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月を見上げて、浮遊する

十四か、十五か、十六あたりの月に出会うと嬉しくなる。

オレンジと言うには赤すぎて、赤と言うにはオレンジすぎて、今にも道路を転がって、こちらにぶつかってきそうなほど、近くて大きい月。

線香花火のようだと思う。線香花火の先のまるい熱。膨らみ過ぎたら、ぼとん、と地球に落っこちてきそう。そんな光を追いかけながら、間抜け面して歩く。

ああ、ここは宇宙で、ここは地球だったなと感じさせてくれるような巨大な存在を見ていると、ふわっと宙に浮いていきそうになる。

月が綺麗と思うとき、私は自分の眼に映る世界をとても愛している。だけど、その眼を持つ自分のことを、どうしてすっかり愛してあげられないんだろう、なんて思いもふとよぎる。大体そのあたりで、いつも曲がり角にぶつかって、月は見えなくなる。

月のない夜空を仰ぎ見ると、浮きかけた足も地球に戻ってくる。

月は綺麗で少しだけこわい。地球の周りを大人しく回っているふりをして、こうして時々、こころを宇宙に持っていこうとするから。

だから燃えるような月に出会った夜はいつも、1回宙に浮きかけて、それから不自然に力強く地面を踏みしめ、家路を辿る。

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