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バリアフリーのこと

X(旧Twitter)で車いすのユーザーさんがイオンシネマでのことをつぶやいたら、それはある意味当然のことだと思うけれど、様々な意見が続々。

その中の、誹謗中傷は言語道断だと思った。
一方、様々な意見の中で、もし避難しなければならない事態が起こってしまったときの安全面についての意見と、介助をする方々への配慮に関する意見の中には、今まで私が気がつかなかったことも含まれており、それについては目からうろこだった。

イオンシネマ側の支配人さん(?)の言葉を直接聞いたわけじゃないので、その言い方だとかニュアンスはわからない。
だから何ともいえない部分があるけれど、劇場の責任者からすれば、お客さんの安全も従業員の安全も、どちらもとても大事なこと。
それが、「ああいう発言」になったのかな…と想像する。

車いすユーザーの方については、彼女の過去の投稿を読むと、非常に行動的。少なくとも表面上はパワフルな方だとわかる。
でも、ただパワフルというだけではないようにお見受けした。
おそらく見た目でわかる障害だけではないはず。
そうであっても、日々、ご自分の様々な可能性に挑戦している方のように感じた。それはそう簡単にできることではないと思う。

彼女はとても映画好きなようで、見たい映画は映画館で、という気持ちは私にはよくわかる。若い頃の私は、休日は必ず映画館で過ごす…みたいなときもあったから。
また、車いすに座ったままでの長時間の鑑賞は身体に堪えることもよく知っている。過去に2年間、義父がベッドと車いすだけの生活で、当時彼は自分の状態を言葉で伝えることはもうできなかったのだけれど、車いすに座っている時間が長くなると、つらいという様子が必ず表情に出た。その様子で、我々介助側はベッドに戻すタイミングを決めていた。
そういうことを知っているので、車いすよりもずっと居心地がいい席で好きな映画を見たいと思うのも当然のことだと思った。

でも、残念ながら、彼女が望んだその席は車いすユーザーが自力では絶対に行けないように設計されている…。

今の時代になぜ?と不思議だけれど、今のところはそれが現実。

自力でその場所へ行けないけれど、その場所で見たいと思うことはわがままなのかどうか?
もし、私だったら?と考えてみた。
何としてでも映画館で見たい映画がそこでしか上映されていないとかだったら、劇場側に極力負担をかけないような方法(車いすごと運んでくれる人を自分で依頼するとか…)を考えて、事前に劇場側に連絡し、そういう方法でなら鑑賞できるかどうかを確認する。
でも、鑑賞するまでの、そういう事前のあれこれが面倒だと思ったら、家でゆったりと見られる日がくるのを気長に待つ。映像作品なので、DVD発売だとか配信だとかテレビ放送だとか、いずれは見られるはず。
今の私にとっては、自分の中での「映画」の重要度はその程度。

しかし…。

これがお気に入りのアーティストの生のライブだったら? そしてライブ会場へ自力で行けなくなっていたら?…と想像すると、今の私にとっては「ライブ」の重要度は相当高いので、すぐにこの答えは出なかった。

X(旧Twitter)の今回のことに関する一連の流れを知って以降、ずっとずっと考え続けていたけれど、結論としては、私には彼女のようなやり方はできないな、と思った。

何が正解とかの問題ではなく、これは自分の生き方のこと…かな。
だから、正しいとか間違っているとかではけっしてない。


彼女からすると、過去に何度か従業員さんに車いすごと運んでもらった経験があるから、まさか今回のようなことを言われることになるとは…という思いだったのだろうけれど、それをSNSにあげて、しかも「イオンシネマの社長と話し合いたい」は、少し幼稚だという印象。
申し訳ないが、「特別意識の人?」とも感じたのは事実。「特別意識」がいけないこととは思っていないけれど。なぜなら、生きていくうえでそういうものが必要なときもあるとは思うから…。


今の世代の人には、SNSで問題提起することは当然なのかもしれないけれど、私たちのような世代からすると、ああいうやり方は卑怯と思うことがある。
その場で言えなかったのなら、まずは直接劇場の運営会社に連絡を取ったらよかったのにな、と思ってしまう。
言われたことが酷い、許せない、と思ったのなら、クレームとして言えばいい。
また今まで可能だったことが今後はできないと言われたことに納得がいかないなら、それについての話し合いを申し入れたらいいのでは?と思う。
一方的に発信するのではなく、まずはお互いのコミュニケーションがいちばんなのでは…?
時間はかかると思うし、それこそ握りつぶされてしまう可能性だってあるかもしれない。でも、もし握りつぶされたなら、そのときにあらためて別の方法を考えればいいのでは…?

あ、よけいなおせっかいをしている…(反省)


ここからは私自身のこと。
今の私は、他人の介助が必要というほどではないが、人混みの場所へ行くときは、念のため杖を持参。実際は、杖を使うと歩きにくいことも多々ある。でも、大勢の人が行き来する場所では、ふいに他人の身体が当たってくるということはよくある。今よりもっとスムーズに歩いていた過去に、人混みで押されたことが原因で転んだこともある。押されて転んだ当時の私には杖を使うという発想がまだなかったけれど、近年はその頃よりも、特に階段を降りるときには手すりがないと怖いと感じるようになったので、ひとり行動の際に杖は必須。
その杖も、平坦な道で後ろからやってきた人に急に蹴られたりすると、とても怖いが…。

昨年のKアリーナ横浜でのSOPHIA公演の帰りのこと。
帰路は、言われていたほどの大渋滞ではなかったものの、一ヶ所だけ折り返すようにルートを規制していた箇所があり、その手前で人々が密集し、人の流れる速度が急に落ちた。念のため杖を使っていた私は杖が前の人に当たる危険性があったので、他の人よりも前との間隔を大きく取って歩いていた。そこで後ろから急ぎ足でやってきた女性に強く杖を蹴られ、転びそうになった。思わず声が出るほどの勢いだった。幸いに転倒は免れた。体勢を立て直していたら、おそらく彼女の方も杖に当たって相当痛かったのだろう。きつい表情で私をにらみつけ、そのまま急ぎ足で去っていった。こんな場所に杖をついて来るな、とでも言いたげのように、私は感じてしまった。
その瞬間は、私の現状では、もうこういう場所へ来てはいけないのかな?という気持ちになった。
その気持ちは瞬間だけだった(笑)ので、今回のSOPHIA城ホール公演にひとり参加。

今回、ちょうど開場が始まった頃に城ホールへ到着。ホールへの階段はそれほどきつくないので、エレベーターで上がらなくてもいいかもと歩いていたら、杖に気がついた警備員さんが、エレベーターの方へどうぞと言ってくれたので
素直に従う。
エレベーターを降りたら、今度は会場の係員さんがご案内します、と近寄ってきた。
そのときの私は、まだ現実がわかっていない(苦笑)
入場口の案内だろうと思い、私は紙チケットなんですとだけ伝えた。
ところが…。
係員さんが連れて行ってくれたのは身障者の方々のための入場口。
そこで、別の係員さんに引継ぎ。
彼女は私のフルネームと座席番号を控えた後、事前連絡はしていただいていますか?と。私が、いいえと答えると、お席はどうされます?と。

つまり…身障者の方々のための席の用意もあるということだった。

そんなことを提案されるなんて思ってもいなかったし、事前に調べた今回の座席は、ステージからはめっちゃ遠いものの、ちょっとおもしろい角度からの眺めのようだったし、そもそも自分は、そういう特別な席に座る資格もないという認識。
なので、それを丁重にお断りした。
係員の彼女はそれではチケットの座席へご案内しますと言い、ホール内へ。城ホールも4回目だし、案内はいらないんだけどなと思ったものの、もう断れる雰囲気ではなかった。
でも、実際に中へ入ってみると、案内の彼女がすぐ近くにいることは非常に心強かった。
たくさんの人が自分の行くべきブロックを探し、また入口周辺の花の写真を撮るため立ち止まる人も多く、杖にぶつかられそうでちょっと怖かったから。
そのとき、係員さんには写真を撮らなくていいですか?と気遣ってもらったけれど、そんなことで彼女を待たせるのは申し訳ないからもちろん断った(終演後、出るときに人が少なくなった瞬間を見計らい、横の方からさっと撮影…笑)。
私の座席はKブロックで入口からはかなり遠かったけれど、進むにつれ人もかなり少なくなってきた辺りで、Kブロックはもう次の次みたいだから自分で行けますと彼女に告げた。それをきっかけに、トイレの際は座席周辺にも係員がいるのでお申しつけくださいと言い、彼女は入場口へ戻って行った。城ホールは段差がきついけれど、慎重に移動すれば私には大丈夫な場所。トイレも上り下りはあるけどひとりで大丈夫。


ライブ後、帰りの環状線ではホームにいた係員のおじさんが改札口に近い車両のドア付近は混雑するので奥の方の車両付近まで行くように指示していて、私ももう少し先へ行こうとしたら、杖をついているのを見て、ここでいいよ、と言ってくれた。
今回はオーケストラとの共演で、それほど長く立ってはいなかったからもうこれ以上歩けないなんてことはなかったのだけれど、ここでいいと言ってもらって、やれやれ助かったとも思った。



今回の城ホールライブで、今の自分は「通常の枠」には入らないんだ、とようやく悟った私。
杖を使いエレベーターも使ってひとりでホールに入ろうとしたのだから、主催者側に事前連絡をすべきだったのかも…とそんな反省も。
今でも自分がしっかりしていれば大丈夫とは思っているものの、会場側としては、ケガ人がでたら責任問題になるという想像くらいはできる。

今思えば、昨年の城ホールでのエレカシライブの際、そのときは夫と一緒だったのだけれど、やはり杖をついてエレベーターで上に上がったら、係の人がご案内しましょうかと声をかけてくれた。すぐに夫が、ありがとう、でも大丈夫、自分たちで行けますからと応えたのだけど、あのときもそういうことだったのね。
今頃気づくなんて…なんという鈍感なヤツ(;^ω^)

実は、1年ちょっと前、オールスタンディングのライブに2日間参加。1日目の会場で、その日は整番がかなりよくてけっこう前にいたのだけれど、途中で足が持たなくなり、後ろへ下がった。一度はもう出ようと思ったものの、結局下がった場所で最後までいた。でも翌日は絶対無理だと判断していた。下がった場所には椅子に座っている人がけっこういて、中には車いすの方も。
翌日の昼間、まだ開場までには余裕がある時間に、2日目の主催者に連絡し、急な連絡で申し訳ないが椅子に座れないだろうか、とお願いしてみた。幸いにも、そんな急な願いを快く受けていただき、座って観ることができた。そのときも電話でひとり行動なのかということや、身体の状態を聞かれた記憶がある。いざ会場に着くと、担当の方にはドリンク引き換えのことまで気を遣っていただき、椅子に私が座るまでついてくれていて、帰りもグッズ購入にも付き添ってくれ、出口へは上り階段だったのだけれど、私の場合、上りは手すりさえあればわりと平気なので、そこでもう大丈夫ですと言うまでずっと見守ってもらった。
その当時は、自分のそういう状態は一過性のものだと思っていたけれど、最近ではもうオールスタンディングへ行くのは難しいかも…と思っている。そう思いながらも昨年夏にはオールスタンディングライブに参加したけど(椅子があると思い込んでの参加だったが、最後まで何とか大丈夫だった。このときは夫も一緒だったから、全然不安はなかった。でも歩けなくなっても重いからおんぶもだっこもできないとは言われていた…笑)。

今回、普段の生活ではあまり使わない杖をずっと使ったことで、いろいろな経験をした。
ライブ帰り、ホテルまでのルートに地下街を使ったのだけれど、人が多くて、やっぱり杖を蹴られた。邪魔にならないようになるべく端っこの方を歩いていたのだけれど。
今回はわざと蹴られたと思っている。軽い蹴りだったので危ないことはなかった。ずっと彼女としゃべりながら私の後ろを歩いていた若い男性だった。彼女はたまたま前に人がいないから早く歩き、彼は私が前でゆっくり歩いていたから、彼女と歩調が合わなくなってしまった様子でかなりイライラしていた。そういう気配が後ろから伝わってきたので、私を追い越して先に行ってほしいと思っていたのだけれど、人が多くて、それぞれが自分の思うようにはなかなか動けない状況だった。
私としては軽い蹴りではあっても、無言のそういう行為よりは、早く行けと、言葉で言われた方がよかったのだが。
だって、言葉で言われたなら、早く歩けなくてごめんね、先に行ってね、としっかり伝えることができたのだから。


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