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『進撃の巨人』終わり方の哲学的考察

終わり方の考察のため、盛大なネタバレを含みます。
まだ最終回まで見ていない方は、見終わってから読みに来てくださいね。

かく言うわたしもアニメ勢だったので、漫画が終わってからはネタバレを恐れながら過ごす日々でした。

アニメも放映されてからすぐには時間がなくて見れなかったので、Twitterにてやんわりしたネタバレをくらいましたが、「見てない見てない!」と気合いを入れ直してなんとか乗り切りました。

すばらしい映像は必ず哲学的であるので、哲学的にどんなことが言えるのか、今回は『進撃の巨人』でやってみます!

終わり方3点を考察。







① 人はなぜ生きるのか?生きる意味とは?価値とは?について


アルミンとジークが「道」で
「日常の何気ない一瞬一瞬に幸せがある」というようなことを言いました。

これは、私としては「あちゃー、それ言っちゃったか」という感じでした。

これは、「生き物は増やすことがその最重要目的」というテーゼに対するアンチテーゼになっていました。

でも、これはつまらない物語でよく見る説で、

これでは足りない、というのが私の考えです。

私はハンナ・アーレントを読んで、
「自分や他人のかけがえなさに気づける」ことこそ
人間として生まれてきた価値・意味なのではないかと思っています。

自分がユニークな存在であり、他者との違いさえも喜べる。

この視点にまで至らなかったのは残念でした。

たぶん描こうと思えばそこまで描けたはず。


② やはり最後は「愛」


アニメ全体でギリシアの3大「愛」をあらわしていました。

エレンとアルミンは友情(フィリア)
エレンとミカサは愛情(エロース)

エレンは無償の愛(アガペー)というタイプではなかったけれど
アルミンや調査兵団のメンバーたちは、自分が犠牲になっても
かつては敵対していた人たちや世界の人たちを少しでも多く救いたい
想いがあった。

特にエレンとミカサの愛は、アニメ『甲賀忍法帖』を思い出させるような
究極の愛のかたちを見せつけられたようでした。

始祖ユミルが、他の誰でもなくミカサを待っていたこと。

それは、ミカサを自分に重ねて、究極の愛を体現してほしかったから。

ユミルにはできなかったけどミカサにはできたこと。
それは、愛する人を自分の手で殺めること。

愛する人の死を望むというのは矛盾に満ちている。

でも、やらなくてはいけない。

その矛盾を乗り越えてこその、愛。

ミカサがエレンを殺す瞬間は、あっけなく、でも確実だった。
エレンはとても穏やかな表情。

ミカサは一生、「あの時もし自分がやっていなかったら・・・」と考えることになる。でも、それさえいい。

結局最後までエレンだけを思い続けたのは、やはりミカサらしかった。


③ 自分はバカ、でおわり?


エレンのセリフで、ちょっと引っかかったこと。

「馬鹿が力を持っちゃうとこんなふうになっちゃう」というようなことを言っていたシーン。

これはなぜ引っかかったのかいまいち上手く言語化できないんだけど、
「いや、そんなこと言わないで」って思った。

きっとエレンはたくさん考えて、向き合った。

その熟考の後に出した答えと選択を過小評価するような言い方はもったいないなって。

結局自分は頭が悪いから・・・って、そんなふうに片付けてしまうべきではないし、どんな人も、思想に優劣をつけられるべきではない。

頭がいいとされる人も間違えることはあるし、頭が悪いとされる人も、なかなか思いつかない面白い考えをすることもある。

たしかに力を持つことで制御がきかなくなったり、逆に力に操られる人はいる。

でも、エレンはそういう人ではなかった。

だから、こんなふうに言わないでほしかった。

むしろ思考力が先天的なものに定められないということを、示してほしかったと思いました。


・・・
以上、3つの視点での考察兼感想でした!!


とにかく、これだけの壮大なストーリー、進撃の巨人第1話を読んだ人の中で誰が想像できたでしょうか!

私はまったく想像していませんでした!

アニメ史に残るすばらしい作品!

哲学的に考える価値のある、芸術作品と言えるでしょう。

それでも、諫山創さんがフランスに来てインタビューを受けた時、
「フランスの方は自分をアーティストのように扱ってくれるけど、日本では商品を作る人としてしか思われていません」というようなことを言っていました。


これは私自身も本を書いて、ちょっと思ったことではあります。
私はビジネス書だったので、誰かの役に立つということが目的としてあるので、商品を作っている感覚はあって当然だったと思う。


でも、ここまで哲学的で社会学的なストーリーで、娯楽の域を超えている作品を作っている人までが、商品を作らされている感覚があるというのは残念。


インタビュアーはフランス人ですが、諫山さんは日本語で答えているのでフランス語がわからない人も大丈夫。

ぜひ、見てみてください。

メディアBrutによる諫山創さんのインタビュー動画はこちら↓


考察にかんするコメントや感想もお待ちしています!

アニメは好きなので、アニメ哲学コーナー、またやりたいです。

今見ているアニメは、東京リベンジャーズです。これは今のところ、ガンジーの非暴力の体現だと思っています。

では!


私の本はこちら。
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