マジシャンとして現場に復帰して感じたあれこれ。
みなさんお久しぶりです。MIKITOです。
最近はネットでの活動をほとんどお休みしていました。
noteだって本当に久しぶり。一年ぶりくらいの更新になるんじゃないでしょうか?
じつは約7年ぶりに、マジシャンとして本格的に再開していました。
ですがいきなり再開といっても、感覚だって鈍っているわけです。そんな僕がいきなり現場にでられるわけもなく。。。
そんな風に思っていたら、「ならうちの店舗でリハビリしちゃいなよ」という有難い言葉を頂きまして、今は時間を捻り出して、チルラグさんでマジックをやらせてもらっています。
実はここ、7年前に僕がマジックをやっていたお店でもあります。
当時は西麻布に店舗が一個だったんですが、今では麻布十番、六本木、中目黒、名古屋、沖縄と店舗を増やしている勢いのあるお店。
シーシャのお店ですが、バー利用ができるってのも良いですね。
さて、こんな素敵なお店でマジシャンとして完全復帰したわけですが、こんな僕が感じた復帰して感じた事をまとめていきたいと思います。
(これ、どこに需要があるんだろ?)
(でも勢いで書いてしまったから、お暇な人は読んでね)
なんと言っても、お客様にマジックを見せるのが怖い
お客様の席に入っていくのが怖い
久しぶりにジャケットに袖を通し、いざ現場へ。
その時に感じたのは、シンプルに「怖い」という感情でした。
このお店でのマジックのスタイルは「テーブルホッピング」というもので、マジシャンが席に回ってきてマジックをやりますよ。ってスタイルです。
たとえば、そこがマジックを売りにしているお店で、食事の後にマジシャンが回ってくるというのをお客様が楽しみにしているという、このお店はマジックを見せてくれるお店なんだという認識が全員にある環境であればさほど怖くはないのかもしれません。
しかし、このお店はシーシャやお酒を楽しみに来ているお客様がいる空間。マジシャンがいきなり現れても「え?なんで?」となってしまうわけです。
世の中すべての人がマジックが好きなんてことはありませんし、タイミングによっては仲間内で楽しく話しているのに横から知らないやつが来て場が冷めてしまう。なんてことにもなりかねません。
マジシャンとして生活していた時は、なんだかんだ言って、マジックをやったら絶対に喜んでもらえると本気で思っていましたが、一旦離れてみると、自分がなんて愚かなことを考えていたんだろうと恥ずかしくなりました。
どんなにマジックが好きでも、今は見たくないってタイミングなんていくらでもあるわけです。
これはマジックだけの話ではありません。
大切な話をしていタイミングでスタッフの人が何かを運んで来て、「今じゃないんだよな」と思ってしまったことが誰にでもあるはずです。
向こうも仕事ですし、こちらがお願いしていたものを運んできてくれたわけですから、文句を言ったりはしませんが、なんとなく心がモヤッとしてしまう。
それが頼んでもいないサービスだった場合は。。。
たぶんモヤっではなく、イラっとしてしまうかもしれませんよね?
テーブルホップのマジシャンという立ち位置ってそこだと思うんです。
頼んでもいないサービスの押し売り。
もちろん、その中身がどんなに素晴らしいものであっても、その中身を知らない人からしたら、その瞬間は迷惑でしかないわけです。
極端な意見かもしれませんが、間違っているとは思いません。
実際にマジックを断るお客様はたくさんいらっしゃいます。
それは、その時「いらない」と判断したから断るわけです。
ちなみに日本人は断る事が苦手な人種と言われています。そんな日本人から断られるんですからよっぽどです。
このことに気づけたのは、マジックの世界から一度離れて、外側から見る事が出来たからだと思います。
だからこそ、復帰してすぐはお客様の席へ入っていくのが本当に怖かったです。
ぶっちゃけ今でも怖いんですけどね。
いざ席でマジックをすることが許されてもセリフが出てこない
優しいお客様が喜んで「マジック見たい!」と言ってくれたとしても、まだまだ問題は続きます。
昔あんなにスラスラ言えていたセリフが、スムーズに出てこないんです。
これは本当に自分でもびっくりしました。
前日に練習だってしているわけです。
どんなセリフを言うのかも決めてましたし、当日に発声練習までしっかりこなしてきました。
なのに言葉が出てこない。
これはショックでした。
なんというか、マジック始めたての人が拙い説明でマジックをする。そんな感じになってしまったわけです。
単純に緊張していたのか?
実はそんなに簡単な理由じゃありませんでした。
言葉が出てこなかった理由は、現場だからこその情報の多さ。
マジシャンはテーブルに入った時にいろんな情報を汲み取ります。
この人達の関係性は?
誰がリーダー(ホスト)役だろう?
今までの会話の流れはどんなだった?
何をどれくらいの量飲んでる?
まだ届いてないメニューはある?
空(になりそうな)グラスは?
タバコを吸う人?
持ち物は何をもってる?
こちらに興味をもってくれてる?
身体の傾き方はどちら向き?
などなど。
この情報の処理ができずにセリフが出てこないという状態に陥ったわけです。
昔なら当たり前に出来た事が出来ない。
こればかりは現場に入らないとわからない感覚でした。
若手の時は、セリフを言うことにいっぱいいっぱいで、お客様を見るということ自体が出来ていませんでした。
ですが、重要なのはマジックをすることよりも、まずはちゃんとお客様を見ることです。
特にテーブルでのマジックは、目の前で行うからこそ、ただ不思議なことをが起きたとしても、その良さは半分も伝わりません。
そうならない為に必要なのがお客様とのやりとり。
会話するのももちろん大事ですが、なんというか、見せるのではなく会話するようにマジックをする。これが大事だと僕は思っています。
だからこそ、お客様を観察するわけです。
相手を知ろうと興味を持つわけです。
ですが、それを久しぶりにやってみたら・・・
その大量の情報量に処理がまったく追いつかずに言葉が出ない、という状態になってしまったわけですね。
相手のパーソナルスペースに入れない
心理学用語にパーソナルスペースというものがあります。
詳しくは省きますが、これ以上近づかれたら不快になるなっていうギリギリの境界線みたいなものです。
このパーソナルスペースにいかにして違和感無く入り込むかが、テーブルホップマジシャンの必須スキルだったりするわけなんですが、それが難しく感じるようになってしまいました。
これに関しては、出来なくなったというより、気が付く事が増えたというのが正しいかもしれません。
マジックの世界から離れてからは、人との距離感にものすごく敏感な世界に飛び込んでいたというのもあり、特に初対面の人に対して、すごく臆病になっているというのがあるのかもしれません。
というか、マジシャンだけじゃないんですが、この距離感がだいぶ間違ってる人が多いと思うんです。
パフォーマンスをするから距離感が近くても仕方ない、なんて事にはなりません。
距離感を間違えると、せっかくの素晴らしい技術も、魅力が半減してしまうものです。
だからといって、距離感が開きすぎているのも考えものですよね。そうすると一体感が生まれなくなってしまいます。
この距離感が今現在でもまだ掴み損ねてる気がします。もう少し近づいた方がいいのか、でもこれ以上はリスクが。。。を繰り返してる感じですね。
ただ、良かったこともあります。
それが、クレームがあからさまに無くなったということです(笑)
全く誉められたことではないんですが、過去の現場では結構クレームが入ってました。
ぐいぐい前に行くスタイルだったからというのもあるんですが、どこかで「クレームが入るリスクがあってもガンガン攻めるべきだ」という謎の理論があったからだと思います(キャラ的な意味でも)。
いや、本当に当時の自分を殴りたい気持ちになります。。。
それくらい距離感って相手を不快にさせてしまう大きなファクターという事です。
今は、探りを入れながら最低でもこの人たちが不快にならない距離感というのを一番重要視してホッピングに入るようにしているんですが、おかげさまで新しく入っている環境ではクレームが0です(なんかあったら容赦なく言われる環境でもあるので、本当に0なんだと思います。そうであってくれ)。
クレームが入らないって、すごく重要なんです。
クレームが入ると、それは本人だけでなくお店側にも迷惑がかかります。信用が下がるというのもありますが、シンプルにスタッフさんがパフォーマーに対してのクレームを尻拭いするというの業務が増えるわけです。
そんな人が一緒に働いてたら、迷惑でしかありません。
距離感が重要なのは、お客様だけではなく、そのお店で働いているスタッフさんにも言えることです。
パフォーマンスをやらせてもらっている環境に対して、感謝することを忘れず、なるべく迷惑をかけない(ぶっちゃけ居るだけで迷惑だったりします)こと。これが大切なんだと思います。
チップを受け取るのが怖い
テーブルホップをするマジシャンやパフォーマーは、お客様からのチップが収入源の一つです。
なんですが、僕はチップを丁重に断るようにしています。
理由としては、このチップが本当に楽しかったからという理由で差し出されたものなのか分からない!と不安になるからです。
チップにはいろんな種類のものがあります。
まずは、習慣やマナーとして渡すもの。
これは海外などでサービスをしてくれた人に渡すチップと同じものです。日本ではあまり馴染みのない習慣ですね。
夜のお店などで遊び慣れてる方にも、こういった方がいらっしゃいます。
そして、謝礼として渡すもの。
サービスを受けて、正規料金以上に報酬を渡したいと思って発生するチップです。
パフォーマーが受け取るべきものは、こんチップだと思います。
自分から請求するパフォーマーが多いですが、本当は自然と発生するものを受け取る。そういうものだと思います。
そして、ここからが僕が怖いと思っているものになります。
他の人が払ったから仕方なく渡すもの。
払うつもりはなかったけど、周りの人が渡してるから、仕方なく渡すチップ。
これって渡したくないものなんですよね?
いやいや渡してるわけですよね?
それってお互いにとって良いことあります?
もちろん、パフォーマーはお金をいただくわけですから、儲かります。でもそれって恐喝と変わらないじゃないですか。
お金は儲かりますが、評価は失います。
そして、最後に。
終わってほしい、帰ってほしいから渡すもの。
これって最悪ですよね。
早く終わってほしいからチップを渡す人もいるんです。
それを聞いた時に、本当にチップというものが恐ろしくなりました。
昔、まだチップ請求をするようなマジックをしていた時代に、マジックの大トリの前にチップを渡してくれたお客様がいました。
その時は「これはさらに頑張らないと!」と気合を入れて最後のマジックをやろうとしたんですが、「ごめんね、ちょっと大事な話をしないといけないから」と言われてマジックを断られてしまったんです。
その時は残念だなあ、と思ったわけですが、本当に残念なのは当時、そのお客様の真意に気づけなかった僕の思考です。
そういう理由もあって、今ではチップを断るようになりました。
一応断ったあとに、それでも渡してくださるお客様もいらっしゃるので、その時は本当に感謝する意味も込めて、深々と頭を下げてお礼を伝えるようにしています。軽いノリで受け取ることは絶対にしません。
それと、チップを渡したほうがいい?みたいな聞き方をされる方には、お断りを伝えつつ「もしよければ一杯頂いてもよろしいですか?」と言うようにしています。
そうすれば、少ないですがお店に利益があがりますし、お客様からしてみてもちょうど良いお礼の形になるからです。
それと、一杯どうぞと言ってくれる場合は、その一杯を飲む間はその場にいて良いという理由ができます。
この時に追加でマジックをしたり、営業活動をさせてもらったりしています。
いやらしい話かもしれませんが、こちらの方が最終的な利益は大きいものになります。
チップを受け取るのが怖くなった反面、お仕事をもらう回数は増えました。もしこれを読んでいる方の中に、チップ制でのお仕事をされている方がいたら、もう少し、そのチップの意味や価値を考えてみるのも良いかもしれませんよ。
マジックを再開したからこそマジックを見せる難しさを痛感した
さて、このような感じで最近マジックを再開して思ったことをつらつらと書かせて頂きました。
改めて思ったのが、マジックを見せることの難しさ。
それこそ、マジックの世界から離れたからこそ、新しく気づく事も沢山ありますし、今も新しい発見が続いています。
だからこそマジックをやる事が怖いと思ってしまいます。
ですが、それ以上に楽しい部分が多いのも事実です。
今までやってきたものも、新しいアプローチで演出を考えたり、離れていた間に作られた新しい物を取り込んだりして、研究してもキリがありません。これはとても嬉しい話です。
マジックの世界にどっぷりだった時、僕はこんなに楽しくマジックと向き合ってたかなと、ふと考えたりもします。
きっと、楽しかったんだと思います。でも、今の楽しいという感覚とは違うものだったんじゃないでしょうか。
今はいろんな経験ができたからこそ見えるものがあります。
それは直接はマジックに関係ないようなものばかりです。
ですが、その経験のおかげで、今までのマジックが新しいものに感じる。
こんな幸せな事はありません。
まだまだ僕のリハビリは続きます。
怖いと思う時も多いですが、これも大切な経験として、自分の中に大切に持っておきたいと思います。
そんなわけで今回はここまで。
また読んでくれたら嬉しいです•ω•
MIKITO先生
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