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ヌカヅケ小説            ヌカヅケのヒッ! NO.11

「こんにちは」ヌカヅケを印籠のようにマダムイクコに差し出し、マダムが用意した花瓶にそれらを入れ、カウンター脇に設置されている洗い場で、手のひらに付いていたヌカを洗い流すと、カミに祈る前のような清浄なカラダになった気がして、思わずマダムに向かって両手を合わせて頭を下げた。

それからしずしずと足を進め、店内に置かれたおしゃれ着を見て回った。

おしゃれ着はどれも近隣の町で作られたもので、遠方から海を渡ってきたものは一つもない。


 蜜柑の汁で染めたショールにヨモギ染めのブラウス。ふわふわのタオル生地で出来たTシャツ。

そんな中からわたしは陶芸用の土で染めたワンピースを選んだ。

シルク素材のつるつるとした肌触りのよいワンピースだった。

海風をはらめば、どこか遠くの見知らぬ場所へ運んでくれそうだ。

マダムはワンピースを袋に入れると、花瓶の中のキュウリのヌカヅケ一本をわたしに返し、もう一本は手元に残した。


写真 : 花瓶に入ったヌカヅケ

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