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佐藤愛子の「役に立たない人生相談」とは

私は人生相談が好きで新聞や本をよく読むのですが、今まで読んだ人生相談の白眉は今東光の「極道辻説法」でした。父が持っていたのですが、その歯に衣着せぬ本質を突いた毒舌が縦横無尽に飛び交うだけでなく、その博覧強記ぶりに何度も読み返したものです。

この佐藤愛子さん(当時94歳)の人生相談第二弾『好きなようにやればいい。』は前作よりパワーアップしている、というよりは相談者の相談に抱腹絶倒です。

例えば「言葉遣いが悪すぎる彼女はありえない?」という19歳大学生の相談。

大学に入り彼女ができたのですが、この彼女が口が悪い。「お前」と呼ばれるのは気にしないそうですが、あるスポーツ施設でバドミントンをした時のこと。ミスを繰り返す彼に対して彼女は「球に喰らいついていかんかい!」と声を荒げ、ついには「キサマ、どこに目をつけてる!」と言われた時は、デートというより軍曹と軍事訓練をしているようだ、と彼は思います。
それ以来、「キサマ」と呼ばれるようになったのですが、「なんか軍隊みたいだね」と言ったら、「キサマが軍隊に入るようじゃ、日本もおしまいだ」と言われます。

それに対する佐藤先生の回答は

「どう思われますか?彼女はありえないのでしょうか?」なんて情けないことを訊くな!
しっかりせえ、キサマ!それでも男か!とホントはいいたい。

堪えきれず爆笑です。

もう一つ、14歳女子中学生の相談。
80歳のおばあちゃんの家に行くと料理を作ってくれます。料理上手なのはいいのですが、オムライスを出された時のケチャップの賞味期限が6年前でした。それを言うと「今は大げさなんだよ」と返されました。おばあちゃんよりもっと長く生きている佐藤先生はどう思いますか?

私の知る、とある神経質な人は賞味期限が一日でも過ぎると捨ててしまうそうです。フードロスが出ないように食材に日夜目を光らせている料理担当の私はなんともったいない!と思うのですが、佐藤先生の回答。

あなたのおばあさまはご立派です。質素倹約を宗とする日本のよき時代のカガミです。
賞味期限なんてもの、消費者に新しく買わせようとする陰謀ではないかと思っています。自分の味覚を信じよ!今は前もって失敗を防ぐことばかりに汲々としているから人間力が育たないのです。

そして宣言するのです。

賞味期限を黙殺せよ!私はこれを今年の標語としたい。

佐藤先生には知らない人からよく相談の電話がかかってくるそうですが、聞いていた長女はボロクソに怒られるのによく相談してくるなあ、と不思議に思います。「私の声を聞くと元気が出るんだとさ」と本人はいいます。

さもありなん。

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