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No.042 英語・挫折の歴史・その7・まゆみさん

No.042 英語・挫折の歴史・その7・まゆみさん


(「No.037 英語の歴史・その6・坂本さん」からお読みの方へ:時間軸ではその6とその7は同時進行に近いです。その6の記事の中で少し触れているスタントンスクールの話の一部になります。内容・文章共に「No.005 ブリキの太鼓」とほぼ同じです。最後に映画に触れる箇所が、こちらにはありません。写真は「ブリキの太鼓」と同じものを使用しました)

まゆみさんと出会ったのも、結構前のことだ。

スタントンスクールという英会話学校があった。都内に数校あった中で、市ヶ谷校、後に池袋校に合わせて二年ほど通った。イギリス英語を売りにしていて、存在はNHKのテキスト内の宣伝で知っていた。イギリス英語か、何となく敬遠していた。

まゆみさんとの出会いを語るには、由理くんの従兄のジョージくんに触れなければならない。由理くんの父隆司さんの弟、康司おじさんの長男でニューヨーク生まれだ。由理くんと結婚後、千駄ヶ谷駅前のマンションに住むおじさんの家によくお邪魔した。奥様の禮子さんは、アメリカ大使館にお勤めの経験を持ち、康司おじさんも記者としてニューヨーク在住、帰国後、海外からのニュースを取り扱うビスニュース社の日本支局長の立場にあった。英語を生で身近に使う人たちと、人生で初めて出会った。

このように紹介すると、いかにもインテリの方達との印象を持たれるだろうが、失礼ながらそうじゃないから面白い。興味のある方は「英語・挫折の歴史シリーズ」をお読みください。初めて「千駄ヶ谷の叔父さん」を訪れた時、ジョージくんも弟さんのシェリーくんも小学生だった。

酒屋商売で使っていたトヨタのカローラバンで、定休日の水曜日の夜を中心に「千駄ヶ谷のおじさん」宅を訪れた。いろんな事を学び、いろんな話を聞かせていただき、沢山の刺激をいただき、ちょちょくマジックを披露させていただきました。感謝、感謝です。思い起こせば、後の大学入学の一歩に間違いなく数えられる出会いだ。こちらの数多の話の一つが、まゆみさんに繋がる。

ジョージくんが中板橋に遊びに来た。勉強、特に英語につまづいた高校生になっていた。尋ねると「いやー、父にですね、英語できなくなったんで、父の友人にプライベートで英語教えてもらっているんです」「オレもね、どこかいい英会話教室ないかって、思っててね。ところでお父さんの友人って外人さん?」「いや、日本人のおっさんです。クニヒロさんって言います」「はっ!?ひょっとして國弘正雄さん?」「そうっすね。なんか有名らしいっすね」今は便利な世の中です。興味が持てたら、検索してみてください。面倒な人には、同時通訳の権威の方とお伝えしときます。「喫茶店なんかで教えてもらってるんですが、言うこと難しくて分かんないんですよ。喫茶店のお姉さんに声かけて、無視されて、ちぇっちぇっ言ってました、この前。ギャハギャハ!」ネコに小判か?ジョージくんがネコなのは分かるが、國弘さんが教師として小判かは判断できなかった。「國弘さんがスタントンスクールは、いいって言ってましたよ。」

翌日、スタントンスクール市ヶ谷校の受付の椅子に座っていたのは、権威に弱くないと、常日頃言っている人の言質を怪しむべきか。キングスイングリッシュの面接官にレベルを測られた。話をこちらのペースに巻き込むのが、間違って高く評価させるコツだ。悪い知恵はどこで身につけたんだろう。”What do you do in your free time?”「時間のある時、何をなさっていますか?」キングスイングリッシュ聞き取りやすい〜。自分のテンプレートの一つに持ち込めた。”One of my hobbies is magic. Let me show you a trick.”「趣味の一つがマジックです。一つお見せしましょう。」一番上のクラスに振り分けられた。

スタントン初日水曜日19時、週一回三ヶ月のコース、男性三人女性五人、自己紹介で自分の位置を知る。朝日カルチャーセンター初級英会話の時と同様、一番下かな。机がコの字に並べられた教室のちょうど真向かいに、ベージュのスーツを着こなして座り、綺麗な英語で自己紹介をしたのが、まゆみさんだ。

4・5回目のレッスンの時だったか、まゆみさんとペアを組み、リスニングのテープが流された。かなり聞き取れない。隣のまゆみさんの手が、メモ用紙の上で小さく動く。一枚の紙の上に、不規則にアルファベットが書き散らかされている。はて、何だろう?レッスンの帰りに、何人かでお茶を飲むようになっていた。まゆみさんは海外生活経験が無く、高校三年生で英検一級、大学一年時に通訳テスト合格の凄さも聞いていた。

まゆみさんに謎のメモの事を尋ねると、地名・人名などの初めのアルファベットとの答えだった。Tokyoであれば「t」と、Mikeなら「m」と記しておけば思い出せると、高校で習ったとの事だった。語彙も豊富だった。vernacular見たこともない語を何処で学んだか尋ねると、覚えていないと返された。覚えた単語が単語帳の真ん中あたり右側ページ下付近、はっきりと言えるような覚え方をしてきた自分には、何処で学んだか記憶にないとは信じられなかった。数十年後の今は言える、corpulouas何処で覚えたか分からない、と。


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