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赤朽葉家の伝説


製鉄業で財を成した旧家赤朽葉家の1953年から2000年代の三代に渡る女たちの物語。読み進むにつれ、ガルシアマルケス「百年の孤独」に題材を得てるな、とニンマリ。
もっと山陰の重く湿ったものかと思っていたら拍子抜けするほどポップだ。地元で生まれ育った者にはよくわかる。

紅緑村=米子市
宵町横丁=朝日町
碑野川=日野川
錦港=境港

商店街の描写なんか、あーっと声が出るくらいよくわかる。

「紅緑村では、駅前が花形の街であった。
駅を出たところからずっと続くアーケード街は、朝は野菜や魚の市が出て、昼は買い物客でにぎわった。デパートも五階建てのものが建っていて、一番上の階でお子様ランチを食べたり、屋上から景色を眺めたりするのが子供たちの憧れであった。
(略)

郊外のマイカー族が増えるにつれ、駅前はあっという間に寂れていった。アーケードの街の店は次々に閉店した。」

宵待町横丁のディスコ「ミス.シカゴ」に後に売れっ子漫画家になる赤朽葉毛毯が足繁く通うが、あの頃の朝日町にはディスコが何軒かあり、僕も帰省した時によく踊りに行った。

赤朽葉家はアメリカのケネディ家のようにしたいと桜庭さんは考えたらしい。

最終章の第三部はミステリー仕立てになっていて伏線を回収していく。

「赤朽葉家の伝説」は日本推理作家協会賞受賞をしたが、その選評。

「作り手にはこれを書くために作家になった、いや生まれてきたと言える著作との出会いがあるものですが、本作は桜庭一樹という作り手にとってその一本になると確信します」

「この作者の代表作になる作品であると思う」

そして馳星周からは「これしかあるまい」と。

ようこそ、ビューティフル・ワールドへ。

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