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脳波をビジネスにどう応用するか?ニューロマーケティングとは?

ニューロマーケティング、ニューロフィードバッグ、ブレイン・マシン・インタフェースといったニューロサイエンスを元にした技術が近年注目を集めています。

これらのブレインテックをビジネスに応用する動きも各所で始まっています。

本記事では広告代理店で研究員としてニューロマーケティングに携わり、大学でニューロサイエンスの研究をしてきた筆者が、ブレインテックのビジネスへの応用方法について解説します。


脳波はどんな事に使えるか?

脳波は脳の活動を頭皮上に設置した電極から読み取る方法です。

侵襲性が低く安全な計測方法として、病院でも使用されています。

睡眠時無呼吸症候群の判定に使われる事もあり、睡眠時の脳波と、筋電や呼吸状態などを組み合わせて、睡眠の段階を判定します。

また、てんかんの発作時の脳波は特徴的な形を示す事が知られており、てんかんの発作の判定や予測に使われる事もあります。

医学面が強かった脳波ですが、以下のようなポータブル型の脳波計の登場によって、応用の幅が広がりました。

ビジネスへの応用は大きく分けると以下の3領域になります。

  • 製品開発

  • 製品PR

  • エンターテイメント

アンケートの一歩先を行く製品開発

製品開発への応用としてはアンケートに追加情報を付与する事ができます。

例えば、メーカーさんが製品を作るとき、製品のデザインや使用感を評価するときにはアンケートが使われます。

例えば、カメラを開発した時の操作感を評価する時には、20分くらい被験者にカメラを使ってもらって、使用した時の感想を10段階のアンケートやインタビューによって収集します。

しかしながらアンケートには以下の弱点があります。

  • リアルタイムに集計できない(1秒毎に感想を聞くなんてことは無理)

  • 本音を聞き出すのが難しい(よく見られたい、悪い評価は書けない)

そこで、脳波を使用してリアルタイムに本音を集計しようというのが、脳波を用いた製品開発になります。

また、脳波を用いて製品を評価したり、顧客へのPRに脳波を使用することをニューロマーケティングと呼びます。

実際に以下のような会社がニューロマーケティングのサービスを提供しています。

どこの会社もツールの動作イメージを見ればわかる通り、1秒毎に人の感情や関心の数値を脳波から推定しています。

これにより脳波から「集中」や「興味」などの感情・関心を推定することにより逐次的な評価をすることができます。

先程のカメラ開発の例であれば、シャッターを切った時や、画面を操作しているとき、レンズを回しているとき、など動作に同期した感情評価を行うことができます。

1つ注意しなければならないのは、脳波からの感情推定の精度は100%ではないということです。

良くても70%〜80%程度というのが今の技術の限界になります。

したがって、アンケートの代わりに脳波を使うのではなく、アンケートと脳波の良いとこ取りをする、というのがこういったニューロマーケティングツールの使い方になります。

科学的エビデンスを付加した製品PR

製品開発にニューロマーケティングツールを使用した場合、そのデータを使って製品PRをすることも可能です。

アンケートのデータと脳波を元に、その製品の良さを数値的に人に伝えることができます。

例えば新型のカメラAとカメラBが開発できたけど、どちらも同じくらいの性能で片方しか販売できない時。

最後の決め手に、アンケートや脳波を使用すれば、数値的にどちらが良いという判断材料を得ることができます。

アンケートと脳波を用いていることで強力なエビデンスが作れる

エビデンスの提示先は、対顧客という時もありますし、社内で予算を取得したり、プロジェクトを前に進めるために使用することができます。

脳波をPRに使用する際には、その解析方法が妥当なものになるように慎重にならなくてはなりません。

誤った解析をするとエセ科学になってしまいます。PRにエビデンスを利用するときには解析を専門のデータサイエンティストに依頼するか、大学の先生等に監修に入ってもらった方が良いでしょう。

エンターテイメント

小型脳波計の開発によって脳波はエンターテイメントに使用されるようになりました。

例えば以下のnecomimiは、脳波から推定された集中やリラックスによって、カチューシャ型の猫耳が動くデバイスです。

その他、私が学生時代にneurowearさんと開発していたプロジェクトには、気持ちを記録するウェアラブルカメラneurocamや、

脳波から気持ちに合わせた音楽を選曲するmicoなどです。


以前の記事でご紹介した難病患者向けの意思伝達装置は、意思伝達の精度に妥協を許さないツールでした。

一方で、上記で紹介した製品はエンターテイメントへの利用なので、そこまで精度にシビアになる必要はありません。

手軽に脳波を試してみたい。手軽に脳波と何かを組み合わせてみたい。

という時には、エンターテイメント領域から脳波に手を出してみるのは大いにアリだと思っています。

まとめ

脳波のビジネスへの応用について解説してきました。ニューロマーケティングという言葉自体は昔からありますが、半導体技術とAI技術の進歩によって、使いやすさと精度は年々向上しています。

とりあえず脳波で何かやってみたい場合にはエンターテイメント領域から、ビジネスの製品開発・PRに繋げたいという場合にはニューロマーケティングの会社にコンタクトをとってみるのが良いかと思います。


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