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プロセスエコノミーの一形態? ー特許分野の事例ー

プロセスエコノミーという言葉をご存知だろうか?
従来の製造業やコンテンツ産業にありがちな、完成された最終プロダクトに対し課金するアウトプットエコノミーの対局の概念で、製品を作成する途中段階のプロセスを無料・有料で公開し、最終プロダクトができた頃には多くのファンを虜にする手法だ。SNSとの親和性も高く、近年この手法を採用する企業も多い。

詳しくは、尾原和啓氏の「プロセスエコノミー」を読んでいただきたい。

話は変わって、私は仕事で科学技術指標を扱うため、科学・特許に関連する企業・団体を数多くみている。一般財団法人 日本特許情報機構(Japio)もその一つだ。Japioって何の会社?という読者が大半だろうが、主に特許庁が行う特許・商標などのデータ整備事業を受注している法人だ。

このJapioの動きが最近面白い、というか不思議だ。

まず、今年の4月からJapio知財AI研究センターのサイトを立ち上げ、製品に昇華する前に研究成果を公表している。特に、SDGs(持続可能な開発目標)に関して、独自のAI技術を応用しSDGsに貢献する特許技術を見える化するという試みを行なっており、注目を集めている。


知財AI研究センターのサイトをみると、「Japio-GPG/FXをご契約のユーザー様には、・・・個々のAI推定結果をご提供いたします。」とあるので、間接的にはデータを販売しているらしいが、SDGsデータを直接販売はしていないらしい。

極め付けは、JapioがYoutubeチャンネルを行なっている点だ。同じく4月からYoutubeチャンネルを立ち上げ、マスコットの黒猫が出演する動画をいくつか作成している。そしてこれらの動画、どれもJapioやJapioの製品を紹介していない。
以下の動画を見てもらえればわかるが、1回目はJapio知財AI研究センターのサイトを立ち上げた内容(これはまだ理解できる)、2回目は同僚と囲碁をやっている内容、3回目はオリンピックに関する内容となっている。

第1回:にゃぴおデビューにゃぴ!
https://www.youtube.com/watch?v=POw5tMdWz5I

第2回:にゃぴおのお昼休みにゃぴ
https://www.youtube.com/watch?v=7Eky-i2YzQs

第3回:オリンピック、感動したにゃぴ
https://www.youtube.com/watch?v=uRZio9oFoaA

不思議だなと思いつつ、冒頭に立ち戻る。
筆者の推測としては「Japioはプロセスエコノミーを実践している」と思われる。SDGsも最終プロダクトであるデータを販売すればいいし、youtube動画は最終プロダクトと全く関係ないのだが、まずはサイト・SNSによる情報発信を行なっている段階なのだろう(JapioはTwitterもやっているが、同じく本業に関係のないツイートが多い)。

尾原和啓氏の本によりプロセスエコノミーが日本でも市民権を得たものの、実践中のモデルを見つけるのはだいぶ難しい。(プロセスエコノミーの特徴として、消費者は自らが参加していることを実感できず、いつの間にか参加していることになる事例が多いからだ。)

あくまでも私の推測だが、今回Japioの活動がそれにあたるかもしれず、事例研究の一つになるのではないか?

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