見出し画像

「良い研修」をやれば1on1導入ができるのか?!人事担当者はまず3年かける覚悟を!

1on1を導入している企業が増えています。リクルートマネジメントソリューションズの「1on1ミーティング導入の実態調査」(2022)によると、従業員規模3,000名以上の企業では75.7%が人事施策として導入していると回答しています。

私はここ数年、1on1の導入から浸透・定着まで、多くのクライアント企業様の伴走をさせていただいておりますが、その中で思うことは、1on1推進のご担当の方が、まずは3年間、あの手この手で推進し続けること、その覚悟を持つこと、心折れずに3年がんばること、それがほんとうに大切!ということです。

導入当初はなかなか社員の理解が得れなくて苦労しても、3年目で潮目が変わる、だからそれまで諦めずにさまざまな打ち手を打ち続け、3年経ったところでグッと前に進める、その覚悟と、時間の感覚を持っておいた方が良い、と思います。

話に聞くところによると、導入時に1on1研修をやってあとは放置の会社、それすらなく「1on1をやることを推奨する」と指示だけする会社もあると聞きますが、たとえどんなに素晴らしい1on1研修をやったとしても、それだけでは社員の行動習慣や会社の風土は変わりません。本気で1on1を導入して、会社を変えていこうと思うなら、覚悟を持って、時間も味方に、戦略的に進めることが必要です。

3年で潮目が変わるよ、という期間については、人と組織の学習と変容に関わることなので、企業規模の大小はあまり関係ないように今のところは思ってます(何か学術的な裏付けがあれば良いのですが今は感覚的に)。例えば、1/3の規模だからといって、1/3の1年でこの変化が起こる、ということでもなさそうです。

導入期〜格差拡大期〜希望誕生期

3年間はこんな感じで1on1推進の旅が進んでいくように思います。

  • 1年目:導入期
    1on1の目的と手法を(イベントや研修等で)伝えて社員にやってもらう時期
    1on1の目的をしっかり打ち込むことが大前提。納得すればとりあえずやってみる人も多数。また研修評価がどんなに良くても、「本当に効果ある?」「理解はするけど自分には必要ない」と懐疑的な人も半数はいることを忘れずに。
    *この時、人材開発部門はやる気に満ち溢れている

  • 2年目:格差拡大期
    効果を感じて続ける人と、やらなくなる人がはっきりしてくる時期
    あの手この手を打ちながら、実施状況のデータを取り続けることが大事。継続しない人が出てきて実施率は下がる一方、効果を感じた人は継続しており、継続者の部下の満足度は上がる傾向に。
    *人材開発部門にはまだ推進する元気がある

  • 3年目:希望誕生期
    成功事例や賛同する人が登場、特に若い人や女性からの受け止めが変わる時期
    試行錯誤する中で懐疑派からの声に気が滅入る時期。成果が上がらないように見えても現場には「芽」が出始めている。それをデータや現場の声から見つけることが必要。
    *このあたりで人材開発部門のみなさまはお疲れになってくる

  • 4年目以降:希望誕生期をうまく乗り越えると「反転期」到来!

私が外部の支援者として明らかに感じる3年目の変化は研修受講者の全体の雰囲気がフワッと軽く、前向きに変わる!」ということ。

例えば、新任マネジャー研修の一部に1on1研修を組み込んでいる場合、最初の年は「ふうん」という感じで冒頭で半信半疑の態度を示すけれど、3年目になると「上司から1on1をやってもらっている」層が半分くらいになっており、また「すでにメンバーから1on1を求められてやっている」という人も出てきて、後ろ向き層より前向き層の影響の方が大きくなってきます。特に若い方々、女性など中心に「やってもらってよかったから」「必要だから学びたい」機運が高まってくるように思います。

1on1を3年続けて出てきた「芽」とは

先日も、導入から3年目となる、とある大手グループ企業でこんなことがありました。

その企業は、現場での作業が多い業界で、男性が多く、上司から部下への支援は指示命令になりがちな風土を持つ会社です。現在では、若手の離職防止や人材確保も課題のひとつとなっています。

3年前から、ホールディングスの人材開発部門が中心となり、グループ企業10社を対象に、各社に賛同者を増やしながら、じわじわと1on1実施を広げてきました。

今年で3年が経ちますが、直近の数値を見たところ、1on1の実施率が上がらないどころか、下がっているところも多く、このままでは失敗するかもしれない、そんな不安も頭をよぎるほどでした。ただ、1on1研修に参加される方々の雰囲気は年々良くなってきているのを肌で感じていたので、希望は捨てていませんでした。

そんな焦りの中、毎月1回実施している「1on1カフェ☕️」の時間がやってきました。

「1on1カフェ」とは、1on1を実施している方ならどなたでも、1on1に関する相談や情報交換ができる場のことで、月1回1時間、オンラインで開催されます。開催時間とzoomだけが連絡されていて、出欠も取らず、出入りも自由です。
「1on1カフェ」というネーミングは、人材開発部門の若手の女性が考え、ひだまりの中の素敵なコーヒーカップの写真とともに全社に案内されています(←こういう取り組みやちょっとしたセンスある発信もなにげに大事)

まだ始めたばかりの1on1カフェですが、毎回数名の方が入ってこられて、悩みを聞いたり、その場で講師が1on1をデモを行ったり、練習したり、成功・失敗事例を共有して話し合ったり、ということをやっています。

1on1カフェの様子:みんな思い思いに現場での事例や悩みを語り合う

先日、その1on1カフェの途中に、ある営業所の男性が入ってこられました。

何か相談はありますか?と声をかけると、
「あー、いえ、実はですね、うちの営業所では、3年間、1on1を全管理職が続けてまして、それで、3年間離職者ゼロなんですね。」
一瞬、何を言ってるかわからないという沈黙があってから、驚きの声が上がりました。

規模の小さい営業所のため、他の営業所とデータが合算されており実施率の高さに誰も気づいていなかったのです。そのことに反省しつつもうれしいことでした。

・・・で?相談というのは?
「はい、コロナでできなかった忘年会を、久々に昨年の12月にやったらですね、パートさん(女性)達から、私たちにも1on1やってもらえるんでしょうか?って言われまして・・・。」

それは何よりもうまくいっている証拠。で、相談は?
「で、パートさんにも1on1をやって良いものか、と悩んでおりまして・・・」

悩み、それ?!と拍子抜け。
「求められてやるなんて、サイコーの流れです!ぜひやってください。」

そしてよくよく周りを見渡せば、他にも、良さげな事例が上がってきそうな状況。他の参加者の方もびっくりして、うちの営業所でもこの話は共有しなければ!となっていました。

自社の定量・定性データを駆使して、いざ、反転期へ!


今後は、この営業所で1on1が継続でき、かつ、成果が出ている秘訣はなんなのか?インタビュー調査で明らかにして、離職率ゼロのデータと現場の生の声を持って、グループ各社の経営トップにも、現場にも共有して対話を続けていきたい!人材開発部門のみなさまとともにここでグッと前に進めたい!

・・・ということは、まだまだ4年目以降もやること多いわけですが、まずは3年間諦めずに続けること、これで本当にうまくいくのかと諦めかけた頃に出てくる「芽」に気づくこと、改めて大切なんだなと思う経験でした。

外部支援者の私としては、この期間、心折れそうになる人材開発担当の皆さまをさまざまな形で精神的にも支援するということも大事だと感じた次第です。

1on1推進担当の皆様、1on1じゃなくても何かしらの人事施策を浸透させようとしている皆様、まず3年という時間を覚悟し、あの手この手で試行錯誤してください。すでにがんばっている皆さん、ともに乗り越えて「反転期」へ向かいましょう!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?