見出し画像

D・O・A エピローグ

西原と今度こそ楽しい宴を楽しんだ黒須は、久しぶりにほろ酔い加減で家路についていた。
(さすがに今夜は玄関から入ったほうが無難だな)と黒須は思いながら、普段はバスに乗る道を歩いていた。
歩きながら黒須は、陽向とSAYAの表情や彼女たちのつまずいてしまった人生に思いを馳せていた。
動画に数多く残っているSAYAの瑞々しい姿、昨日まで明るい将来しか想像出来なかった陽向、黒須はこの一件で古い痛みが再発した理由がやっとわかった。
 
黒須は早希と恵実の弾けるような笑顔を思い出した。
小夜と陽向の姉妹とは全く違うが、突然奪われた命や将来、家族や友人が背負う痛み、そいうったものが酷似していたのだと、今更ながら黒須は気がついた。
「早希・・・」黒須はずっと封印していた名前をそっとつぶやいた。
次の瞬間、冷たい中にも温もりのある風が黒須の頬を撫でた。
黒須はふと立ち止まったが、「気のせいか・・・」とつぶやいて再び歩き出した。
 
誰の人生もいつ急展開するかわからない。全くもって「一寸先は闇」だ。
そう考えれば誰しもが死と隣り合わせで生きている。
人間は一人も漏れ落ちることなく常に「D・O・A(Dead On Arrival)」状態なのである。
 
時計を見た黒須は「ヤバ、また恵実ちゃんに怒られる。俺は今まさにD・O・Aだ!」
黒須は帰りの足を早めた。
 
#創作大賞2024
#ミステリー小説部門
#救急車 #救急隊 #救急隊員 #救急搬送 #刑事 #ネットタレント  
#消防署 #警察
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?