見出し画像

Margo-物語と糸- #9 |『銀河鉄道の夜』を染める 6

『銀河鉄道の夜』の糸シリーズのなかで、一番最初に売り切れたのが、今回ご紹介する「燈台守の苹果」です。賢治は苹果(りんご)が好きですね。『銀河鉄道の夜』のなかにも、たくさん登場します。

「いかがですか。こういう苹果はおはじめてでしょう。」向こうの席の燈台看守がいつか黄金と紅でうつくしくいろどられた大きな苹果を落とさないように両手で膝の上にかかえていました。」(『銀河鉄道の夜』より)

 『銀河鉄道の夜』の物語に赤い色はあまり出てきませんが、そのなかでさそり座の赤と苹果(りんご)の赤は強い印象を残します。燈台看守がくれた苹果は金色と紅でうつくしく彩られ大きくてとても美味しそう。
 そして「折角剥いたそのきれいな皮も、くるくるコルク抜きのような形になって床へ落ちるまでの間にはすうっと、灰いろに光って蒸発しているのでした。」とあるため、普通の苹果ではなく何か特別な存在であることがわかるのです。
「燈台守の苹果」という色は、そんな特別で幻想的なうつくしい苹果をイメージして染めました。

画像1



『銀河鉄道の夜』に出てくる苹果たち
 苹果は『銀河鉄道の夜』のなかに何度も出てきます。
ジョバンニが野原で想像する列車のイメージのなかでは乗客が苹果を剥いていますし、カムパネルラの頬が「まるで熟した苹果のあかしのように」うつくしくかがやいていると比喩にも使われています。これらは、幸せや楽しさ、高揚した気持ちなど、プラスのイメージに使われています。

 しかし、タイタニック号を思わせる難破船から青年や子供たちが登場すると、苹果の象徴する印象が少し変わります。
 まず、タイタニック号の乗客である青年と子どもたちが列車に乗り込んでくる前に苹果の匂いがします。
 また、燈台守がくれた苹果もふつうの苹果ではありません。
「折角剥いたそのきれいな皮も、くるくるコルク抜きのような形になって床へ落ちるまでの間にはすうっと、灰いろに光って蒸発しているのでした。」とあり、ジョバンニが想像する列車の乗客が剥いていた単なるおやつの苹果とは違い、なんだか意味ありげ。
 そして、タイタニックで遭難した青年や子どもたちは燈台守がくれた苹果を食べるのですが、ジョバンニとカムパネルラは食べずに大切にポケットにしまうのです。

 この場面の苹果は、キリスト教を象徴しているという説があります。だからこそ、キリスト教徒の青年たちは苹果を食べるし、列車のなかに現れる前に苹果の匂いがする。

 一方ジョバンニとカムパネルラは苹果を大事にポケットにしまいますが、食べることはありません。
賢治が熱心な日蓮宗の信者だったことは知られていますが、おそらくジョバンニとカムパネルラも仏教徒の設定なのではないかと考えられています。だからこそ二人はキリスト教の象徴である燈台守の苹果を、大切にはしたけれど、食べることはなかった。青年たちとカムパネルラが銀河鉄道を降りる場所が違うのも、宗教の違いから至る場所が違うのでしょう。

実際に食べられる花巻の苹果
賢治の出身地である花巻は、昔から苹果の産地だったようですね。
JAいわて花巻にはオリジナルの「賢治りんご」(無袋栽培し太陽の光を浴びせるふじ)というのがあるらしく、『銀河鉄道の夜』をモチーフにしたオリジナルのパッケージで全国に発信しているそうです。
めっちゃ食べてみたい。皮をくるくる輪にしながら、剥いてみたいです。

賢治りんごはこちら↓
https://item.rakuten.co.jp/hamanaka/10004051grer/

そして、Margo ショップはこちら↓
https://margo-yarn.stores.jp/




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?