初めての受診
玄牝ーげんぴん というドキュメンタリー映画を渋谷で観たのはいつだっただろうか。自然分娩の産院のドキュメンタリーを観て、自然なお産は美しいと思った。と、同時に、まき割りをしているお腹の大きな妊婦さんを見て、「お腹の子を意識して!一緒に動いて!じゃないと、お腹の子がびっくりして、お腹の中でしがみ付くようにしているよ」と思った。そう感じた。
小さい頃、友達のお母さんとウチのお母さんが話しているのを聞いて、どうやら赤ちゃんを産むときは、おまたを切るらしい、という情報を得た。将来大人になったらいつかそんな日が来る。私は怖いから切りたくないと思った。
玄牝の中に出てくるお母さん方は、会陰を切ったりしていなかった。薄暗いところで自分のお産と向き合っていた。私は、もし出産を経験するならば、こんな風に産みたいと映画を観ながら思った。
運よく親戚が近くに住んでいたこともあり、ご縁があって、そのドキュメンタリー映画の産院で初診をして貰うことになった。北海道から沖縄まで全国から妊婦さんが来る人気の産院。旦那さんの休みに合わせて、土曜日は予約が取り難かったけれど、なんとか予約ができた。
最終生理日から2カ月とちょっとが経っていた。
電車を乗り継いで、あの、映画で見た産院に辿り着いた。今はもう、まき割りをしていなかった。ちょっと怖かったから、ほっとする。
なるべく目を使わないように、細かい字は書かないようにしていた。初診の書類に、夫さんが記入してくれる。
次に体重、血圧、尿検査。体重は服を着たまま量り、血圧を計った時に出てくる紙に、名前と体重と、尿検査の糖とPHのプラス・マイナスを記入して受付に提出する。受診の度に毎回行う。
この時の体重、53キロ。
膣の中に超音波の棒を入れての検査、嫌だったけれど、仕方がない。ちょっと痛かった。
画面に小さな小さな影が映り、心臓が動いている映像が見えた時、感動して涙が出た。院長に呼ばれ、夫さんも一緒に画面を確認する。エイリアンみたいな写真をくれた。
「まずは、おめでとうございます」と、心から伝えてくれた。
「せっかく来てくれた命なので、無事に産んであげたいです」と言うと、
「もう既に、お母さんとしての自覚ができてますね」と褒めてくれた。
「でもね、覚悟はしてくださいね、4人に1人は流産します」ハッキリ言ってくれた。
次に富士山の写真を見ながら、「十月十日かけて山を登ります。体力が要ります。山頂がお産です。山の天気は変わりやすく、何が起こるか予想が付きません。富士山と思って登り始めた山も、人によりその山はエベレスト級の山かも知れません」と例えてくれた。
院長の側にいた看護師さんらしき人に、前院長が書いた著書を読むように勧められた。
野口整体では妊婦さんは、本なんか読んではいけないことになっている。産院はそこまでの指導はしないようだ。
「はい、以前読みました(嘘)」と言うと、
「もう一度、と言わず何度も読んで理解して」と言われた。
次の予約を入れて帰る。
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