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ケアンズへの道15

くだんの女性車掌が慌てたように客車に入ってきて、「大丈夫です。踏切に男性が侵入してきただけですから」と言ったが、なぜかこの時、彼女が英語を話したのか日本語を話したのか覚えていない。

ちょうどその時、車窓の目の前で50代くらいの半裸の男性が「俺は何にもしてねえからな!」と怒鳴りながら向こうの方に去っていくのが見えた。右手に紙袋を握っている。オーストラリアでは公共の場での飲酒は禁止されているので酒瓶に違いない。

ケアンズ駅には4時に着いた。
ホテルのチェックインが遅くなったのでゲストハウスから「レセプションは閉まるので、外にあるセーフティボックスから部屋のキーを取ってください。キーにはあなたの名前とルームナンバーを付けています。ゲートの暗証番号は⚪︎⚪︎⚪︎、Wi-Fiは⚪︎⚪︎⚪︎、です」というメールがきていた。

ボックスを開けると部屋番号が書かれた紙がキーに結わえてある。その部屋を探すのだが、わからなくてウロウロする。二階の共用スペースにいたヤングカップルに聞くと、女性が男性に「探してあげなさいよ」。

男性は二つ返事で探してくれる。彼も少し迷っていたが、無事に見つかった。
丁重にお礼を言う。

ダブルベッドとシングルベッドがあり、テレビと冷蔵庫は無し。エアコンは1時間1ドル。
ここも中庭にプールがあり、バルコニーはないが、東南アジアのリゾートのような環境だ。
日本円で一泊一万円弱。

すぐに目の前にあるケアンズ駅を通ってwoolworthsへ。5分で行ける。
ケアンズにおけるwoolworthsは地方都市のイオンみたいなものだ。二日間で何回行ったことか。

エスプラネードに行く途中のホテル(?)の芝生でコンサートをやっていることがあるのだが、その方面から花火があがった。急いで近づいてみたが、終わってしまった。何だったのだろう。

ケアンズ最後の夕食はオージービーフということで地元で人気のステーキハウスに行く。
まだ夕方だが、店内は満席でテラス席に案内される。案内してくれたのは日本人女性である。

付け合わせを二種類選ぶスタイルでマッシュッドポテトとサラダをチョイス。ステーキは少し硬かったが、その方が噛みごたえがあって好きだ。娘は最後の乳歯が生え変わる時で、歯がグラグラして全部食べられないので残りを私が食べた。さすがに腹パンだ。
手を挙げてチェック。

「娘さんと仲がいいですね」

「いいですよ」

「私は父とは反抗ばっかりしていたので旅行なんて考えられないです。反抗することがカッコいいと思ってましたから」

自分もパンク世代なのでよくわかります。

「私は29なんですがケアンズに来て三年、ここで働き始めて二年になります」

「生まれはどちらですか」

「新潟です」

「どちらからですか」

「大阪です」

「関西空港ですね。また来てくださいね」

気になってあとでその店の口コミをネットで読んでみた。そこには「日本人女性が親切に教えてくれた」と多くの書き込みがあったが、中でも印象的だったのは「日本人女性が一生懸命テキパキと働いていて輝いていました。私の娘も彼女のように輝いてほしいと思いました」
という書き込みだった。
彼女の御尊父はこの書き込みを読まれたのだろうか。読んでいてほしいと切望する。

ケアンズに行ったことのある人なら知っているだろう。アメリカのスラングでなぜか「クズ野郎」という名のステーキハウスだ。

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