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陶芸家・原田隆子さんの土を扱う面白さに魅了されて進んできた道

三⽊美術館の2階『galleryアートスペースmiki』を今月から飾るのは原田隆子さんの陶芸作品です。それに先駆けこれまでの活動についてお話を聞かせていただきました。作品をお買い求めいただけるこの機会にぜひ⾜を運んでいただければ幸いです。
展⽰期間:2023 年6⽉7⽇(水)〜7月2日(日)

活動が半世紀を超える、姫路在住の女流陶芸家

―原田さんから頂戴した陶歴を拝見すると、長い短冊状の紙はこれまでの経歴で埋め尽くされていました。日本陶芸展入選、女流陶芸展 文部科学大臣奨励賞受賞、淡交ビエンナーレ茶道美術展 淡交社賞奨励賞 受賞、姫路市芸術文化賞等、本当に書ききれないほどです。これだけの陶歴を前にすると陶芸家の家を引き継いだのかしらと想像してしまいがちですが…。

私は陶芸家の家の生まれでもなんでもありません。ただ、陶芸が好きで好きでやってきたらここまで来てしまったという感じなんですよ。陶芸と出会った時ですか? そうですね、6歳くらいの時にはすでにお花やお茶などの習い事をしていたんですが、そのお茶の席で、茶碗を作ってみたいと思っていたことを鮮明に覚えています。陶芸と出会ったという大げさなことではないかもしれませんが、陶芸に興味をもったのは間違いなくその時でしたね。

24歳ごろから松江のほうに通ったり、住み込んだりして陶芸を習いました。それで結婚後の1965年ごろにこの夢前窯を開いたんです。電気窯を購入してね。そうして主婦業をしながら作陶を続けました。子どもも二人授かりました。よく続いたって言われることもありますが、今考えると陶芸家と母親業の相性ってよかったんだと思います。子どもが学校へ行っている間とか、寝静まった夜の時間とかに自宅脇のアトリエで作品作りができるんですから。

―主婦業の合間の時間。それを無駄にすることなく、自分が情熱を傾けられることに費やしてきた原田さん。落ち着かれたお話ぶりからしても一途に黙々と続けてこられたのだろうと想像できます。でもそんな原田さんが陶芸家としてさらにアクティブに活動をするに至ったきっかけとはどんなことだったのでしょうか。

そうやって主婦として好きなことをやっていたんですね。ですから最初は水指や、香合、そして日常で使える食器などを作っていたんですけど、それを見た人が「教えてください」と。そしてそれが口コミとなって広がっていき、いつの間にか人に教えるようになっていました。でも教えるだけでなく、自分でも作陶をしては展覧会に出品していたんですが、1971年に第6回 女流陶芸公募展で初入選をしました。それは本当に嬉しかったですよ。

この女流陶芸という団体を主催されていたのは坪井明日香さんとおっしゃって非常に前衛的な作品を作られる方でした。そしてまだ女性の陶芸家がほとんどいなかった1957年に同士7名で団体の立ち上げをされ、1967年から公募展を行うようになって、私たちのような女性で陶芸を志す人たちの支援をされてきたんです。話は少しそれますが、2022年の後半に発起人である坪井さんがお亡くなりになったので、2023年3月に実施した第56回の公募展をもって公募展は最後となることが決定されました。

―ご自身のキャリアにとって大きな励みとなった公募展の幕が閉じられる、その場面に立ち会うというのは原田さんにとっても深い感慨を抱かざるをえないことでしょう。けれども原田さんは今年半ばの三木美術館2階『gallery アートスペース miki』での展示を皮切りにいろいろな活動が計画されているとのことで作品作りにも熱が入ります。

私は大きな作品も作っています。オブジェだったり花器だったりと。土は信楽や瀬戸のものを使うことが多いんですが、それも作品によって変えます。例えば鉄分が欲しい時は地元の赤い土を使いますし。またパラジウムも好んで使いますよ。
私の作品の中で特に思い出深いのはなんといっても裏千家のお家元より書付を頂戴した金銀彩の茶碗です。本当に光栄なことだと思っております。これからも焦らず作品作りをしていきます。

―原田さんの雰囲気からは想像できないような、本当に大きい、ひと昔前なら男性的とも評される作品もアトリエには数多く並んでいました。今の時代では“女流”とつくとそれだけで特別視するのかという疑問を呈されることもありますが、原田さんが作陶を始められた時代においてはまだまだ女性と男性の役割分担という考え方も固定的だった時代です。そんな時代だったにも関わらず、世の中で当たり前と思われている概念に流されることなく挑んできた原田さんや原田さんが尊敬する坪井さんのような女性たちが活動をしてきたからこそ今の美術界があると思います。そんな力強い作品をぜひご覧になっていただきたいと思います。
                            [企画・制作/ヴァーティカル] 


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