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痩せることの何がそんなに魅力的なんだろう?

パーソナルトレーナーというお仕事をしていて、ほとんど毎日のように向き合う「どうやったら痩せるの?」というお悩み。

悩みを解決するために、科学的な根拠や、東洋医学的な知見を学ぶことはもちろん大切。だけど、私はそれ以上に大切で忘れてはいけないことがあると思っています。

それが「そもそも、痩せてることの何がそんなに魅力的なの?」という視点です。

今回は、まだまとまった考えがあるわけではないのだけど、最近、海をボーッと見ながら考えちゃう「『痩せたい』って気持ちは一体何なんだろうな」について、言葉を編んでいきたいと思います。

◆痩せてどうなるの?

私自身、摂食障害で自分の身体を痛めつけていた時は、痩せたくて痩せたくて仕方がなかったんですよね。今より10kgも少ない体重が体重計に表示されていても「もっと痩せていれば私は『なんか可愛くなった?』って言ってもらえるのに!」と思っていました。

当時、大学で先輩にいじめられてたというか、嫌がらせを受けていたというか、そんな人間関係の悩みもあったんです。将来なりたい職業も決まっていなかったし、宙ぶらりんになった私の自我を受け止めてくれるものは何もなかった。空を飛ぶ鳥が、とまるのにちょうどいい枝が見つからなくて、あっちをフラフラ、こっちをフラフラしているような状態。

そんな状況をね、痩せたからって抜け出せるわけでもないんです。

痩せたって嫌な先輩はそのままだし、明日のテストも予定通りやってくるし、なりたい職業が天から降ってくるわけでもありません。それでも、痩せたら自分に自信が出るんだろうし、自分が好きな身体さえ手に入ればあとのことはどうでもよかったわけです。

あの時は「痩せないと人生良くならない」とか「痩せないと彼氏もできなかれば結婚もできない」とか思ってた。でも、今あの時の私の気持ちを振り返ると、痩せないと良くならない人生とか、痩せないと振り向いてくれない人とか、「そんなに狭い視野で生きてて大丈夫?」「なんかさ、生きがいとかないの?」と心配になりますよね。

外から見れば「そんな狭い視野で」って言えるんですけど、自分がその渦中にいると、なかなかそういう風に見ることは難しくて。私自身、夢だったイギリス一人旅に行ったあたりから道が開けてきたので、当時の私と似たような視野の人たちには「とりあえず今の環境抜け出して、今は見えてないものを見る経験をしてみたらどう?」と言っています。

別に一人旅行じゃなくて、転職や引越でもいい。新しく趣味始めたりでも全然いい。 ダイエットが人生の中心になってる思考回路から抜け出せるなら何でもいい。心にグサッとくる経験、平手打ちされて目が覚めるような言葉、ハッと気付く出会いを求めて今の環境を抜け出してみたら、自分で「こんな狭い視野で大丈夫?」って気づけるから。自分の心の中から来る気付きが一番強いもん。

◆痩せたい文化

そもそも、なんで私たちが生きている今の世界は、痩せている方が魅力的だという世界になったんだろう?と考えることも、視野を広げるためにすごく大切。

餓死が問題だった頃は、
ふくよかな身体=豊かさ・子作りに適している
だったから、脂肪がついていることは魅力的でした。

それから、時代は何度か「脂肪がある方がいい」と「痩せている方がいい」を行ったり来たりしてきました。ここ数十年で痩せている方が魅力的という方向に世間の意識が移っていったのは、何がきっかけだったんだろう?

例えば、戦時中の日本だと、きっと脂肪があったら「贅沢をしている」と思われて肩身が狭かったんじゃないかな、だから「痩せている=共に戦っている=いいこと」になったんじゃないかな、とか想像がつく。

戦後、昭和の時代は今テレビで見る女性よりもふくよかな女性がもてはやされていたのは、その反動だったのかもしれません。

また、西洋の基準では日本の「痩せている」はガリガリで栄養不足そうなので人気がなかったりします。逆に、日本からすると「あのサイズはちょっと大きすぎ」と感じる人も多いかもしれません。

住む国によって「痩せている」の定義は異なる。『美の感覚』とは、自分が生まれ育った環境で見てきたものや、浴びた言葉が大きく影響して作り上げれるものです。

これだけ世界中で多くの人を振り回す理想の「痩せた身体」というイメージですが、それ自体はとても曖昧。時代によって異なり、環境によっても異なり、話す人によっても異なるんですよね。

◆痩せることの何がそんなに魅力的なんだろう?

話をじっくり聞いていると「痩せたい!」という悩みを持つ人は、自分は目標体重を追っていると思っていても、実は、目標体重に”追われている”だけだったりします。

痩せて魅力的になりたくて、大切なものを犠牲にしてまでその身体と自信を手に入れたくて、でもその理想を「理想」と思っているのは同じ時代にあなたの周囲にいる人たちだけで、数年もたてば時代が変わり別の理想が生まれる世界に住んでいて…。

そんな美の感覚にどうしてここまで振り回されるんだろう?悩みを抱えている人たちを見ても、過去の私のことを考えてみても、「痩せたい欲」っていうのは、考えれば考えるほど不思議な欲だなぁと思うのです。

目標体重に向かって頑張るのもいいですが、それだけの時間とお金と労力を使ってでも達成したい目標なのであれば、その「痩せたい!」がどこでどうして生まれたのか考えを巡らせる機会があってもいいんじゃないのかな。

なにか1つの答えがあるわけではないですが、公園や川でボーッと座りながらそんなことを考える時間も、有意義なんじゃないかなぁと思ったのでした。



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