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井の中の蛙のほうがいいのかもしれない、と気づかせてくれたアメリカ人との対話。【 #DMM英会話日記 】

真面目で負けず嫌いで優秀な人ほど、往々にしてタフな人生を歩んでしまうものである。日本トップクラスの難関大学を出て、日本トップクラスの難関大学を出た人しかいないような企業に入り、過酷な競争と重圧に揉まれて、心を病んで倒れていく……といったケースを、私はそれほど短くもない人生で何度も見てきた。

今回はそんなケースにはまりかけて、うまく抜け出した、あるアメリカ人の話。彼はニューヨーク郊外で生まれ育ち、アート関連の大学を出て、少年時代から夢見ていた世界トップレベルのアートギャラリーで働き始めた。

「ニューヨークでサバイブするのは本当に大変なんだ」と彼は笑う。

「まず第一に、生活コストがべらぼうに高い。エレベーターもないようなオンボロのアパートのごくごくちっぽけな部屋の家賃が15万円もするんだ。そこから不潔で混雑している悪夢みたいな地下鉄に乗って、ぎゅうぎゅうになりながら通勤する。
おまけにニューヨークのアートギャラリーの仕事は厳しくて、僕のボスは始終怒鳴り散らしていた。なんとかそこで数年もがきながら働いたけど、結局は病気になって、仕事を辞めて東南アジアに行ったんだ」

彼はその新天地でとても重宝されることになる。英語のネイティブスピーカーで、誰もが知っている世界トップレベルのアートギャラリーで働いたキャリアを持つ青年はその国にはいなかったからだ。彼はすぐさま、とあるアート雑誌のライターとして働きはじめ、望めば簡単にその国のトップレベルのアーティストに会うことができるようになった。それはニューヨークのチェルシーでは得られなかった満足感を彼にもたらせた。

I like being a big fish in a small pond.(僕は小さな池の大きな魚でありたい)」と彼はいう。日本語に訳すと「井のなかの蛙」なのかもしれないが、彼の声には、個人的によりポジティブな響きを感じた。
「ニューヨークのアート界では、僕は大海の鰯みたいなものだった。でもここに来たらいきなり巨大なサメになれたんだ(笑)」

自分の脳力が高く評価され、有利な条件で働ける場所があるのに、なぜ多くの優秀な人達は、わざわざ過酷な競争の世界へ飛び込んでいくのだろう?
難関大学合格を目指して、子どもの頃から「同じレベルの人達がいる集団に加わる」ための受験というゲームに勝ち続けて来たことで培われた思考回路が、会社選びにも影響してしまうのかもしれない。効率だけでいえば、自分が一番高く評価される場所で生きるほうがいいに決まっているのに。

私もどうせ生きるなら、井のなかの蛙のほうがいいなぁ、と彼と話していて思った。さて、その井戸はどこにあるんだろう?

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