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シビュラによる統治社会が早く来てほしいと思った

こんにちは、おがくずにゃんこです。

こちらは2022年初頭に書いた未来予測記事です。
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早速本題へ。

最近、不穏なニュースが多いです。

誰もが日常的に使う「電車」内で事件が起き、
関係のない人々が「病院」で巻き込まれ、
さらには青少年たちまでが標的にされ…

そんな中で思いました。

シビュラシステムが統治する監視社会のほうが生きやすいじゃん

この記事ではこの考えを出発点にして、それはつまりどういう状態の社会なのか?それは何が良くて何が問題なのか?未来のテクノロジーはどうあるべきなのか?ということを書き綴る予定です。

ちなみに私は脳科学(認知科学)を専攻して修士課程を卒業し、とあるIT企業でSIer(SE)をやっている者です。
なるべく学術的根拠や客観的ファクトを重んじる人間ではありますが、妄想癖と猫の世界に逃げ込む習性があります。
もし間違った事実を記載していた場合は即刻摘発いただけると励みになります。

本記事はただの雑文書であり怪文書です。自分の考えを整理しながら書いているので、とても長く、冗長になる予定です。


※編集後記:なんと約12,000文字の文章になりました。もしよろしければ、思考の海へのDiveをお楽しみください。


※2022/02/09追記:非常に長いコンテンツのため、「シビュラを歓迎する感覚」移行を有料化することにしました。コーヒー一杯分の寄付をいただけると嬉しいです。


シビュラとはそもそも何か

シビュラを知っているからこの記事を見るという方がほとんどではあると思いますが、まずは「シビュラ」について簡単におさらいします。
※ネタバレを含みますのでご注意ください

シビュラ」というシステムはアニメ「サイコパス(PSYCHO-PASS)」において登場する、架空の管理システムです。

物語の設定は西暦2112年、未来の日本。そこでは監視カメラが街頭スキャナに取って代わり、人々の心理状態や性格傾向などを分析することで「犯罪係数」という数字をリアルタイムに弾き出します。

この数字が既定値を超えれば「潜在犯」とされ、裁きの対象となります。
つまりたとえ罪を犯す前であっても、シビュラシステムが認めればその者を逮捕し、必要に応じて更生プログラムを受けさせることが可能という世界観です。

ちなみにこのシビュラの中身が何なのか、というのは物語の根幹に関わる要素なのですが、この点については後に触れます。

物語の見どころについて少し解説すると、シビュラによって分析された「犯罪係数」に応じて犯罪に対応するのは主人公ら「監視官」と、その補佐である「執行官」です。(他人を傷つけうる人間は犯罪係数が既定値を超えるため、そのような人間を「執行官」と名付け「監視官」に管理させるという設定は見事です)
この世界では拳銃ではなく「ドミネーター」と呼ばれる未来型の銃器によって犯罪に対処するのですが、死刑確定の人間を処罰するドミネーターがカッコ良すぎます。


犯罪を予測し、前もって処罰する。それは可能か

私の主張は、先述したシビュラが統治する監視社会のほうが、今の日本より生きやすいじゃん、ということでした。

そうすれば、無関係の一般人が犯罪に巻き込まれ犠牲になる可能性が限りなく0になる。犯罪者にとっても、更生の機会を得ることができる。みんなハッピーな社会の到来です。

これを実現するには様々な方面で課題があります。

問題①―完全に客観的な指標が必要

まずは、そもそも犯罪係数という「完全に客観的な指標」となる数値が算出可能か、という問題です。

どれだけ客観的な指標を作ろうとも、例外は出てきます。
「人を殺したい」と思う状態を何らかの別要因から推測するとして、それらの要素(仮にX1, X2と置く)と「人を殺したい」という状態との関係には個人差があるはずです。
そうすると、95%有意でX1, X2と「人を殺したい」という連関がある場合、裏返せば5%の誤差を許容することになります。
つまり、「人を殺したい」という人間が20人いたとすると、19人は正しく裁けても1人は例外処理になってしまう可能性がある、ということになります。

ここからサイコパスのネタバレポイントに突入します。

実はシビュラシステムの正体は、先程の「例外処理」人間の集合体となっています。
端的に言えば、「人間の並列脳」こそがシビュラの正体であり、その「脳」はかつてシステムが裁けなかった人間達から寄せ集めた、という設定です。
そうやって「例外」をシステムに組み込むことで、「例外処理」を限りなく減らすというのがシステムとして非常に巧妙だなと思いました。

物語の特に第一期はこの「例外」が根幹にあるのですが、物語ではシステムに裁けない人間を「免罪体質者」と呼んでいます。

このような物語の世界観を考慮すれば、犯罪係数は「完全に客観的な指標」というよりは、「常に客観的であるようアップデートし続ける指標」といえるでしょう。

ちなみに日本ではどの程度例外処理、すなわち「冤罪」が起こるのでしょうか。
定かなことは言えませんが、とある記事によれば刑事裁判になった場合、無罪になる可能性は0.1%とのことです。つまり無罪だったとしても、それを勝ち取ることは難しいという事情が日本にはあるようです。

問題②―法律が根幹から変わる

犯罪係数というものが発明されたとして、それを運用するには国の承認と運用するための司法機関が必要です。

サイコパスの場合は未来の厚生労働省がシビュラを管轄するという世界観でした。

後々の話にも関わりますが、私が敬愛する小説家である伊藤計劃さんの「ハーモニー」でも、人々を監視するシステムは厚生労働省が管轄となっていました。将来的に厚労省はそのようなレベルに進化するのでしょうか…?

さて、シビュラを適用するにあたって大きな法律の問題は何かというと、人が犯罪に走る前に逮捕できてしまうことです。
既存の法律は何かしらの行為に対して罰則を規定しているため、これを行うには根本的な変更が必要になるでしょう。

問題③―システムをどのように維持するか

サイコパスでは厚生労働省本部の地下で一般大衆に秘匿されながらも維持されていたシステムですが、現実的には運用が非常に大変です。

それこそサイコパスのように一箇所で集中管理していると、大地震で停電が起これば動かなくなります。

国を支える大きなシステムとなると、現実的には何百人もの職員がシステム維持に駆り出されることとなるため、いくら政府といえど、秘匿することは難しいでしょう。

そう考えると、民主主義的な合意の上でシステムを運用する必要が出てきます。
サイコパスのように「実は人間の脳が裏で統治をしていた!」というのは現実的ではなさそうです。

ちなみに人間の脳を機械と並列で処理するという技術は、今後実用化されるかもしれません。

その種となる技術が既に出てきています。

こちらの記事によると、培養した脳がゲームをプレイすることに成功したようです。

脳はエネルギー効率がコンピュータの1万倍とも言われており、このような研究は今後加速することでしょう。


シビュラを歓迎する感覚

シビュラのように巨大なシステムで監視される社会は、ディストピアといわれています。

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