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【観戦記】完敗 ~ 日本代表vs.イングランド代表

2022年11月12日(日本時間2022年11月13日深夜)、ラグビー日本代表はイングランド代表とイングランド・トゥイッケナムスタジアムで対戦し13-52と大敗を期した。

対戦の見どころ

1年後に控えたラグビーワールドカップ2023™フランス大会では同じプールに入った2チーム。お互いに「手の内は見せられないが勝ちたい」「戦術は知られたくないが試したい」という悩ましい状況で試合を行う。

2020年から世界的に拡大した新型コロナウイルスの影響で、強豪とのテストマッチが十分に行えていない日本。それに対してシックス・ネーションズでヨーロッパの強豪と切磋琢磨してきたイングランド。

日本はラグビーワールドカップ2019™日本大会から選手が大きく変わっている。司令塔だった田村選手・松田選手が離脱し、新たなSOとして山沢選手・李選手でイングランドに挑む。選手だけでなく8万人のサポーターの圧力が襲い掛かるトゥイッケナム・スタジアムでどんな采配するかが楽しみだ。

一方のイングランドも前回大会のメンバーを中心としつつも、若いメンバーを入れながらチームを作ってきた。注目は2シーズンぶりにキャプテンに返り咲いたSOオーウェン・ファレル選手だ。キャプテンシーはもちろん、キッカーともしても調子を上げている。

会場の様子

世界最大のラグビー専用球技場であり世界ラグビーの聖地でもあるイングランド(イギリス)トゥイッケナム・スタジアム。会場までの様子は別記事で紹介する(Coming Soon)

朝のロンドン市内は「霧の街」の異名通りの霧と雲のどんよりした天気だったが、試合が行われる午後に向かって天候が改善する。キックオフ前には青空となった。11月のロンドンにしては気温も下がらず絶好のラグビー観戦日和だ。

前日までのニュースではチケットは8万枚以上が売れ、当日のスタジアムは満席となった。もちろん観客の大半がイングランドサポーターだ。試合前からビールを片手に会場のあちこちで盛り上がっている。

試合開始の1時間前から選手が到着。
トゥイッケナム・スタジアムお約束のサポーター花道を通って選手たちが会場入りをした。緊張の面持ちが見える。

スタジアム内は試合前30分くらいから急に人が増え、試合前にはの会場が満員となった。8万人の「God Save the King」は圧巻だ。

試合展開

試合開始からイングランドが圧倒する。
先に圧倒したのは観客だった。開始1分もたたないうちに「Swing Low Swing Chariot」の大合唱が始まった。合唱に押されるようにイングランドが強気の攻撃をし、PGを得て先制した。最初のトライもイングランドだった。前半11分、モールで進んだイングランドが横展開し最後はFBスチュアート選手がトライを決めた。特に前半はFWのモールやスクラムはイングランドが日本を圧倒した。その後22分には、先にトライを決めたFBスチュアート選手のロングランからのトライ。一度はWTBコカナシンガ選手を止めるが倒れる直前のオフロードパスのコースを日本はだれも止められなかった。
日本が得点するのは後半31分、相手のオフサイドからのPGでようやく3点を返す。前半の日本は1つのPGを上げるのものの、イングランドCTBポーター選手にもトライを奪われ、24-6で折り返した。

後半はSOを山沢選手から李選手に交代、前半よりも攻撃的なディフェンスを展開するも、イングランドは後半も強い。46分には、イングランドのゴールライン前のラインアウトからモールで前進しトライを決められた。さらに点差を離されつつも、58分にようやく日本のトライシーンが来る。日本が相手陣内でフェーズを重ねる中で、イングランド選手がボールを奪ったが取りこぼした。こぼしたボールをLOディアンズ選手が拾うと倒れている選手を飛び越えてゲインしゴール前に突進する。相手のタックルが入る前に追従したSH斎藤選手にボールを渡しトライ。ディアンズ選手もすごいが、それに反応して追いついた斎藤選手も見事だった。
とはいえ、日本の得点はここまで。日本が攻める時間帯が多いが、イングランドの前のめりなディフェンスで攻撃を下げられるシーンが多くみられた。その間に少ないチャンスを確実に得点につなげたイングランドが、52-13で圧勝した。

残るTier1チームとの差

前試合で、ニュージーランドに勝利できるか?まで迫った日本だったが、イングランド相手に大きな敗北となった。日本代表のパフォーマンスは悪くなかった印象だ。一方で、前週にアルゼンチンに敗れたイングランドの立て直しは早かった。アルゼンチン戦で課題と言われたディフェンスも修正してきた。

JSportsのスタッツで見ると、試合全体を通してエリアもボールも日本の支配率が高い。また日本のほうがより長い距離を走っている。つまり、日本は攻撃をしているもののディフェンスで止められている一方で、イングランドは少ない運動量や支配率で効率的に得点をとっている。

(出典)JSportsオンデマンド

ニュージーランドに続き、イングランドにも敗戦。Tier1との距離はまだあるようだ。

聖地・トゥイッケナムの恐ろしさ

試合のすごさはもちろん、それ以上に会場で肌で感じたのは「トゥイッケナム・スタジアムの怖さ」だ。収容人数・会場の形状等が理由だろうが、ホームであるイングランドサポーターの圧力が日本の会場に比べて圧倒的に強い。例えば、この試合では開始1分もたたないうちに「Swing Low Swing Chariot」の大合唱が始まることにもある。この大合唱は、選手がインタビューで「Swing Low が始まると隣にいる選手の声が聞こえない」というほどだ。

日本代表は、ラグビーワールドカップ2019™を経て、Tier1と肩を並べる強豪国となった。まだまだ上がってきたばかりなので、競合だからこそ応援が盛り上がるTiew1各チームと相手のスタジアムで戦うときの状態に慣れていく必要があると肌で感じた。

W杯2023™フランス大会まであと1年、これからの日本は…

先に「Tier1との差はある」と感想を述べたが、コロナ禍で試合ができなかった直後のオーストラリア戦、夏のテストマッチのフランス戦から比較すると、日本のやりたいプレーが形になっている印象を受ける。何がどう形になっているか説明できないものの、プレーの連携やモールの一体感に安心する。

また、前回のW杯からの3年で半分以上の選手が入れ替わった。LOディアンズ選手やSO李選手は21歳と若い力が活躍する。若いメンバーをFLリーチ選手をはじめとするベテランの選手が支えるとともに、熾烈なポジション争いをしている。世代交代をして新陳代謝をはかりながら新しいラグビー日本代表に生まれ変わっている。

ワールドカップ™2023フランス大会まであと1年。
チームの仕上げとメンバーの成長が楽しみだ。

がんばれ、ジャパン。


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