シェア
國嶌りょう
2018年12月4日 23:22
彼女は酔うと、昔のことを話し出す。田中くんという、高校時代の同級生の話だ。 「彼は彼の心の中に温室を持っていたの。その温室は広くて、そこは温室というよりも、ひとつの世界だったように思う。どこまでも続いてた。そこには植物があって、動物がいた。濃くてみずみずしい緑の葉っぱを持つ木々があって、猫も犬も野うさぎも、鹿も、熊もいた。そこで彼は暮らしていた」 彼女は元々作家志望だったからか、言葉の扱