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行ってみて、直接見てみて、考える ~韓国と北朝鮮の軍事境界線に「観光地」があった~

仕事で韓国に行くことが決まった時、真っ先に行きたいと思った場所は一つだった。軍事境界線(Korean Demilitarized Zone(DMZ))である。これまでネットでその情報は見ていたが、実際に自分で訪れてみたいとずっと思っていたのだ。調べてみると、ソウルからツアーで行けることが分かったので、ツアーを予約した。


周りの人から言われたこと

ネット上にはツアーに参加した一般の人が、写真付きで投稿している記事がたくさんある。それに旅行会社のツアーがあるくらいなので、私には危険であるという認識は全くなかった。危険であればツアーがあるはずがないし、写真も出回らないはずだからである。(※本当は板門店に行きたかったのだが、現在は板門店に一般の人が立ち入ることはできない。つまり、板門店は以前一般公開していた時より現在の方が「危険」なのだろうと思われる)。

だが、出発前に周りの人に話すと「そこは安全なのか、危険ではないのか」という確認を何度もされ、「なぜそんな場所に行きたいのか」と行く理由について聞かれた。不思議だった。そこでわかったのは、私の周りの人は「軍事境界線は危険」と思い込んでいる、ということだった。

実際にツアーに参加したら

朝早くにソウルを出発してDMZに向かう。エリアによって警備レベルは違うようだったが、私の参加したツアーでは、往路で2回、復路で1回、簡単なパスポートチェックを受けた。

ツアーで訪れた場所は以下の通り。
 ・臨津閣(イムジンガッ)公園、自由の橋
 ・DMZゴンドラ、ギャラリーグリーブス ※オプション
 ・南侵第3トンネル(DMZ映像館、展示館)
 ・都羅(トラ)展望台

ネットで検索すればたくさんの情報が出てくるので、それぞれについて詳しくは書かないが、私はツアー全体を通じて「とっても観光地だった」という感想を持った。
まず、世界各地からたくさんの観光客が訪れている。(ただし、エリアによっては人数制限があるようだ。これは見学場所で待ち時間が発生することを避けることを助けており快適である)。ガイドさんの話では、ソウル市内のガイドの需要よりDMZのガイドの需要の方が圧倒的に多いので、多くのガイドはDMZでガイドできるように勉強しているということだった。

そして、モニュメントや顔ハメなどの写真スポットがある。これには驚いた。ザ・観光地、という様相だ。
正直、危険を感じる瞬間は皆無であった。

第3トンネル入口付近にあるモニュメント(上・下)
第3トンネル入口付近にあるもの(上)
都羅(トラ)展望台にあるもの(下)

DMZのお土産

ガイドさんによれば、DMZは農業に適した土壌らしく農業がおこなわれているらしい。そのため、ツアーの最後に立ち寄るお土産屋さん(バスツアーによくあるツアーとセットになっているお土産購入タイムである)では、DMZ産の色いろなものを購入することができた。そこには大豆や黒豆、お米などがあった。そして迷彩柄のグッズもたくさん売っていた。DMZのお土産屋さんなので当然なのかもしれないが、DMZを大きく主張している農産物を見るとなんだか不思議な気持ちになる。

DMZ産のお米(上)、DMZ産の大豆(下)

ツアーに参加して覚えた違和感

私はDMZが観光地化していることを批判するつもりは全くないが、休戦中の軍事境界線がこれほどまでに観光地化していることに驚き違和感を覚えずにはいられなかった。この違和感はどこから来ているのか、と考えると、まだ戦争が終わっていないのに「観光地」として公開しているからなのだと思う。原爆ドームも戦争関連のものであるが、戦争が終わって公開されているのであって、戦争中に公開されているものでもない。
カナダで仲の良かった韓国出身の友人が「朝鮮戦争が再度始まることはない」と言っていたことを思い出した。きっと、「観光地化」してしまうほどに、朝鮮戦争は韓国の一般市民にとって「過去のもの」になりつつあるのではないかと考えた。(政治的に本当にそうであるかは別として)。
本当の意味で「過去のもの」になるために、平和的に解決し、DMZという場所が早くなくなり、「昔DMZだった場所を巡るツアー」になれば良いと願わずにはいられない。

韓国から北朝鮮を望む

ツアーの最後には、都羅(トラ)展望台から北朝鮮を確認することができた。日本に住んでいるとテレビを通じてでしか確認できない北朝鮮だが、目視できる位置から確認すると、また違う感情が沸き上がる。「北朝鮮はこんなにすぐ近くに存在し、そこには確実に人の生活がある」。それを考えた時、私の北朝鮮への感情がまた変わっていくのを感じた。どこの場所に生まれたかが違うだけであって、同じ人間がそこで生きている、そんなことを思った。

北朝鮮と韓国の国旗が同時にすぐ近くで確認できる(上)
望遠鏡を通して見えた国旗(下)

百聞は一見にしかず

ネットで、テレビで、いくらでも情報を確認することはできる。だが、実際に行ってみて、実際に自分の目で確認した時、誰にも切り取られていない一次情報を確認した時、それまでとは違う感情や違う見方ができることが多々ある。だから私は直接確認したいと思うのだ。そんなことを思い出させてくれるDMZツアーだった。

普段、メディア情報リテラシーについての知識やスキルをお伝えする仕事をしているけれど、情報を五感を使って感じ、様ざまな事象について考えることの大切さと素晴らしさも同時に伝えていきたいと思う。

補足

ツアーに解放されている場所が「観光地」であるだけで、DMZ全体が安全で危険がないというわけではありません。実際に、一般の人の立ち入りが禁止されているエリアには、現在でも多くの地雷が埋められていると聞きます。この記事では、私が参加したツアーで確認できる範囲での出来事をお伝えしています。

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