか最初に分かるように用紙を見ていただいてます。プレゼンテーション資料などでも全体の内容がどれだけあって、今はどこの部分を話しているか分かるようにしているものがありますが、”終わり”と”現在地”が分かることで人は安心できます。

不安感を持つと長く感じる


「私はあなたを認識しており、一人のゲストとして敬っています」ということを言葉や身振り手振りで伝えます。上記の内容は全てゲストの「不安感」に帰結すると思っています。ちゃんと認識されているのか、自分の番は回ってくるのか、不公平な待遇にならないかなど ”不安感” は宿泊において百害あって一利なしですので可能な限り排除できるようにします。

チェックインひとつでもこれだけ工夫できます。ゲストとの各タッチポイントで「お待たせ感はないか」を振り返って①直接的な待ち時間 ②感覚的な待ち時間のそれぞれを減らせないか改善することが顧客満足度に繋がります。

感覚的な待ち時間への対応は明日からできる内容ですのでぜひ実践してみてください!

OPERATION REPORT[オペレーション レポート]は30室以内の小規模宿泊施設オーナーやそこで働くスタッフの方に向けて記事を書いています。運営に役立つ情報をオペレーターである私が学んだこと、実践していることを紹介しています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?