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多圭智みき
2022年10月1日 13:12
髪の生え際が白く染まりはじめた頃、トミコは花の匂いのする男と出会った。男はトミコの写真集を携えて見世物小屋にやってきた。「ワタシはこの写真集に出会い、これまで自分のやってきたことが間違いであったと気付きました」 男はトミコにむかって、おもむろに話しはじめた。打ち明け話をしてくる客は、これまでも少なからずいたため、トミコは彼の話に耳を傾けた。 通常、こうした客の打ち明け話は、トミコの片耳
2022年9月25日 10:05
花園のタコになりたいというのが、幼い頃からのトミコの夢だった。タコは海でなく、花園で生きたほうが、ぜったいに似合う。きらきらしたヒトデやタツノオトシゴなんかを引き連れ、八本のアシをぬめぬめと躍らせて、パステルカラーや極彩色の花と戯れる。それこそがタコの幸せ。磯の香に包まれるよりも、花の香に満たされた方がカラダは断然柔らかくなるはずだと、花園のタコを愛する幼いトミコは、母親のバラの香水をまと