小さなホテルで ”スタッフ全員マーケ” を実現する4つの問い
この投稿について興味を持っていただける方が多そうだったので、詳しく解説します。
私は以前、小規模宿泊施設のマーケティング支援を行っていたのですがクライアントの状況は似通っていました。特徴は以下です。
小規模宿泊施設は一人一人の業務が多岐にわたることと、マーケティング経験者を外から引っ張ってくるのは環境面と給与面で難易度が高く、マーケティング専任で人を雇うのは難しいのが実情です。そこで現場で働く人が皆、マーケティングを用いて自走するような組織になってほしいというのがオーナーの願いでした。
そういった会社のご相談を受けてまず話をするのは「マーケティングは横に置いておきましょう」ということです。私自身、実感していたのはローカルの中での”マーケティング”という言葉のわかりずらさ、もっというと胡散臭いものと捉えられることが往々にしてあります。
全員マーケを実現する4つの問い
過ごしてきた環境が違い、さまざま年齢で構成されているチームが集まって急に「マーケティングしよう」と言っても思考が停止してしまうのも当たり前です。ではどうするか…そのような時は言葉の言い換えが効果的です。マーケティングではなく以下の4つについてそれぞれ考えてみましょうと話します。
もちろんマーケティングが何を指すか、理論やフレームワークはもっと幅広いものですが考えやすくするために簡素化しています。
マーケティングの名著『確率思考の戦略論』の中で戦略の焦点は3つしかなくそれは「Awareness」「Distribution」「Preference」であるという説明があります。
日本語で『Awareness=認知』『Distribution=配荷』『Preference=好意度』と書いてありますが深く読み込まないと意味が掴めません。
そこで上記の4つのパートに分けてみます。
①どうすれば私たちを知ってもらえるか
いわゆる認知の部分ですが、お客様に存在を知ってもらわなけらば話は始まりません。例えば山奥に三つ星レストランのシェフと5ヶ国語話せる素晴らしいホスピタリティ精神のあるスタッフがいるオーベルジュがあったとしても人に知られなければ意味がありません。
そこで多くの方に知っていただく必要があるわけですが、その方法を考えます。「認知を高めるためには?」ではなく「もっと多くの人に知ってもらうには?」と言い換えるだけで考えやすくなります。
②どうすれば私たちを好きになっていただけそうか
お客様に知っていただくだけでは、商品である自施設を選んでいただけません。知ってはいるけどイメージが悪いということもあるからです。炎上商法で日本中には知られてはいるけど印象が悪ければ意味がないわけです。
簡単なことではありませんが、どのようにしたら自分たちの施設やブランドを好きになっていただけるだろうかと考えます。
③どうすれば私たちの存在を思い出していただけるか
3つ目の問いも重要です。私たちは何かを購入するときに、頭の中の選択肢から選びます。身近なもので考えるとわかりやすいのですが、あなたはカフェラテを飲みたいとします。そうしたときに複数の選択肢が生まれるはずです。スターバックス、ドトールなどのカフェからセブンイレブンの店頭機械で入れるもの、森永のマウントレーニアまでさまざまです。その中から購入しやすさや味などを踏まえた上で一番良いと思ったものを選ぶようなイメージです。
この選択肢群を”エボークト・セット”といいますが、お客様が旅行をしたいと思ったときにこのエボークト・セットの中にあなたの施設が入る必要があります。
④どうすれば私たちのサービスが購入しやすくなるか
購入しやすさにはさまざまな側面があります。精神的な部分もあれば、物理的に購入しやすいということも。ユニクロのセルフレジは物理的にも精神的にも簡単に購入できる素晴らしい例です。
ただし、どの商品もとにかく購入しやすくすればいいわけではありません。ラグジュアリーブランドは意図的に購入しにくくすることで希少性を出したり、お客様の層を絞ることがあります。ですので、どういったお客様にきていただきたいのかも考える必要があります。
参考までに以前実施したワークショップの内容の一部をお見せします。2時間のワークショップでたくさんのアイデアが出てきて私も驚きました。(本当はもっと右側まで細かく書かれています。)
この内容を見て興味深かったのは何かサービスを追加するだけでなく、引き算するアイデアもあったことです。例えば自分たちのサービスを購入してもらいやすくするために『宿泊プランの数を減らす』という内容がありました。
宿泊施設によってはプランの数が多く、予約までに離脱してしまうことがあります。私自身も経験として「結局、どれがいいんだ・・・」と悩んで予約をやめた経験が何度もあります。このようなシンプルな問いがあることで目的に沿った施策が考えやすくなります。
ワークショップのポイントとして、アイデア出しの段階では「それってどうなの?」と遮らないこと。全部出し切った後に実現可能性とリソースを鑑みて優先順位と各タスクの締め切りを設定します。
幅広いメンバーで考えるメリット
ワークショップ後のアンケートを見ると「自分もこういうことを考えても良いんだと分かって施設に愛着を持ちました」と書いてくださった方がいました。
自分の施設をよりよくするには?とさまざまな側面から考えてアイデアを出す過程で、今までより自施設や業務が自分ごとになるのだと思います。マーケティングは本来、マーケティング部の人だけがするものでもなく、誰でもやっていいはず。
そして個人的にこのようなことを全員で考えられたらいいなと思う理由は、マーケティング施策の内容が幅広くなることです。例えば、マーケティング担当者が一人で考えた時、それまでの経験から紙媒体に偏ったり、逆にデジタル施策ばかりになることがあります。
それをさまざまな人が集まって考えることで、目的に沿った最適な施策が考えやすくなります。極端に言えばゲストのメイン客層が20代なのに新聞広告をしてしまうところを20代のスタッフが入ることで「そこはTikTokの方が有効なのでは?」と議論ができます。
全員野球!ならぬ全員マーケを目指してみてはいかがでしょうか。今回ご紹介した4つの問いが参考になりますように。
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