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Amazon以前、買い物は素晴らしい体験だった、とイギリス人青年は言った。【 #DMM英会話日記 】

ウェブ関連の仕事をして20年以上というキャリアのせいか、「若者はデジタル・ネイティブ!」みたいな思い込みが強いのかもしれないけれど、世界の若者は私が思っているよりもずっとアナログを愛しているのかもしれない……そう思い始めたきっかけは、DMM英会話で出会う20代〜30代前半の先生たちとの会話である。

ニューヨークに住む33歳の先生はフィルムカメラを愛している。「現像が上がってくるまでどんな写真が撮れているかわからないのが好きなんだ。待っている間も楽しめるだろう?」と彼は言う。また、スペインに住む25歳のイギリス人の先生は、エッセイや日記を常に紙のノートに綴っている。「ブログは書かないの?」と聞くと、「紙に書くほうが気持ちが落ち着くんだよ」とのこと。
そして、これから紹介する29歳のイギリス人の青年もまた、デジタル化の波により失われつつあるアナログ文化への愛を語るのだ。Vdeo killed the radio starじゃないけれど、Amazon killed the record shopとでも言うべき嘆きを紹介したい。

きっかけはボリス・ジョンソン首相がコロナで入院したよね、という世間話からだった。
「僕は彼をイギリス版トランプだと思っているし、彼の政治や信条には全く同意していないし嫌いな政治家だけれど、それでも彼には生き延びて欲しいと思うよ。コロナで死ぬなんて恐ろしいことだよ。
でも、彼は不健康な生活態度で有名だったんだ。何しろ大酒飲みだし、食生活もヘルシーとはほど遠い。たぶんタバコだって吸っていただろう。でもイギリスの政治家がそんなことを公にしたらパブリック・イメージが台無しだからね。一生懸命ヘルシーさをアピールしているけれど真実じゃない。政治家たちのジョギング風景なんか、ただの広報活動だよ」と彼は笑う。
日本もいま、コロナ騒動をきっかけに政権批判がSNSを賑わせているけれども、イギリスもまた同様のようである。彼は続ける。
「大体保守党なんて貧しい人々のことなんか考えちゃいない。彼らは金とビジネスのことが一番大事なんだ。イギリスの新聞だって、オーナーはビリオネアばかりだし、情報はバイアスがかかりまくっている。The newspapers in the UK  are incredibly biased.」

そういえば、Amazonがワシントンポストを買収したよね、ジェフ・ベゾスも超ビリオネアだしね、と言うと、

「そうだね。僕はAmazonのことは、興味深い企業だと思っているし、世間だって彼らをリベラルでカラフルな企業だと捉えている。一方で、労働者の扱いや、多くの国でまともに税を払っていないなどのダークサイドもある。
僕は彼らが、海外で法人税を払っていないと知ってから、彼らからは何も買わないと決めたんだ」とのこと。
「そりゃもちろん、Amazonは抜群に便利だ。でもそこでは、欲しい物をストレートに買える、それだけだろう?
僕は昔、HMVやTOWER RECORDに入ったら、1日中そこにいたものだよ。僕の住んでいる町には、かつて音楽好きの店主がやっている小さなレコードショップがあって、店内はそれこそ膨大なCDで埋め尽くされていた。CDの棚に指を滑らせて、止まったところにあったものを買うなんてこともよくやったよ。そうやって僕は、まだ知らなかった素晴らしい音楽に出会ったんだ。
それこそ、買い物の素晴らしい体験なんだ。だから僕は今でも、できるだけローカルビジネスを応援するようにしている」

そんな小さなレコードショップや本屋などは、今イギリスではコロナのせいでさらなる苦境に立たされている。

「新型コロナウイルスは、世界をまったく変えてしまうだろう。僕はそれを望んでいないし、昔に戻って欲しいと思っているけれど、おそらく、それは無理なんだ。いつになるかわからないけれど、この騒動が落ち着いたあと、世界はまずますデジタル化され、オンラインショッピングはより一般的になるだろう。」


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