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#翻訳 ミレニアル世代は、飲酒に嫌気がさしている

Atlanticに掲載されている、ミレニアル世代(1980年以降生まれ)の飲酒に関する考察の記事が面白かった。
だいたい日本の流行はアメリカの後追いのイメージがあるので、数年後に日本でもノンアルコールバーができたりするのかな?

原文:Millennials Are Sick of Drinking
https://www.theatlantic.com/health/archive/2019/04/millennials-sober-sick-of-drinking/586186/

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ミレニアル世代は、飲酒に嫌気がさしている
しかしまだとても飲酒を放棄したとは言えない

2017年1月20日、キャシー・スクーンは二日酔いで職場へ転がり込んだ。それはドラルド・トランプの大統領就任後の朝であり、スクーンはドナルドの支持者ではなかったため、これを忘れるために、夜友達と飲みに出かけたのだ。この夜のうさばらしによって、翌日かなり悲惨な状態になった。「完全にみじめな気持ちでミーティングに参加していたし、わかると思うけど、大人のするようなことじゃなかった。」と彼女は言う。

それ以来スクーン(デンバーに住む37歳)は、アルコールへの道を断った。「『飲酒』は今の私にとっては、例えば誰かの誕生日とかガールズナイトの時とか、より特別な時のもの。だから、毎週の代わりに2週間に1度にした。」
飲酒を控えることは、彼女にとってそんなに簡単なことじゃなかった。なぜならデンバーは、活気ある醸造所やバーが立ち並ぶ若い街であり、スクーンの交友関係は会って飲むことが主だった。しかし、飲酒を避けることにはその価値があった。「その人たちと美術館に行ったりワッフルを食べに行ったり、その他のために会えない理由がないと気づいたから。」

私はこの数週間で、100名以上の20代、30代アメリカ人で、似たような飲酒習慣の変化や、飲酒を控えるようにしている人たちの話を聞いた。強い味方もいる。公衆衛生局の啓蒙努力は青年期の飲酒割合を減らすことを助長してきたし、アメリカのビール製造企業は、アルコールだけではなく、関連製品にも手を出し利益を分散させ始めている。メディアもまた変化が足元まで来ていることに気づいていた。ここのところ、ミレニアル世代(現在22歳から38歳)が飲酒しなくなってきていという記事がこの数か月でにわかに増えた。

しかし、断酒(sobriety)、この言葉は一般的に薬物乱用から立ち直った人が訓練して完全に断つことを指すが、これだけでは事象が説明できているとは言えない。
しらふへのこだわりの実態は、長いことアルコールを、いつでも機会があれば飲む人と、一切飲まない人に二分して取り扱ってきた文化の中で、ちょうどいい場所を探しているとも考えられる。多くのミレニアル世代、特に都市部に住み大学教育を受けているような、マーケターがターゲットとする消費者は、たくさん飲むことにただ疲れているだけかもしれない。

ヤングアダルトの飲酒習慣が大きく取って代わられているという何か統計的な証拠はまだない。習慣の変化はたいてい人々の意識の変化の後に時間差で来るもので、飲酒習慣に関する国勢調査は大量にアルコールを消費する人がやや減少していると示すだけだ。(男性:短時間で5杯以上のアルコールを飲むのが1か月に5回以上、女性:4杯)。有効なデータのうち直近のものである2015年から2017年、この数か月で何かしらアルコールを摂取したミレニアル世代の割合は60%以上で安定している。

しかしこれらのデータから変化の種類を把握するのは難しく、データから私が人々から説明された変化を見出すのは限界がある。最近酒を控えたある人は、例えば毎晩グラス2~3杯のワインを週1杯に変えたとして、その人はまだ同じ統計カテゴリの中にいるだろう。省略されている変化が個人レベルでは大きな変化となっているのだ。飲酒を控えたいという欲求は、人々がお酒を一切楽しみたくないという意味ではない。その代わり、アルコール中心だった社交の場が、人々の生活の色々な部分へひそんでいて、これまでの世代の人が過ごさなければいけなかった時間より長くとどまっているのだ。

若いアメリカ人にとって、飲酒はとてもソーシャルだ。「20代の時はかなり頻繁にお酒を飲んでいた、特に社交の場で。アルコールはもはや友達ではないと気づいたのは、30代になる前だった。」とサンフランシスコにいるレニー・バンデルビルはいう。数十年前に、結婚と子育てが都会へ移ったためか、大学教育を受けたヤングアダルトたちが社交的な飲みの場から自然に離れた。ミレニアル世代の場合、伝統的な家族構成に属しているのはごく少数であり、皆彼らの両親より結婚や出産が遅い。今や、自分の交友関係の構成は多くの30代半ばの人にとって、自分たちの20代前半のことろそんなに変わらない。すでにデートや友達と飲みに出かけたりする時間が十分に供給されたので、若干疲れて始めている。

蓄財の観点でも先代とは大きく価値観が異なる世代にとって、実生活の問題として帰着するのが、1週間に3回大量のビールや13ドルのカクテルをいくつも買うのがいい考えかどうかということ。アレックス・ベルフィオーリ(30歳でピッツバーグのIT企業勤務)は、最近ビールを家に保管しておくのをやめることにした。「飲酒しないことでいくら節約できるのかを計算したし、今そのお金を何に使おうか考えているんだ」と彼は言う。ニナ・サーバン(ブルックリン在住、24歳、ブランドマネージャー)も同様に重ねる。「飲酒はただ退屈に感じるし不必要に高い。」飲酒にプレッシャーすら感じ、「アルコールと服用できない薬を飲み始めて、簡単にやめられるようになってほっとしている。」そうだ。

中毒患者のセラピストであり、ノースカロライナ大学のアルコール・薬物中毒治療のプログラムディレクターであるブリッタ・スタークは、彼女の実践経験から、そのような誘導をもとめる、似たようなストレスを感じている。「内省すべき時が来ている。ミレニアル世代の親近者はおそらくバランス感覚がすぐれている。ストレスを減らしてくれる物質を探す必要がないように、ヨガや瞑想をしたり、または何か体を動かくことをしている人もいる。」これは一般的な関心として健康維持があることの裏表であるし、運動習慣に疑問を持っている人達の場合、アルコールとのより健全な関係が飲酒を放棄することを要求することはほぼないとわかれば彼らの社会的な懸念を消すだろう。

また、スタークはアルコールに関して、彼女の若い患者たちの間である悩ましい意識の変化があることに気づいた。コーピングスキル(※訳注:ストレスを感じた際に起こるストレス反応への対処スキル)を伸ばしてこなかったミレニアル世代はよくお酒を飲む傾向があるのだ。スタークは35歳以下で重度の肝臓疾患かアルコール肝炎の人の結構な数に気づいた。多くの若者にとって意識がより節度のあるものになっていくのにつれ、他の大勢が苦しんでいる。アメリカでは毎年9万人近い人々が、アルコール関連の病気で死亡しているし、その数値は意味ありげに下がったりしていない。

さらに、飲酒は薬物洗浄のバキューム利用割合としては現れない。ミレニアル世代が摂取するとしてよく知られているものは、移り変わる流行に応じて他にもたくさんあるのだ。「今はまだ、セルフメディケーションの世代のように見えるが、彼らは違うやり方をしているだけだ。」とスタークは言う。大麻の標準化とこれまで以上の合法化はその大部分だ。

私が詳しく話した人たちの間では、複数人が夜のワインが夜の合法薬物に変わったと口にした。「リラックスするためにマリファナを吸うーカリフォルニアのおかげで(※訳注:カリフォルニアは大麻合法)」とバンデルビルはいう。彼女にとって、大麻はアルコールから離れさせる効果の持続性にかける。「朝、その日の準備ができた状態で起きることができる。」お酒から薬物への転向は彼女だけではない。2017年の研究では医療大麻を合法化した国では、類似国と比べてアルコールの販売率は12パーセント以上下がっている。娯楽嗜好品の合法化は、大麻製品をより広く市場に普及させることで、この傾向を強める潜在的可能性がある。

ミレニアル世代はまた、スタークがいったことは他のドラックへの厄介な興味であり、アルコールから気をそらせる何かの乱用であるということを示した。彼女は多くの患者はオピオイド(麻薬物質)や、Xanaxのようなのベンゾジアゼピン物質の助けを探しているのを見ている。若い世代が飲まなくなっているからと言って、すなわちそれが彼らがより幸福だということを示すわけではない。ヤングアダルトの自殺率は上がっているし、処方薬の乱用は国が主張し始めた唯一の問題である。

飲料業界は確かに不吉な兆候を見ている。過去10年間、オリジナル酒造ビジネスの潮流は、ミレニアル市場の飲酒ベースの交流によって拡大し、数えきれない地ビール醸造所や、蒸留酒製造所がや若年層をターゲットにしたハイエンドなカクテルバーやワインショップが表れた。今、2018年のニールセンのデータはアルコールカテゴリ全体で販売率の成長は鈍化している。Bon Appetitは低アルコール飲料またはノンアルコール飲料の市場は次の3年でほぼ3倍になると予測している。

アルコールによって消費されているスペースも、消費者の需要によってシフトする必要があるだろう。近年、アメリカ中の都会的なバーで、ノンアルコールカクテルを出すところはあまりにも簡単に見つかるようになった。ニューヨークにも、少数の若い起業家が新しい同僚にふるまうための場所を開いている。Listen Barは、社交的なスタンドで、アルコールなしのパーティーを提供するが、それは最初の場所を借りるのにクラウドファンディングしている。ブルックリンのグリーンポイント のメイン通りから一本入ったところにあるGetawayでは、バーはアルコールフリーに力をいれるゆえに、ビターズすら使用しないのだが、数週間中にオープンする。

(Listen Bar)

※訳注 Getawayのオープン後の記事が5月にBBCに出ていました(英語)
The Rise of the Sober Bar
http://www.bbc.com/capital/story/20190510-can-you-have-any-fun-at-a-bar-with-no-booze

Getawayのオーナーの、サム・とニスとレジーナ・デレアはメディアでのキャリアを捨てバーを開いているが、トニスの兄弟のアルコール中毒からの回復にインスパイアされてアイディアを得た。これまで、二人が受け付けてきた予約はより広い世代が楽しみにしていることを明らかにしている。「自分としては、より年配の人々のほうが、より私たちのバーをお酒が飲めない人のためのものだと考えているように感じる。彼らは白か黒かで物事を考える――飲むか、飲まないか。より若い世代のほうが、ただ時には飲まないという受け入れの意思がある」とトニスは言う。

アルコール消費における大きなトレンドの転換点になる代わりに、ミレニアル世代はシンプルに炭鉱のカナリアになっているのかもしれない。統計的に、Z世代、今高校から大学生の世代は、アメリカのアルコールを通じた関係性構築の目覚ましい変化に迫られている。Z世代は各世代の青年期より飲酒の割合が低く、より個人の薬物乱用と消費による関係性が早い段階でセットされている。

今のところ、多くのヤングアダルトたちが内在化させていた飲酒のプレッシャーが消え、色々なオプションが表れてきていることにほっとしているように見える。人々の住む場所における飲酒の場は、アメリカの文化的には長いことそうあるべきとされていたように、オールオアナッシングである必要はない。「多くの人にとって、友達と正直な気持ちとして『楽しく飲みに出かけたい』時は、その友達も同じこと考えてた!というだろう。ネガティブな返事を受け取ったことがある人がそんなにいるとは思えない」スタークは言う。

デレアもまた、彼女のバーの将来的なパトロンとなる層の中にある興奮と安心の混じりあいに気づいている。「インスタグラムのアカウントはバーの写真を載せていて、多くのコメントがただ友達をタグ付けしているだけだ」