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12歳の試練『二月の勝者 中学受験生に伝えたい勉強よりも大切な100の言葉』

学校教育法では「満6歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満15歳に達した日の属する学年の終わりまでにある子」に対して保護者が就学させる義務がある。だから小学生は浪人はできない。一発勝負なので、そういう意味では大学入試より厳しいといえる。

『二月の勝者』という中学受験を題材にした漫画が話題になっている。吉祥寺の中堅塾に黒木という新しい校長が赴任してくることから物語は始まるのだが、前任が都内御三家(男子校では麻布、開成、武蔵)に一人も合格者を出せなかったために飛ばされて代わりに大手名門塾からテコ入れにやって来たのだ。
新卒で講師として採用された佐倉麻衣は学生時代に空手をやっていたが、教え子を試合で勝たせられなかったことがトラウマになっている(彼女は社会人になってからも道場に顔を出す。ちらっと見える道場訓は極真会館のものであるが、作者の高瀬志帆さんは極真空手をやっているそうだ。随所に出てくる空手ネタが楽しい)。

佐倉はそのこともあって、塾の児童に思い入れを持って教えるのだが、「塾の講師は教育者ではなく、サービス業です」と断言する黒木と対立する。受験生の親をATMと呼び、常にクールな黒木も実はある秘密を持っていた。

都内では御三家を含むトップ校は20校ほど。4人に1人が中学受験をし、トップ校に合格するのはわずか1割だそうだ。一年間で塾にかかる費用は150〜200万円という。

ある人に勧められて読み始めたこの漫画、リアリティがありダントツに面白い。発行部数は累計で400万部近くに達しているそうだ。

『二月の勝者 中学受験生に伝えたい勉強よりも大切な100の言葉』(おおたとしまさ)という本は、著者が「黒木の内に秘める願い」を100の言葉にし、それぞれに漫画のコマを対応させたものだ。
その最初に「中学受験生はかわいそうというのは、余計なお世話だよね」という言葉が出てくる。
私も実は小学生が受験というのは酷だと思っていた。著者は言う。

「たしかに過酷な努力を無理矢理押しつけられるのはかわいそうです。でもそれはスポーツや音楽の練習でも同じです。中学受験だけをかわいそうと決めつける大人は、自分の勉強嫌いを勝手に子どもたちに投影しているだけではないでしょうか」

ある目標に向かって努力することは大人でも子どもでも幸福であると今の私は思う。だからこそ以下の著者の言葉にはとても首肯できる。

「これまでの私の取材経験をもとに言わせてもらえば、中学受験をする親子には必ずそれぞれのドラマがあります。人間の成長ドラマです。子どもだけでなく、親も成長します」

12歳の試練、春に向かって頑張れ。受験に失敗したとしても今の努力は絶対に無駄にはならないはずだ。

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