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マネジャーはつらいよ?!<前編>悩みの9割は部下とのコミュニケーション?

「リーダーの悩みの9割は部下とのコミュニケーション」

「1万人のリーダーが悩んでいること」(浅井浩一,ダイヤモンド社)という本の中に、こんな一文がありました。(ここでの「リーダー」とは、企業の中間管理職のことです)

多くのマネジャーが部下とのやりとりで悩んでいることは、研修等を通じてよーく知っています。今やマネジャーの多くがプレイングマネジャーであり、厳しい競争環境の中で業績を厳しく問われるだけでなく、働き方改革だ、コンプラ対応だ、など求められることはてんこもり。そんな中、「マネジャーの悩みの9割が部下とのコミュニケーション」というのは、本当なのか。
そこで、すぐに研修の参加者であるマネジャーの皆さん17人に聞いてみました!


悩みを語ると表情が変わるマネジャーたち

今回の研修は、人口15万人の市内の、ある会社の関連会社4社のマネジャーを対象としたコミュニケーション研修でした。現場の作業をマネジメントする方々で17人全員が男性。むすっとした表情で座っている方も数名いらして、やや緊張感のある中で研修が始まりました。

冒頭にこんな問いかけをしてみました。

「この3ヶ月のできごとを思い出してください。マネジャーとして、困ったな、と思ったことを書き出してください。業務のこと、人間関係のこと、その他、どんなことでも構いません。」

みなさん、少し考えてからペンを取り、ポストイットに書き始めました。

「えー、悩みなんてないですよー」

と言っていた方も、スケジュール帳をめくったり、他の方のポストイットを覗き込んだりしているうちにうち思い出したようで、ゆっくりと書き始めました。「悩みなんてない」というのは、よっぽど言いにくいのか、見ないように蓋をしているのか、どちらかだろうと思いました。

「では、そのポストイットを真ん中の紙に貼って、グループでシェアしましょう!」

グループのメンバーはそれぞれ違う会社のメンバーでほぼ初顔合わせ。加えて、各社間の関係もそれなりに複雑なものがありそうで、みなさんこの場でうまく話し合えるのだろうかと様子をうかがっていました。

私の心配をよそに、語りながらどんどん表情がやわらかくなるみなさん。研修のはじめに「話すことが苦手なのでこういう研修はちょっと…」と言っていた年配の男性は、自分の書いたポストイットを差し出した途端に、流暢に話し出しました。そのポストイットにはこう書かれていました。

「部下に嫌われていて、話しかけてもらえない」

おっと。なかなか言いづらいことだと思いますが、さらけだしました!

その様子に触発されたのか、そのグループではさまざまな悩みが飛び出し、時間いっぱい話が尽きることがありませんでした。

悩みの9割が「部下とのコミュニケーション」は本当?

では、各グループで出されたポストイットを整理すると、どのような結果になったでしょうか。ポストイットは全部で55枚あり、大きく以下4つに分類されました。

  1. 部下のこと:43枚(78%)
    会話することが難しい、不平不満を言ってくる、基本的なルールが守れない、態度が悪い、年上部下・ミスが多い部下などの個別の対応が難しい、など

  2. 上司のこと:3枚(5%)
    言いたいことが言えない、自分勝手など

  3. 顧客のこと:2枚(4%)
    クレーム処理など

  4. 自分の業務のこと:7枚(13%)
    日常業務のやり方、トラブル対応、リソース不足など

驚きました!マネジャーの悩みの中身は圧倒的に「部下のこと」です。一方で、「業績達成」を上げた方はたった一人でした。

また、「多忙」「時間のやりくり」などの業務負荷に関する悩みは1枚もありませんでした。

冒頭に紹介した本では「悩みの9割は部下とのコミュニケーション」と言い切っていますが、今回の17人の調査では、「コミュニケーション」だけでなく「態度や姿勢」などの行動面も入れた「部下のこと」合計で8割となりました。

じゃあ「悩みの9割は部下とのコミュニケーション」にはならないじゃないか、と思いますよね。

たしかにポストイットに直接書かれた内容では「部下のことが8割」なのですが、「部下の態度や姿勢」をあげている人たちの話をよくよく聞いてみると、その原因として「コミュニケーション」をあげる人がほとんど。また「4.自分の業務のこと」も、その内容も深堀りすると部下とのコミュニケーションにつながるケースもありました。

ということは「上司の悩みの9割は部下とのコミュニケーション」と言っても、大きくはずれていないようにも思いました。N=17だけど!

「悩みは業績達成のみ」というマネジャーの本音

悩みとして「業績達成」をあげた人はたった一人で、この方は、部下の悩みは一切挙げていませんでした。同じグループの方々が部下とのコミュニケーションの悩みをたくさん語る中、その方は多くを語らず、じっと、聞いていらっしゃいました。

「悩み」の後には、「やりがい」や「本当の課題」についても考えてもらったのですが、最後まで彼は一貫して、すべての質問に「業績達成」と書いていました。悩みもやりがいも「業績達成」なら、本当の課題も「業績達成」、というわけです。

ところがです!
最後に「ワークの感想をテキストの記入欄に書いてください。」とお伝えしたところ、彼は、たった一言、この言葉を書いて、テキストをじっと眺めていたのです!

「自分は、一人ではなかった」

はっとしました。

本当は部下とのことで悩んでいるのに、この場では言い出せなかったのでしょう。言えなかったけれども、みんなが自分と同じことで悩んでいることを知って、安心したのですね。

なんでこの場で素直に言えなかったんだろう?言えないその背景に、これまでのどんな経験があるんだろう?と思ったら、ちょっと泣けてきました。

研修後には、こんなこともありました。

ずっとふざけていて、自分自身の悩みと真剣に向き合っていないように見えたあるマネジャーの方が、研修後に、私にこんなふうに語ってくださったのです。

「僕が一番つらいことは、若手が辞めていくことなんですよ。僕らが若い頃に "つらい" と思ったことを、いまの若手にさせてはいけない、毎日そう思って、少しでも会社が良くなるように、がんばってます。」

これまでの経験や、人間関係もあって、簡単には本音を口に出せない人もいるけれど、本当は部下のことで悩んでいる、そんな複雑なマネジャーのみなさんの心の中が見えました。

結論。
マネジャーの全悩みのうちの何割が部下とのコミュニケーションなのかは、正直、はっきりはしないのですが、それでもかなりの割合を占める!ということと、マネジャーのみなさんにとって、こうやって悩みを話せる場は大切!ということ!

この話は続きがあります。<後編>でははこんなことを書く予定です。

・マネジャーの一番のやりがいも「部下のこと」
・悩みの本質は「孤独」?
・本当はつながりたい、語りたい、泣きたい

最後までお読みいただきありがとうございました!


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