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【エッセイ】眠れない夜

 齢57、疲れが溜まるのである。

 疲れといっても、肉体疲労の方。精神的にはとんと疲れなくなった。なぜだろうと考えてみる。
 人間について考えるのは好きな割には、人間関係は希薄な傾向がある。昔から友達は少ない。学生時代も親友とも呼べる人間はいるにはいたが、トイレにまで一緒に行くような、そういった仲ではなかった。そういう人とは今でも交流はある。一緒にいても居心地がいいので、なんのストレスもない。
 その他の人間関係を考えると、深入りせず、自分の考え方とずれがあってもすり合わせができるようになってきたといったところだろうか。
 どうしても合わない人とは心の中で関係を切れるようにもなった。愛の反対は無関心というマザーテレサの名言があるが、正にそれである。
 唯一のストレスの原因、迷惑被っている合成香料については、我慢はせずに「苦手です」と言うようにしている。そして「私、言いましたから」と思うようにしている。
 そんなこんなで若い頃に比べれば、精神的疲労というものはずいぶん減って、眠れない夜がなくなった。
 しかし肉体疲労はそれに反比例するように増えてくる。仕事で子どもと鬼ごっこをせがまれやっているうちに、本気で逃げたりする。本気で逃げても、子どもに捕まる。本気で追いかけても子どもに追いつけない。57歳というのは、こういうものかと思う。そして、あちこちの筋肉が悲鳴をあげる。
 
 こうやって眠れない夜とすぐに寝てしまう夜の比率は、歳とともに変化を遂げたのであった。

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