柳川藩主立花邸 御花の「能楽」体験について語らせておくれ
2m先に狂言師の方がいて、面から落ちる汗が見える。あたりはふんわりと良い香りがして、その光景や緊張感に日常を忘れて歴史・文化を嗜む贅沢さを感じられる——
先日、福岡にある『柳川藩主立花邸 御花』の能楽公演で素晴らしい体験ができましたので少しでも感じたことを残しておきたいので記事にいたします。(まだ体験のチャンスはあるよ!)
初めての能楽体験
能楽について私がどれくらい知識があったかというとほぼ皆無という状態でした。チョコプラ長田さん、もとい、和泉元彌さんの「そろり、そろり」は能?狂言?ぐらいの認識。(すみません)
そんな状態で参加したわけですが、公演が始まる前に役者の方が能と狂言について説明をしてくださりました。能と狂言合わせて「能楽」であり、二つは長い歴史の中で兄弟のような関係性で現代まで続いてきたと。
私が10月に参加した公演は狂言がメインの会だったのですが、狂言師の方が仰る通り、現代でいうコメディ的な要素があるので初見でも何度も笑う場面がありました。まず、この”笑えた”ということが嬉しかったです。
”体験”だからこその良さ
今回の公演は福岡県にある『柳川藩主立花邸 御花』という料亭旅館の中にある能舞台で行われました。(館内にあるってどゆこと?)
どのような宿泊施設か補足すると、江戸時代に柳川藩主 立花家の別邸として御花の歴史は始まり、現在の建物の多くは明治時代に伯爵家となってから整えられたものとのことです。
迎賓館として建てられた鹿鳴館様式の美しい『西洋館』や国の名勝に指定された池庭『松濤園』、庭を臨む100畳の『大広間』など見どころはたくさんあるのですが、この大広間に能舞台があります。
⼤名家にとって能は、武家⽂化を表す『式楽』としてとても⼤切な儀式だったようで、柳川藩主であった⽴花家も能を⼤切に継承しており、代々『喜多流』の能を守ってこられました。
”かつて、殿様が嗜んでいたような体験をあなたに。”
という言葉が紹介ページにあるのですが、この体験という少し敷居を下げてくださっていることが有り難かったです。
株式会社 水星の龍崎翔子さんが「ホテルはライフスタイルを試着する空間」と宿泊施設での体験を見事に言葉で表現されていますが、まさに能楽を試着できたような印象でした。
通常の公演だと元々知識がある方がいて、ある種、空間は完成されていると感じてしまいます。ましてや、600年以上も歴史のある能は一見さんにはとっつきにくい印象がありました。
ですが、宿の宿泊プランとして組み込まれていることで未完成の余白が感じられ、初めてでもマイペースに楽しむことができました。公演前に狂言師の方が自らストーリーを説明してくださったことも有り難かったです。全体の物語を把握しているからこそ、公演中に疑問があまり湧かず、内容に集中できました。
2m先に狂言師がいる緊張感
この写真を見ていただくとわかるのですが、客席と舞台との距離が本当に近い。お腹から出す声の大きさや、床を踏むズドン!という力強い音、面から落ちる汗まで目の前で見えます。
長年の稽古や舞台で演じてきた役者の方の一挙手一投足に見入り、その積み重ねられてきた鍛錬が間近で感じられるので良い緊張感がありました。
私が座っていた所からだと、舞台の奥には西洋館が見えており、真後ろには見事なお庭、鈴虫の音が聞こえながら進む物語に「私は今どこにいるんだろう?」とタイムスリップしたような不思議な気持ちになりました。
し、しかも!公演後にはまさに能楽体験の時間がaaaaあ!!!
舞台に立たせていただき、実際に使っている面までかけさせていただきました。こんな贅沢なことありますか…?面をかけると視界がとにかく狭く、自分の身体じゃないみたいな感覚になりました。
「これをかけながら演技をするのか・・・」と役者の方の凄みを垣間見ることができますし、とっつきにくい文化や歴史は体感すると距離が一挙に縮まるなと今回の企画を通して改めて実感しました。
6月にも公演があるぞ!
2023 年 6 ⽉ 20 ⽇(⽕)にも同企画で公演があります。能楽に興味がある人も、「そろり、そろり」くらいしか知らなかった私のような方もめちゃくちゃお勧めです。
宿泊施設で働いている身からすると、少し悔しいほど良い体験でした。宿泊業って、もっといろんなことが出来るんだなと…
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