魂(ソウル)な美装で戦って! 2-2
「オマエ、アホだろ、戦試合当日でもないのに、何であんな事してくれんだよ」
カスティーが、毒虫でも見るような目でもなみを睨む。
「えっ!な、何でって言われても...」
「せっかく、デガロ兄さんの魅力をあの膨らんだ髪でごまかしてたのに、このクソ女!」
「あ、あの、さっきと随分態度が違って...」
「はあ、僕が可愛いのは、兄さん達に見せる為だから、女なんかに愛想良くできるかよ」
カスティーがそう言って、もなみの顔に指を突きつける。
「くっそ、引っ掻いてやりたいけど、デガロ兄さんの籠に入ってて手が出せない。いいかオマエがソコに入ってるのは、明後日迄だからな、甘えんな」
もなみは出たいのに、守られてると言って悪態をつく。
憎たらしい事にそんな顔も整って、人を引きつける。あえていうなら、小悪魔、堕天使のようだ。
「ちょっとばかり美装ができるからって、兄さん達に近寄るな。ぼんやりした顔の女だからって、僕は騙されないぞ!いいか、僕が、いずれこの国を支える美装師になるんだから、オマエなんか要らないんだよ!」
そう言われて、じっくりカスティーの服装を見れば、とてもお洒落で、でも、どことなく変だった。
「あ!ヘッドホン!」
先程から感じていた違和感にもなみが気づく。
「何でそんな物が、この世界にあるの?」
「逆に聞きたい、何でコレが無いとか思ってんの」
カスティーが腕組をして口の端を皮肉に曲げる。
「だって、ここって、剣と魔法の世界じゃ無いの?」
「そうだよ、剣と魔法があって、その上美装って事実と、そして他の物もある。当たり前だろ、この国がレトロ調だからって、デバイスやガジェットも無いとか思ってんの?大人は礼儀と習慣で古風な服を着るけどさ、僕ぐらいの歳のやつは他の国の服でも気に入ってたら着るんだよ」
綺麗だけれど不機嫌極まりない表情でカスティーが言葉をぶつける。
確かにそうだ、この部屋もよく見ると凝った形の電気のスイッチがあった。照明だって古風だけれど、リメイク品かもしれない。コンセントは見当たらないけど、上手く隠してあるに違いない。
コレはあれだ、和風とかで畳と障子みたいな感じ、中世風ってやつなんだ。
「ねえ、それって、戦試合も、そういうファッションがあるって事?」
「そうだけど」
「やった!じゃあ、色々試せるじゃない」
もなみは嬉しくなった。
はっきりいって、中世風の服だけでは上手くできるか自信が無かった。それがどんな服でも良いとなれば、頼まれた美装というものも、できるような気がする。
「そんなに簡単にはいかないよ」
カスティーがそう言って、もなみをじっと見た。
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「なあ、アイアイ、ちょっと来てくれないか」
もなみがカスティーと黙っていると、デガロが部屋に戻ってきた。
グイッと手を引かれ、連れ出される。
「あの、なんなんですか?」
「明後日の美装の話がある。出るのは俺と兄貴の二人だから、持っていく服とか足りない物を決めないと」
廊下を歩きながらデガロはもなみに告げる。
「ねえねえ、兄さん。美装は僕がやってあげるよ」
デガロの腕にぶら下がってカスティーが言った。
三人はツシカとタビダロンが居る。最初にもなみが気づいた部屋に入った。
「カスティー、気持ちは嬉しい、だがお前は自分を整えるのは上手いが、他はダメなんだ。何ていうか、動きづらい美装になるんだ」
困った顔をしたデガロに、カスティーの申し出は一蹴される。
「でも」
「すまない、カスティー。何度か試したが、俺は頭が痛くなった」
ツシカが小声でそっと言った。
「タビダロン」
「すいません。私も手足が痺れました」
「だって」
カスティーはやる気があるけれど、難のある美装をするらしい。
やりたくない美装師として呼ばれたもなみは、落ち込んで下を向くカスティーを見ていて、なんだか気の毒になった。
「アイアイ。明後日は頼む」
カスティーの気持ちも知らないで、デガロがもなみに頼んだ。
「あの」
もなみが何とかフォローしようと言葉を探す。
「わかった、もういい」
もなみが言葉を発する前に、カスティーが部屋を出ていってしまった。
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