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「こんにちは、三木美術館です」 vol.4  姫路城を望む美術館のこれまでとこれから。観光客にも地元にも親しまれる憩いの場を目指して

姫路の文化を発信する三木美術館からお届けするインタビュー企画。第三弾は、前回に引き続き、現館長であり三木美術館の創設者 •三木茂克氏のご息女でもある三木立子さんの続編です。

1000点もの美術品を収集した茂克氏はなぜ美術館の創設を決めたのか。創設者の美術館の建物、内観、コレクションへのこだわりなどとともに、現館長が同館をどのようにまちの役に立たせたいと思っているのか。三木美術館の過去と将来について伺いました。

家族には、ある日突然「美術館をつくる」と宣言した父

―美術館の開館の経緯について教えてください。
岡田社長もおっしゃっていましたが、父は常々、建設業という仕事柄、騒音などで地元住民の方々には迷惑をかけることが多いだけに、他のことで役に立ちたいと言っていました。そうしたなかで、自身が収集した美術品を後世に残しながら地域の皆さまに文化的に貢献したいと考え、美術館の設立を思い立ったのです。

姫路駅駅前から臨む姫路城。時代が変わっても絶対的なまちのシンボル


思ったら即実行の父。ある日、突然、設計事務所の方がいらっしゃり自宅横のスペースに美術館を建てるという話をされて。家族はみんなびっくりです(笑)。結果的に、敷地が狭くて断念。それならばと、本腰を入れて、姫路の新たな観光スポットになる美術館にふさわしい場所をと探した父。縁がつながったのが姫路のメインストリート大手前通りに面し、姫路城を正面に望む現在の場所です。ここには昔は銀行があり、大事にされてきた土地で持ち主の方もすぐには応じてくださらなかったんですけど、美術館の計画を伝えたところ「姫路のためになるなら」と了承してくださったんです。

作品はもちろんのこと外観、内装、すべてにこだわった美術館

―美術館の建物にはどんなこだわりをお持ちだったのでしょうか。
小野設計による外装のデザインは白鷺城とも呼ばれる姫路城にちなみ、白鷺の翼をイメージした造りになっています。床柱にヒバを用いた茶室など、館内の内装は髙島屋さんに担当してもらいました。また、店舗が入っているビルの6~8階は安藤忠雄さんのお弟子さんの芦澤竜一さんに設計と内装をお願いするなど空間ひとつひとつにこだわりを込めていました。そしてお客さまをお迎えする1階のエントランスに飾られている陶板は備前焼作家の隠﨑隆一先生に依頼し、美術館を建設する際に掘り起こした現地の土を混ぜて焼いてもらったものです。開館の翌年2009年には、姫路市のシンボル的な建築物として、「姫路市都市景観賞」を受賞したんですよ。

ビルの中とは思えない静寂さに包まれた茶室

また、父が開館に合わせて、「館のシンボルにふさわしい絵を」と日本画家の牧 進先生に依頼した作品が『嘉日双鱗図』。睡蓮が咲き誇る池に2匹の鯉が描かれた、高さ1.7メートル、横幅3.6メートルの大作です。睡蓮の色は父が好きだった黄色に、そして鯉は泳いでいる姿ではなく静かに佇んでいる姿にと父がリクエストしたと聞いています。

2008年6月にオープン時の様子。右上の写真が初代館長の三木茂克氏

当館には、およそ1,000点のコレクションがありますが、色が美しかったり、フォルムが垢抜けているなど、筋の通った父らしい共通の魅力を感じることができます。

眺望と共にアートに関する教室なども楽しめる、まちの憩いの場に

―この美術館をどんな存在にしたいとお考えでしょうか。
観光スポットとしてはもちろんのこと、日本の伝統文化や美術品に触れる場所、ホッとひと息つける場所としてより多くの方にご活用頂きたいです。当館では、文化勲章受章作家や、人間国宝の作家の作品を多数所蔵しております。そうした貴重な作品をより親しみを持って鑑賞して頂けるようにと、企画展は季節や“花”“山”“水”といったテーマを設けたり、陶芸は産地ごとなど、年に4回開催しています。季節ごとにご来館いただければ、毎回楽しんでいただけると思います。

喧騒のない静かな屋上から眺めるとタイムスリップしたかのような気分に

観光で姫路にいらっしゃった方は、姫路城を見学した帰りに寄って頂き、ひと息つきながら当館からお城の全景を再度眺めて頂くのもおすすめです。天守閣とほぼ同じ高さで、しかも真正面から眺められるスポットというのは当館だけ。2015年に開催された姫路城の修理完成記念式典でブルーインパルスが祝賀飛行を行なった際はこの場所から本当に素晴らしい光景を見ることができました。より白く生まれ変わった国宝、姫路城の姿をぜひ見にいらして欲しいです。また、館内では金継ぎ教室や水彩画教室のほか、企画展に合わせたワークショップも開催しております。美術品を鑑賞するだけではなく、自分で創作してみるのも楽しいものです。姫路に住んでいらっしゃる方も、はじめてお越しになる方も、新たな発見に出会える場所。そんな美術館にしていきたいですね。                       [文・堀朋子]                                     


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