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國嶌りょう
2021年9月26日 16:43
今川焼がおいしかった。おいしくて、それだけでうれしかった。すきだと思っていたたべものを、からだが受け付けなくなって数ヵ月が経つ。おおまかには、肉と魚、パン。どれも日常的に選んで、たべていたものたち。スーパーの精肉売り場、鮮魚売り場の前を通っても食欲のセンサーは反応しなくなった。陳列されている赤やピンク色の柔らかそうな肉の断面、青々と光る魚の切り身をみただけで、「う」と思う日もある。
2020年7月28日 22:52
わたしは、じぶんが言葉を持っていることをひどく煩わしく、猥雑に感じることもあれば、言葉を持っていることをうれしく感じることもある。わたしは、鏡のなかのじぶんをひどくくたびれた女だと感じることもあれば、まだ酸いも濁もしらない少女のように感じることもある。わたしは、映画に孤独を癒されることもあれば、映画に孤独を突きつけられることもある。わたしは、煙草を昔からの親友のように感じることも
2019年12月7日 12:30
どうしようもない寒気。ああ、ついに来たか。へろへろの体で電車に乗り込む。立っていられず手すりのそばに座り込むと、向かいの優先席に座るサラリーマンに怪訝な顔をされた。こちとら、いまそれどころじゃない。リュックとマフラーに顔をうずめて耐えていると、しばらくして肩を叩かれた。私より年上の、ショートカットの女性。「あそこ、席あいてますよ」と言われる。正直動くのもしんどかったが、わざわざ声をかけてくれ