自作朗読原稿『昭和の音、昭和の調べ』


その時、もう夜達い時間でした。
「カラオケ大会をするので、よかっら来て下さい」 と言われて、約束の場所に行ってみると、そこは郊外の、町外れの、寂しい公園でした。近くでカラオケ大会ができ るとは思えない場所でした。と、突然、手に持っていたスマートフォンが、ガラバゴス携帯に姿を変え、そのガラケ ーが今度は、ブッシュフォンに変わり、とうとうダイヤルを回して使う、黒電話になってしまいました。そして、電 話が鳴り出しました。待ち合わせに遅れるという知らせかもしれません。 リンリンリリン、リリリリンリン、リンリンリリンリリリリリン)
はい、もしもし?
下駄を鳴らして奴は来る)
それだけ言うと、ガチャン、と電話は切れてしまいました。でもそれは本当でした。 カランコロン、カラン、カラン、コロン 続けて、馬車の音も近づいてきました。
ドナドナ、ドオナ、ドオナー
満面に実みを浮かべた人もやって来ました。
こんにちわあ、こんにちわあ
そしてたあ~くさんの人たちが押し寄せて来ました。
ヘイヘイヘイ、ヘイヘイヘイ)
まるで、昭和にタイムスリップした様な、紅白歌合戦の様な、どこか見覚えのある顔ぶれが集まったのです。そして、 あるひとりの少女が呪文を唱え出しました。 テクマクマヤコン、テクマヤコン、ラミバスラミバス、ルルルルル~。 するとどうでしょう、さっきまで、郊外の、町外れの、寂しい公園だったのが、カラオケボックスになったのです。 天井にはミラーボールが、クルクルと回り、キラキラと輝いています。そしてまた、別の少女の、別の呪文が始まり ました。
マハリク、マハリタ、ャンバラヤンヤンヤン)
今度は、たくさんの食べ物と飲み物が現れました。揚げパンにソフト麺、それにつけてもおやつはカール、飲み物は お米屋さんのプラッシーでした。
こうして、昭和にタイムスリップして、それはそれは華やかな歌声が、公園だったカラオケボックスに、皆きわたっ たのです。
UFO
ウララアー、ウラララアー、ウラウララで一)
ハメハメハアー、ハメハメハアー)
アイアイ、アイアイ)
オ、バキャラマド、バキャマラド、バオバオパパパ』
ざわわ、ざわわ、ざわわ~)
シュルリイー、シュルリララア』
ドゥドゥビ、ジュビドゥビ、ジュビドゥバー』
それは楽しい、懐かしい時間でした。でも楽しい、懐かしい時間であればあるほど、時間は早く過ぎ去ってしまうも のです。空がだんだんと少しづっ静かに明るくなってきて、夜明けの音が聞こえてきました。 ルールルルルウー、ルールルルルウー)
夜明けの歌よお~」
カラオケボックスも公園に戻っていきました。 みんな、別れのあいさつをして消えて行きました。 まった達う日まで
またあ~、会うう~、日いまでえ~)


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