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一滴の水が落ちるように。

2年前、プレスリリースの作成でお手伝いをした人がいる。
ママ向けのイベントやワークショップの企画運営をしている協会の理事で、それだけ聞いたら、他にたくさんあるママ向けビジネスの一つかな?と思う内容だった。

しかし、よくよく話を聞くと、彼女のその活動にかける想いは真剣で、一つ一つの活動の先に、世の中から児童虐待を無くしたい。孤立した子育てで追い詰められる母親たちを救いたい、という大きな目的があった。

そしてその大きな目的の理由、原点には「彼女自身が母親から虐待を受けた」という辛い経験が・・・。


初めてその話を聞いたとき、私は思わず泣いてしまった。

それほどに、彼女のしてきた経験は苦しく、そこからの数十年の人生の軌跡を経て、今、母親と子供向けに行っている活動は尊いものに感じられたのだ。


私は彼女の想いを1枚のプレスリリースに落とし込んだ。

彼女がしている現在の活動内容、なぜその活動をしようと思ったのか、過去の経験。そして、未来に向けて、どんな社会になってほしい、どんな社会を作りたいと考えているのか?を、1枚にまとめて、メディアの人たちに届けた。

その当時も、地方のテレビ局の取材を獲得し、彼女の活動はVTRとして紹介され、本人もスタジオ出演するなど、想いを届けるお手伝いができたという、私の中では、PRの成功体験として記憶に残る出来事だった。


そんな彼女から久しぶりにメッセージが来た。

なんと、2年前のプレスリリースを受け取ってくれた全国紙の新聞記者の方から、連絡が来たのだという。

「2018年にプレスリリースを受け取ってからずっとお目にかかりたいと思っていながら、なかなか私の勉強が追いつかず、タイミングのずれたご相談でごめんなさい。一度話を伺わせてください」と書かれていた。(ざっくりまとめると。本当はもっと熱のこもった長文の取材依頼文だった)

2年前にリリースを受け取った時には、勉強不足だと思って連絡ができなかったのだそうだ。そこからずっと、子育てや孤立する母親たちへの理解を深め、ようやく彼女に連絡が出来るようになったという。


2年越しの取材の連絡ー。

この2年、ずっとリリースの内容を心に留めて、その分野の取材をつづけ、勉強を重ね、ようやく本人に連絡出来るようになったという、その記者の方の誠実さに心打たれた。


私たちは日々いろんなことを感じ考え生きている。

辛かった経験も、悔しかった経験も、そのままにしていたらマイナスな経験でしかないけれど、そこから一歩踏み出して「同じような苦しみを味わう人を減らしたい」と活動を始める人たちがいる。

そんな人たちの行動は、メディアの力を借りて、たくさんの人に届けることで、世の中を変える力になる。


だから私はこれからも、一滴の水を落とすように
少しでも波紋が広がっていくように
希望を忘れず信じる力を失わずに
伝える届けるお手伝いをしていきたい。

そう思わされた、2年越しの取材の連絡だった。