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女王陛下と007が愛するマーマレード

日本の食パンは、イギリスの山型食パン(ラウンドトップ)、角型食パン(プルマンブレッド)を模範としたという説と、フランスの耳付き食パン(パン・ド・ミー)を模範としたという説が有力である。

食パンのトーストにはバターか、蜂蜜か、ジャムか。

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たまにはマーマレードという選択肢もある。

チップトリーの愛称でロイヤルワラントを得ている「ウィルキン&サンズ」のマーマレードを食べる。

日本では、バターでもジャムでもマーマレードでも、パンの表面に平坦に塗りつけるのがオーソドックスなのだろうか。

しかしマーマレードの美味しさを本当に追求するなら、パンの上にざっくりと落とす。このやり方をお勧めする。

大胆さが美味しさのコツだ。

トーストのパン生地だけをかじる。舌は小麦粉の香りとサクリとした食感だけを覚える。

次にマーマレードがたっぷりと盛られている部分を口に運ぶ。

すると舌は小麦粉の香りと味わいの上に、マーマレードの甘みとオレンジの香りと果皮の食感を迎え入れる。

この抑揚があると、食パンの味わいに起伏が生まれてパンも美味しく、マーマレードもまた美味しい。

平坦に塗りつけてしまうと、パンとマーマレードが生み出す二重奏を味わえない。

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自宅でこの食卓を楽しむのはもちろんだが、野外でこの組み合わせを口に運ぶと、開放感という指揮者が現れる。

ピーナッツバターとインスタントコーヒーでは、残念ながら指揮者は現れないし、ハーモニーも奏でられない。

ウィルキン&サンズは1757年からイギリス・エセックス州のチップトリーで農園を始めた由来から、社名ではなく地名のチップトリーの愛称で親しまれているイギリス王室御用達(ロイヤルワラント)のジャム、マーマレードブランドだ。

日本人にも親しみが深い。。

口溶けが柔らかくて、香りが高く、甘みはほどほどだ。

チップトリーは、ど真ん中のマーマレード・ブランドだと思う。

同じくイギリスでロイヤルワラントを得ているマーマレードに、フランククーパーがある。

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エリザベス女王も、ジェームズボンドも、ちなみに私もフランククーパーのマーマレードを食べている。

苦みを含んだざく切りのオレンジの皮は、でかいにもほどがある。

色は濃く、味も渋い。少なくとも子どもの口には合いそうにない。

フランククーパーのマーマレードを美味いと感じるなら、成人した証しになるのではないかと思う味わいである。

イギリスのマーマレードとしては、ダルメインも忘れてはならない。

ジェーンズマーマレード、ジョージズマーマレード、ビショップマーマレード、キッチンガーデンマーマレード、アップルブランデーマーマレードと、何しろ種類が多い。

それぞれ家族一人ひとりが別々のレシピで自分だけのマーマレードを作っていたのが、やがて製品になったという。

マーマレードは国柄、土地柄も味に反映される。

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イタリアのシチリアで作られる、ロカンダ・ラ・ポスタのブラッドオレンジ・マーマレードは、離乳食のように柔らかく、口当たりもまろやかだ。

いかにも地中海シチリアの南国の果実といった、赤いオレンジの皮が細かく刻まれて入っている。

マーマレードはジャムと違って果皮の苦みが味わいの華である。

甘味だけではなく苦みも味わうことを考えると、大人だからこそ、あれこれ試してみたくなるのがマーマレードかもしれない。




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