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きっかけをくれた人。-嶋基宏引退によせて-


わたしには「全肯定ガチ恋盲目」的な推し「時には厳しい言葉を浴びせたくなる」推しが存在する。
わたしにとって嶋基宏は圧倒的後者である。

好きなプレーは「永井怜がカーブを決め球に見逃し三振を奪うこと(数年前からここに岸孝之も追加)」、嫌いなプレーは「嶋基宏の見逃し三振」と、聞かれたら必ずこう答えていた。


遡ること3年前、2019.10.07。
クライマックスシリーズ1stステージ敗退が決まり、楽天イーグルスの2019シーズンが終わりを告げた。
それだけでも沈んでいたわたしに追い討ちをかけたのは試合終了から1時間も経たずに舞い込んできた「嶋退団へ」という報だった。


イーグルスファンになってからずっと好きだった選手が、イーグルスからいなくなる。


いつかはやってくることだけどこんなに早いだなんて。
2019シーズンは腰の痛みに悩まされ、一軍戦の出場はプロ入り以降最も少ない、わずか57試合に留まった。
観戦に行っても彼がいないことが多く、例年以上に寂しいシーズンを過ごした。
「来年は年俸大幅カットだろうな」とは思っていたけれど、まさか…
このニュースから数日はずーっとこのことで頭がいっぱいで、気づけばため息が漏れるようなレベルで、こんなのことは初めてで自分でも戸惑った。


もともと"キャッチャー"というポジションに特別な想いがあったわたしは(中学校の時に好きになった人が野球部でキャッチャーやってた、ていうだけの話なんだけど(←))、配球の奥深さとか「めっちゃ頭使うじゃん!」ってことにびっくりすると同時に感動すら覚えて。
楽天イーグルスに興味を持ち、試合をチェックし始めた2009シーズン、入団3年目で既に正捕手だった彼に目が行くのも自然な流れというか当然だった。

仙台に住んでいた頃は観戦する日は決まっていつも開場即入場、1塁側にあるイーグルスネストの外の隅っこから、球場とクラブハウスをつなぐ通路を通る選手に声をかけまくっていた。
嶋はなぜかわたしの声かけにだけ反応してくれなくて「この塩対応!」ってずっと思ってたな(苦笑)


打率10傑に入って嬉しいと同時に信じられなくて笑っちゃった2010。

スピーチが有名になって「みんなに嶋がバレちゃう!」と"好きなバンドが売れ出したら寂しい"みたいな厄介ヲタクの思考になってた2011。

どこが好きなのかわかんなくなって揺らいだ2016オフ。

初めて現地でヒロイン見れて「推し変しない!」と誓った2017の東京ドームでの主催試合。

怪我や登録抹消になれば心配し、活躍には喜び、見逃し三振しようものなら「せめて振れ!読みと違った、みたいな顔すんな!!」とキレる。そんな11年間だった。


本人が望むのなら、というのとちゃんと拾ってくれる球団がいたことに安心して、スワローズへの移籍が正式に発表された頃、やっと気持ちの整理がついた。同一リーグ内だったらこんなに穏やかでなかったとも思う。
ただそのまま彼に付いていってスワローズファンになるかと思いきやそうでもなく、イーグルスファンとセリーグはベイスターズ推しのまま、嶋の動向見守り人になった。

2020開幕前に怪我をしたり、むしろ開幕に間に合わないかもと思われていたムーチョが思ったより復帰したおかげで前年よりさらに出場が減少。
それでもテレビ中継でベンチにいる姿が映るとほっとしたり、たまに誰かがヒロインで嶋の名前を出してくれるとその度にありがたい気持ちになった。

去年のこれなんかは本人がすっかりしっかりチームに溶け込んでいること、助っ人選手との橋渡し役を担っていることがわかる、最高の話でしたよね。


かたや嶋が去ったイーグルスはといえば、ベテランキャッチャーの重要性に気づいたのか2021シーズン途中で炭谷選手を獲得。
「スタメンで出たいから」と言って退団したのに結局叶ってないということも相まって、「嘘ついてでも嶋を説き伏せて残留させればよかったんじゃ?」と思ったりもした。

今シーズンからコーチ補佐兼任になったことでわたしも心の準備はできていた。引退の報には「寂しい」とか「嫌だ」とかよりも「決断したね」「お疲れさま、ありがとう」と言う気持ちが先に来た。


引退試合はテレビで見守った。

同じくこの日に現役生活を終える内川選手、坂口選手はスタメンだったのに嶋の名前はなくて「あれ?」とは思ったのだけれど、数日前に腰を傷めたと明かし「タイミング!」と最後の最後までツッコミたくなる推しだなぁと思った。
8回裏に代打で出場。結果は空振り三振。(ちゃんと振った!その点は良かった(苦笑))
9回表にはキャッチャーとしてマスクを被り、打者一人を抑えて選手としてのプレーを終えた。

試合中から涙を浮かべているスワローズの選手たちの姿を見て、こんなに愛され慕われているのならやっぱ移籍したのは正解だったんだと改めて思った。日本一にももう一回なれたわけだし。
現地に駆けつけたイーグルスの選手もいっぱいで(この点は振替日程グッジョブ!と思った)、本当に彼の人望の厚さが表れていた。


さすが"底力"の人、相変わらずスピーチうめぇなと思いつつ最後の言葉を聞いた。泣けるどころかあまりにも嶋らしくてむしろわたしは爆笑だった(テレビに抜かれたまっちゃんは号泣してたけどw)。

今後について何も発表されていないけれど、「イーグルスに戻ってきて!」とわたしは言いません。
むしろその愛され力(人たらし力?)でいろんなところに行ってもっともーっとたくさんの人とつながって仲を深めてきなさい!と思っています。
まだポストシーズンがあるわけだし(きっとコーチ補佐としてベンチには入るよね?)、まずは最後の最後までスワローズの一員として責務を全うしてもらいたいです。


嶋さん、選手生活お疲れさまでした。そしてイーグルスを、プロ野球を好きになるきっかけをくれてありがとうございました!!!


(※カバー画像は、いいカメラを持ってるでもなく、いい席で観戦することもあまりないわたしが撮れた数少ない嶋さん(2018.4.29 メットライフドームにて)。なんだかシュールで気に入っているのです。)

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