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ラグビー「ティア1」って何がいいの?

世界ラグビーの最高機関であり、ラグビーワールドカップの主催者でもあるワールドラグビー(WorldRugby) の会長選で再選した、ビル・ボーモンド会長が、日本を「ティア1」に昇格させる見通しを発表しました。

ティア1(Tier1) って何?

ラグビーは、国ではなく協会(Union)毎に代表チームを持っています。例えば、イギリス連邦は、4つの協会(アイルランド・イングランド・ウェールズ・スコットランド)があり、それぞれに代表チームがあります。

世界中にある200を超える代表チームを、強さに加えて伝統や格式を考慮し、慣習的にランク分け(Tier=段、層)しています。

Tier1(ティア1):強豪国
北半球のシックスネーションズに所属する6チーム(アイルランド・イングランド・ウェールズ・スコットランド・フランス・イタリア)と、南半球のザ・チャンピオンシップに所属する4チーム(アルゼンチン・オーストラリア・南アフリカ・ニュージーランド)の10チーム

2020/5/6現在、イタリアを除く9チームが15人制男子ラグビーランキングのトップ10を占めています。ワールドカップでは、決勝トーナメントの常連である強豪国です。

Tier2(ティア2):中堅国
日本
(15人制男子ラグビー世界ランキング 9位)、フィジー(同11位)、ジョージア(同12位) 等、ティア1に続く強さの13チーム
パシフィックネーションズカップに参加する6チーム(日本、アメリカ、カナダ、サモア、トンガ、フィジー)はいずれもティア2です。
それ以外に7チーム(ジョージア、ナミビア、ウルグアイ、ルーマニア、ロシア、スペイン、ポルトガル)で構成されます。

ティア1が多いヨーロッパの国を除けば、ラグビーワールドカップには出場するけど、決勝トーナメントに入ってくるのは難しいレベルのチーム。

Tier3(ティア3):発展国
ティア2以下のチームで、今後ラグビーの発展が期待される国。
2020/5/6現在は、ティア2に近い「Development One」が10チーム。それに続く「Development Two」が、約100チームある。

ティア1になると何がいいの?

通常、テストマッチと呼ばれる代表同士の試合は、同じティアの中で組まれることが一般的です。ティア1と認められれば、同じティア1の強豪国との試合が組みやすくなる、と言うのがメリットです。

日本ラグビーフットボール協会専務理事・岩渕氏も著書「変えることが難しいことを変える」(amazonへリンク)の中で、ティア2のチームが、ティア1のチームとテストマッチを組むことのむつかしさを語っています。

ワールドラグビーの場合は、最初からマッチメークに全面的に介入してくる。しかもそのマッチメークの基準とされるのは、「ティア」という目に見えない壁だ。
(注略)
運よく、ヨーロッパのティア1で日本代表と試合をしてもいいというところが出てきた場合でさえ、マッチメークを実現させるのは容易ではない。ワールドラグビーが介入し、協会の資金が豊富ではない国々を優先しなければならないという名目で、試合枠をトンガやフィジー、サモアといった国々に与えてしまうことになる。

テストマッチ以外にも、ワールドラグビー内での半分などのメリットがある、と報道されています。

日本がティア1の待遇になれば、様々なメリットが出る。代表のマッチメークに、投票での持ち票の増加。配分される資金の増額は、新型コロナウイルスの影響で懸念される減収分を埋める助けとなる。

「ティア1入り」コメントの裏側

一部報道では、ボーモンド会長による日本のティア1入りのコメントは、会長選を有利に進めるための選挙活動だった、という意見も。

ボーモンド会長は、日本のティア1入りの話と同時に、「ティアの考え方をなくしたい」とも発言しています。ティア2の国への一定の配慮があったと思われます。

世界ラグビーにおける日本の立ち位置

意見が選挙活動に必要だった、としても、このことから言えるのは「ワールドラグビーで日本がカギになりつつある」と言うことです。

上述の日本経済新聞によれば、世界のラグビーは「ヨーロッパ」と「南半球」に二分されており、今回の会長選も構図は同じでした。日本はどちらにも属さない「無所属」的な存在であり、どちらが取り込むか?が選挙の争点となりました。

日本を取り込むにあたって「日本のティア1入り」を出した、と言うのは、ティア1になる可能性がない、世界が認めない国には「ティア1」とは言わないでしょう。

「ティア1」というラベルの効力も不明瞭ですが、1つ言えるのは「日本のラグビーが世界に認められつつある」と言うことです。

日本は、ラグビーワールドカップを再度開催することをすでに表明しており、ますます国際舞台での存在感を出していくこととなるでしょう。


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