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カナダの教育者向け講座を受講して気が付いたこと

カナダのNPO法人MediaSmartsが提供しているカナダの教育者向けの1ヵ月間のオンラインコース「Making Media Across the Curriculum」を受講してみて、今、思うことを書いていこうと思う。

コースで学んだ内容は以前投稿した8つの記事を確認してほしい。ここでは、受講してみて私自身が感じたことを書いていきたい。

1.熱心な受講生(教師)

正直、学校の先生が学校のある時期に受けるコースなので、受講するにあたって、それほど負担のあるコースだとはあまり予想していなかった。だが、そんな予想は裏切られ、真面目に課題をやろうとすると結構時間を取られることもあった。
それでも参加者は積極的に課題に取り組み、意見交換を行っていた。
すでにメディア制作を授業で取り入れている参加者から他の参加者に向けて、授業を行うにあたって発生する問題点の共有が行われるなど、講師から参加者という一方通行ではなく、参加者と参加者の双方向的なやりとりが見られた。また、参加者が教育関係者だからか、他参加者へ配慮した発言など、ネット上ではあるものの、とても良い雰囲気の中で講座、特に課題が進められていたと思う。
でも普段は生徒に締め切りの重要性を説いているであろう受講生が、課題提出が遅れた言い訳をしているのを見て、少し笑ってしまった。

2.受講生(教師)のスキルのばらつき

一方で、議論をしたり課題を提出するスレッドでは、教師の知識やスキルのばらつきが見られた。そもそもこの講座は幼稚園の先生から高校教師までを対象にしているし、稀だとは思うが私のような学校教育関係者ではない人も参加している、つまり様ざまな参加者がいることは間違いない。ただ、講師の出した課題に対して適切なアプローチを取れていない参加者も中にはいた。カナダでは教師の質にかなりばらつきがあると聞いたことがある。この問題はどこの国でも起こり得ることだと思うが、日本のそれとは少しレベルが違うような印象だ。それについてこの講座を通じて実感してしまったことは少し残念だった。

3.受講生みんなに優しいコース設計

私がトロントで生活していた時には、人と違うことが認められ、多様性を良しとされることが多かったように思うし、そんなトロントが好きだった。それが、このオンラインコースにも表れていたように思う。

 a) 動画の字幕とPDFスクリプトの提供

まず、動画(講座のメインは動画視聴である)に任意で字幕を付けられること、スクリプトがPDFで提供されたたことは私にとって助けになった。私にとって英語の音声だけで講座を受けるより、字幕、そしてスクリプトがあるだけでかなり負担が軽減される。基本的に他の参加者はカナダで英語(一部フランス語)で授業を行っているはずだが、見直ししやすいように、音声より文字で確認することに慣れている受講者向けに作られているのだと思う。
カナダらしいなと感じるのは、この字幕とスクリプトは一部でタイプミスなどもあり、実は完璧なものではなかったという点だ。音声認識で拾ってきて、それをある程度整えたものなのだと思う。この、完璧ではないけど役に立ちそうなものを提供するという姿勢を私は大きく評価したいし、何でも完璧でなくてはいけないという認識が強い日本でもこのくらいのハードルの高さで実践していければ良いのかもしれないと思った。

 b) サイトを見やすくカスタマイズできる

サイトにはAccessibilityというコーナーがあり、ここでサイトの背景を黒、クリーム色、水色に変えたり、文字の大きさを大きくもしくは小さく変更することができる。背景を黒にする機能は、最近色いろなサイトで目にするが、こんなにバリエーションがあるのも珍しいと思う。受講生の身体的機能を考慮しての対応だと考えられ、とても好感が持てる。

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 c) 締め切り時間が曖昧

カナダは東と西で時差が3時間半もある。課題の提出期限はどこの時間帯を基にしているのかは提示されておらず、次の講座の公開時間や、課題提出の期限が曖昧だった。気を付けてみてみると、講座の公開は予告時間より前に行われ、課題提出は提出期限はあるものの、かなり緩く管理されていた。必要なこと以外のルールを緩くすることで、参加のハードルを低くし、受講生の参加を促しているように感じられた。

4.おわりに

この講座で授業にメディア制作を取り入れる時の具体的方法や課題を学ぶことができ、私の受講目的は達成された。同時に、カナダでのメディア教育の実情と教師の研修事情を垣間見ることができ、大変有意義だった。日本でも一部ではメディア制作を授業に取り入れているところがあると聞くが、それを国を上げて促進しているというわけではない。そこがカナダと日本の現在の違いだと思う。これからは電子メディアがますます世の中に広まり、それを利用し、理解し、作り出すスキルが必要になる。その時代に、学校で何ができるのか、このことをもう一度考えてみる必要があるのだと再認識した。最後に、修了証書を貼っておく。PDFのシンプルなものだが、修了した区切りが実感でき、なんだか嬉しく思う。これも受講生の満足度を上げるための施策としては有効だし、それに私も影響されているな、と思う。でもそれも悪くはない。

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