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No.001 talk to her 「トーク・トゥ・ハー」

talk to her「トーク・トゥ・ハー」

そのときあなたは究極の愛を知る。

アルモドバルの最高傑作に世界が驚嘆!
孤独を知る全ての人々に贈る
21世紀の愛の讃歌

昏睡状態となり眠り続ける
バレリーナと女闘牛士。
話しかけられ、触れられた一人の女に、
愛の奇跡が訪れる…。

「オールアバウト・マイ・マザー」から3年、アルモドバルの最高傑作に世界が喝采!「男と女」以来37年振りに外国語作品としてアカデミー最優秀脚本賞を受賞した。
どれだけ愛を捧げれば、人は人と触れ合えるのか?絶望的なまでに残酷で、涙を止められないほど温かい、奇跡の愛の物語。ーーー愛はいつも孤独でせつなく、そして美しい。

2003年全国劇場公開作品・114分

イアリアに「Casa Vogue」というインテリア雑誌がある。この本を知ったのは、1988年ころだ。

時の流れを巻き戻さなければならない。 1972年、オイルショック前年に完成の4階建ビル通称「フジヤビル」、現在の自宅が東京都板橋区の片隅にひっそりと立つ。「何色のビルですか?」訪ねられたら「白です」と答えるではあろう。「エレベーターはありませんので、健康にはいいですよ」と付け加えるのが常である。

一階が店舗、各階3部屋・両端の部屋は風呂付き、真ん中の部屋は風呂なしの部屋である。四階も三部屋に分かれていたーー過去形です。

由理くんと生活を共にして、14年経っていた。四階三部屋をぶち抜き一つにしようと話が膨れて、結構な改装となった。その時のエピソードの一つを、数年後に英語で書くことになる。38歳で入学した上智大学比較文化学部一年時、English Composition 1 の三回目の課題の提出だった。

読み返す。俗な表現が思い浮かぶ「汗が出る」汗が出た。謙虚な部分からはこう言わざるをえない。手直ししたい箇所もあるがそのまま書き記そう。この課題から大学生活にささやかながらも目処が立ったかなと思えるようになったのだから。

“Artline(アルトリーネ)”

926062 Ono Shinya
English Composition 1
Tuesday, Friday, P.M.1:30-3:00
First Major Assignment
Professor Pagel

I fell in love with a lady in Mirano at first sight. I saw her sitting next to another lady in a furniture shop while I was walking on the stone pavement just after the rain. I pushed the glass door framed by some stones to enter. The heaviness of the door remained on my right hand.

Inside the shop, a variety of merchandise was arranged in neat order. After looking around, I asked a clerk in a low voice about the ladies sitting around the corner. The clerk said that they were “Lenox” and “Artline”. He told me that they were sisters and that Lenox was the elder sister. Soon I fell in love with the younger one Artline. I had the impression that she was creative and sensitive. At first, since she looked happy in the bosom of her friends and relatives, I wavered in saying to Artline to live with me. Finally I took the plunge to make the offer to live together in Japan.

Her artistic character reflects her birthplace Italy where you can see an enormous amount of ancient sculptures and paintings not only in the museums but also in the streets. A lady in ultramodern cloths in front of Botticelli’s Primavera goes well with the painting. Italy, as it were, the country of modern and ancient harmony.

After a month, I welcomed her to my house in Tokyo through the window, because the entrance door was too small for her glamorous body. We sat side by side. It was excellent time. I glanced at her perfect profile: her plump voluptuous beauty—one hundred and fifty kilograms, her lovable stature—eighty centimeters, her thick breast—fifty five centimeters. She adorned herself with a purple dress made of maple. I parted her dress and she embraced my love with the glass ribs…

Artline, a graceful lady, is a sideboard born in Italy. The top and back sides are made of stone-like material. Two pipes which run between the doors are joined at the middle of the top to bolster her weight. The left door is convex, her cheerful side. It reflects starlight elegantly. The right door is concave, her mysterious side. It enfolds candlelight softly. Her wave-like figure reminds me of Sophia Loren, one of my favorite actresses.

With other Japanese friends—a Kutani pottery a wooden doll and Japanese sliding doors, Artline creates in my house an aesthetic ambience.

ミラノで恋に落ちた、一目惚れってやつだ。雨上がり、石畳の道を歩いていた時だった。家具店の中に彼女は別の女性と共に腰を下ろしていた。石造りの枠組みのガラス扉を押して中に入った。扉の重さが右の手に残った。

店の中は様々な商品が整然と並べられていた。店内を見回した後に、声を潜めて店員に片隅に座るご婦人たちのことを尋ねた。レノックス(Lenox)とアルトリーネ(Artline)ですとのことだった。姉妹でレノックスが姉であることも知った。私は恋に落ちた、妹のアルトリーネに。彼女は創造的で繊細な印象をたたえていた。最初、私と共に暮らさないかと、アルトリーネに伝えることには、躊躇いがあった。友人達や、親類に囲まれて幸せそうに見えたのだから。最終的に、私は思い切って、日本で一緒に暮らそうとの提案をした。

膨大な数の古代の彫刻や絵画が、美術館ばかりかそこら中の通りに見られる、そんなイタリアを生まれながらに彼女の芸術的な特性は反映している。ボッティチェッリの「春」の前に佇む超モダンな服に身を包んだ女性の浮いていないことよ。イタリア、言うなれば、近代と古代の調和の国。

ひと月後の東京、彼女は窓を通り、私は家へと彼女を迎え入れた。彼女の豊満な肉体にはドアが小さすぎたのだ。私たちは肩を寄せ合って座った。至福の時であった。彼女の完璧な外見を見る。150kgふくよかと言って良い豊満な美しさ、80cm愛らしい背の高さ、55cm厚めの胸。メイプルで作られた紫のドレスで着飾っていた。私は彼女のドレスをはずし、彼女はガラスの胸で私の愛を抱擁した。

アルトリーネ、優雅な女性(ひと)、イタリアで生まれた家具。上部と背面部が石のような素材で出来ている。二つの扉の間にある二本のパイプは、重さを支えるために上部の中央で繋がれている。左の扉は凸面、彼女の快活な一面だ。星の光を優雅に映し出す。右の扉は乙面、彼女の神秘な一面が現れる。柔らかに蝋燭の光を包み込む。彼女の波のような姿形は、私のお気に入りの女優のひとりソフィア・ローレンを想起させる。

九谷焼の陶器、木製の人形、障子などと共に、私の家の中で、アルトリーネは美の雰囲気を作り出す。

「トーク・トゥ・ハー」はスペイン映画だ。イタリアのインテリア、その色彩はイタリアの風土や歴史と無関係ではない。「トーク・トゥ・ハー」はイタリアのものではない、スペインの色彩・音楽・リズムを持つ。優れた作品はそこでしか生まれ得ない独自の香りを持つ。

※スペインとイタリアの繋がりに触れる必要がある。おそらく書き直し。


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