『君とパパの片道列車』
娘が今年、中学受験をしたので灘中の算数の過去問を見たことがありますが驚きました。
こんな難問を小学生が解くのか!という驚きでした。演算でも数式が延々と続き、かなりのスピードで解かなければならないのです。
ちなみに小学生の時にIQ185だと診断された中島らもは灘中に入学した時の成績が学年で8番目だったのですが、本人は俺の前に7人もいるのか、と思ったそうです。
本書の主人公は小学生三年生で入塾します。そして目指すなら、と灘中受験を決意するのですが、塾の先生に聞いてみると「灘コース」は塾の中でも圧倒的に成績のいい子どもたちが選ばれる選抜コースでした。
「灘コースの案内が来ていないなら、お子さんの成績はその基準に届いていません」と言われます。
そこから父と息子の中学受験の伴走が始まりました。息子はゲームとテレビが好きな、どこにでもいる小学生ですが、父親である著者と息子の関係がいいのです。父親はことあるごとに息子を褒め、励まし、スキンシップをします。息子が可愛くて仕方がないということが文章から伝わってきます。
灘中だけではなく、何校か受験するのですが、合否様々で、一喜一憂します。
私が感心したのは塾の友だちが著者に向かって「お父さん、おめでとうございます」と告げたことでした。立派な小学生です。
そしてまた、普段は無口で大人しい友だちが息子にボソッと、「今度は合格してこい」と言うのです。それには著者もたまらなくなって、その子に頭を下げました。
それでも次の著者の言葉には万感の思いがこもっています。
「これから、どうなるんだろう。全部落ちたら、どうなるんだろう。世の中の人は知っているのだろうか。中学受験がこんなにも恐ろしいものだということを。こんなにつらいと知っていたら、中学受験なんてさせなかったのに」
中学受験を通して親子は成長していきます。もちろん彼らの絆も強くなりました。
それは一生に一度の親子の濃厚な時間でした。
受験最後の結果に少し驚きました。よく頑張ったという思いもあり、目標に向けて努力することは幸福でもあり、尊いことだとも痛感したのです。
小五からは灘コースのある遠い校舎まで片道一時間の遠距離通塾がスタートします。帰りは必ず仕事終わりの著者が塾まで迎えに行き、電車の中で復習を見守ります。タイトルはそこから付けられていますが、中学生なったら、これからはできるだけ一人で歩いていけよ、という著者の思いが表れているとも感じました。
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